小池百合子東京都知事が就任から10年を迎える。都政運営の要は巧みなキャッチコピーだ。
「○○ファースト」、コロナ禍の「3密」は流行語年間大賞にもなった。
「ネーミングセンスがうまい」
東京都の小池百合子知事の知事在任期間が7月に10年を迎える。
都庁担当記者から見た小池知事は、ひとことで言えばネーミングのセンスがうまい。
小池知事の代名詞といえば、「クールビズ」だ。
小池知事は環境大臣時代に、「クールビズ」「ウォームビズ」を提唱、地球温暖化にあわせた生活スタイルの変化を日本国内にもたらすことに成功している。
巧みなキャッチコピーで、行動変容を実現させた、ともいえる。
東京都から全国に浸透した「3密」
そして、東京都の知事になってからも、知事の発した言葉やネーミングセンスが全国に浸透して、行動変容を実現させたことがある。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるロックダウン。
小池知事が感染症対策として発したのが、「3密」と「密です!」というフレーズ。
密閉、密集、密接の3つの密を「3密」としたネーミングは、全国に定着し、コロナ感染拡大予防に貢献したといえよう。
また、知事にマイクを向けようと集まってきた記者団に発した「密です!」というフレーズは、ソーシャルディスタンスという行動変容をこのひとことで全国的に認知させ、2020年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた。
コロナ禍で一時開催が危ぶまれた東京オリンピックでも小池知事のキャッチコピーが開催の後押しをした。
小池知事は、公の場所に出ると必ず「アスリートファースト」という言葉を発して世界中のアスリートたちのために無観客での開催の意義を訴えた。
コロナ禍での開催は、いまでも世界各国のアスリートたちから東京、日本に対する敬意と感謝の言葉が送られ続けていて、去年東京で開催された世界陸上、デフリンピックの過去最高と評価された成功の礎となるなど、東京オリンピックのレガシーは着実に受け継がれている。
10年ぶりにプラスに転じた出生率
小池都政の10年間でもっとも成果をあげたのが、10年ぶりにプラスに転じた出生率だ。
シームレスに子育てを応援するとして掲げられた数々の政策のなかにも小池知事のネーミングセンスがみられる。
「018サポート」。
0歳から18歳以下のこどもへの給付制度を数字だけで表した。
令和8年の今年を、結婚のきっかけにしたい特別な1年として、「TOKYO八結び」、というキャンペーンを展開している。
八は末広がりで縁起がいいとのことで、八結びだそうだ。
そして、出産直後の支援策、「赤ちゃんファースト」。
前述した「アスリートファースト」のほかにも、「都民ファースト」、「チルドレンファースト」、など、政策に「○○ファースト」とつけるキャッチコピーの元祖は、小池都政だ。先の衆院選で、中道改革連合が、「生活者ファースト」というキャッチコピーで選挙戦を戦うなど、国政にも波及している。
そのほか、電線を地中化にして電柱を減らす施策については「無電柱化」と名付けたほか、東京都が主催するアジア最大級のスタートアップのグローバルカンファレンスは、英語の頭文字から「スシテックSusHi Tech」(Sustainable High City Tech Tokyo)。
女性活躍推進イベントでは、「Woman in Action」のWとAをとって「WA」(わ)。ペロブスカイト太陽光発電を「Airソーラー」。脱炭素に向けた取組は電力を(H)減らす、Tつくる、Tためるで「HTT」など。
もっとも新しいネーミングでは先日、感震ブレーカーを「グラぴたスイッチ」と命名するなど枚挙にいとまがない。
都職員にも広がるこだわりのネーミング
知事がネーミングにこだわる理由について、小池都政の広報を支える1人西口彩乃戦略広報担当課長は「都の広報をする上ではいつも『伝わる広報』を意識しています。ネーミングもその一環で、“ただ面白い”ではなく、一人ひとりに対して施策の意義、内容が深く伝わるのかどうかということを常に考え、発信しています。伝えたい人にどう表現すれば伝わるのか、職員の中でもとにかくたくさんの候補を出し、これだ!と思うものを決めるのです」と語る。
小池知事だけでなく、都全般の広報が、ネーミングにこだわって施策を打ち出しているのがわかる。
そしてネーミングセンスは、対外的だけでなく、都庁職員に対しても活用されている。
毎年行われる東京都の予算編成の際には、予算にメリハリをつける意識を都庁全体に浸透させるため、メリハリのメリから「羊のメリーちゃん」、ハリは「ハリネズミのハリーちゃん」だとして、予算関係の会見の際には、必ず、羊とハリネズミのぬいぐるみを登場させている。
施策の実現にネーミングセンス
小池都政が重点的に進めている1つに、脱炭素社会と水素社会の実現がある。
原料となる水素の価格などに課題があり、普及がなかなか進んでいないのが現状だが、資源のない日本にとっては是が非でも実現させるべきだと思う。
小池知事の巧みなネーミングセンスで、水素社会の到来を前倒しで実現させることを期待したい。
(執筆:フジテレビ社会部 大塚隆広)

