宮城県登米市で、これからのまちづくりに、大きく関わる決断が下されました。新たな市役所となる複合施設の建設推進です。
この方針は、熊谷康信市長が去年の市長選挙で掲げた公約に反するもので、賛否は割れています。
宮城県内でも人口減少が進む自治体が増える中、公共施設を巡る今回の議論は何を残したのでしょうか。

7月1日、仙台放送のインタビューに応じた登米市の熊谷康信市長、48歳。

熊谷康信市長
「決してニコニコしてお話しできるような最終的な決断や方向性ではないので」

市長として、今後数十年先まで残る大きな決断を下しました。

熊谷康信市長
「次世代に大きな負担を残さない、本市の未来を見据えた街づくりの核となる施設として、地域交流センター整備を推進すると判断した」

6月30日、熊谷市長は会見を開き、新しい市役所本庁舎として「地域交流センター」を整備することを、正式に発表しました。
「地域交流センター」は、現在の登米市役所迫庁舎を解体した敷地に建てられ、市内にある中田庁舎・南方庁舎に入る部署も集約。
さらに議会、図書館、市民交流スペースも設けます。
地上4階建て、延べ床面積、1万3527平方メートルとなる建物の建設費用は、およそ141億円と見込まれています。

熊谷康信市長
「市役所機能が主軸になってくるかという認識でいるが、市民主導で使ってもらえるような施設になればいい」

熊谷市長は去年4月、コストへの懸念などから、前の市長が進めてきた整備計画の「撤回」を公約に掲げ当選。
しかし議会では、建設推進派が多数を占め熊谷市長が提出した事業費削減の補正予算が認められないなど、「撤回」に向けた動きは、行き詰まりました。

熊谷康信市長
「(計画)『撤回』をして、それに対して議会から厳しい言葉をもらい、その時に「俺について来い」だけでは駄目なんだなというのも改めて理解したし」

その後、当初の計画より面積を縮小した上で、対案としていた「現行施設を活用」する場合と費用を比較した結果、合併特例債などを活用すると、「新設」した方が市の負担は26億円ほど抑えられることが分かり、方針の転換に至りました。

多くの地方自治体と同様、人口減少が進む登米市。
合併時の2005年に8万9000人だった人口は、この20年で2万人減少し、2050年には合併時の半分以下となる4万3000人になると予測されています。
そうした中で熊谷市長は、行政機能の維持と財政負担の狭間で頭を悩ませてきました。

熊谷康信市長
「かなり広い面積を持つ街なので、既存庁舎を活用して、各地域でサービスが受けられる行政機能が望ましいのではないかと考えていた。今回調査をした結果、私が思っている以上に費用がかさむ結果になってしまった。より市民に寄り添った政策は何なのかというところで判断をした結果、事業を推進した方がより市民のためにはいいのではないかというところで、計画推進に至った」

結果として公約を撤回した熊谷市長。

熊谷康信市長
Q.自分(熊谷市長)が対立候補で現職の市長が、自分が言っていたことを最終的に選択したら、厳しく追求するのでは。
「しっかりと謝罪をして、現状では方向は転換しましたが、基本的な市民生活第一主義という考え方に沿った形での判断だと説明して、理解してもらえるように努めたい」

一方、登米市に限らず、宮城県内では各地で公共施設の建設計画が進み、整備・運用コスト、施設の利活用をめぐって意見が交わされています。

今の時代に合った、施設の在り方について専門家は。

宮城大学 上森貞行准教授
「人口増加の時のようなフルスペックな施設ではなく、将来的にどういうことを中心に施設を使うのかということをしっかり議論していくことが大事になる。例えば子ども会などの活動であれば、親御さんはSNSで物事を決めたりというようなこともあると思います。従来のように集まって会議を決めるということだけではなくなってきているので、実際の利用の規模や頻度、あるいはどういう主体が利用していくのかイメージを持ちながら、適切な規模で建設していくということが必要になる」

その施設は誰のためなのか。様々な視点から、イメージをより具体化し計画を推進していくことが“負の遺産”とならない公共施設の整備のために重要と言えそうです。

熊谷市長は、7月27日から地域交流センターに関して住民説明会を開催し、広く、理解を求めていく方針です。

仙台放送
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