特集、シリーズ「岐路に立つ書店」です。
「活字離れ」が進んでいると言われて久しくなりますが、県内で小規模から始める新しい本屋さんが増えています。
なぜなのでしょうか。

【利用客】
「自分じゃ考えつかない面白い話が読めたりとか、知らない意見を新たに取り入れることができたりが好きです」
「癒されますね。すごく楽しい」

紙の本を求め、やってくる人たち。
【福岡からの利用客】
「口コミだけじゃなくて、実際に自分で表紙を見たりとか内容を見たりして、ピンときたものを選べるのが本屋さんに来る意義なのかなと思います」

いま、県内で少しずつ新しいカタチの本屋さんが増えています。

【Books&Cafe灯書堂 新家幸太さん】
「いろいろ出版不況だって言われてますけど、毎日200点、300点、新刊出てまして、面白い本はいまだに出続けてますんで本は楽しいぞと」

去年12月、尾道市中心部にオープンしたBooks&Cafe灯書堂。
同じ店内にカフェスペースと本棚が両方あります。
小規模かつ個人で始めたいわゆる「独立系」と呼ばれる本屋さんです。

【Books&Cafe灯書堂 新家幸太さん】
「売れている本を片っ端から集めたわけではないので。自分が読みたい本っていうのもあるんですけど、置いておきたい本っていうか」

大型書店と比べると品揃えは限られますが、児童書から実用書、小説まで…。店主、新家幸太さんが厳選した一冊一冊が一度に見渡せます。

【東京から観光中の利用客】
「出合いがある場所だなと思って。本のオーナーさんが選んだ本だったりとか、色々知らないようなものが置いてあったりするので、そういうところに出合えるのですごく好きですね」

訪れる人は、自動的にオススメの情報を表示してくる「デジタル」の便利さより、新しい出会いを求め店に行き着くようです。

【利用客】
「普通の本屋さんだとどうしても目的の本を探して行っちゃう感じですけど、こういうところだと店の方がセレクトされた本が並んでるので。こんな本あったんだって。読んでいるとその世界の住人になれる気がして、僕は(読書が)好き」

長年、出版取次の会社とチェーン展開する書店で本の仕事に携わっていた店主の新家さん。
店の立ち上げは妻・知秋さんとの一からの挑戦でした。

【妻・知秋さん】
「正直に言うと半分最初は反対していました。もう1年、2年はずっと話し合いでしたね。家庭内で。本当にやれるのかっていう話をしたりとか」

それでも、本の温もりのある場をつくりたいと新家さんが諦めず、説得。

【Books&Cafe灯書堂 新家幸太さん】
「どうしても本とカフェをくっつける店を構想していたので、一人じゃちょっと無理だったのでなんとかして賛成にまわっていただかないと。お願いしますと」

コーヒーのいれ方も愛知県にある名店の店主から直接指導を受けました。

【Books&Cafe灯書堂 新家幸太さん】
「緊張するなぁ。手が震えるよ、本当」

「本屋さん」としての儲けは決して多くありませんが、「カフェ」として腕を磨くことで経営を両立させ店も軌道にのってきました。

【Books&Cafe灯書堂 新家幸太さん】
「お客様にもこういういいものがありますよというのを続けていくという…。それはずっとやっていきたいですね」

今、個人で小規模から始める「独立系」の本屋さんの開業を、積極的に後押ししているのが本の問屋・取次会社のトーハンです。

【トーハン 書店事業本部 袴田昌彦さん】
「スモール経営という部分があるのかなというふうに思いまして。やはりちょっと家族中心で経営するとか。自分の自宅を改装してとか、本屋さんが新しい形に進化してきているかなというところの進化の過程を見ているというようなイメージもあります」

一般的に本屋さんは取次会社から本を仕入れていますが、雑誌や書籍を一通り揃えるには本の委託販売のための保証金など、数百万円から一千万円以上の開業資金が必要でした。
そこで、取次会社・トーハンは個人の店主が小規模から気軽に始められるよう、従来のハードルを下げました。
本屋さんの閉店が相次ぐ一方、カレー屋さんで本屋さん、花屋さんで本屋さんなど、兼業で新たにオープンする店も続々登場し、この2年ほどで全国に80軒の新たな本屋さんが誕生しています。

広島市内にオープンした和booksもその一つです。
カフェでありながら、新刊だけでなく、中古本も独自に取り揃えています。

【和books 加藤由佳さん】
「値札も教え子の生徒がつけてくれました」

店主の加藤由佳さんは31歳。
去年まで県内の高校で国語の教師をしていました。
教え子たちも、加藤さんの挑戦を応援。

【教え子 大学生 柴田雅之さん】
「びっくりしたっす」
【教え子 大学生 寺神颯吾さん】
「生徒思いな先生で親身になって寄り添ってくれていたかなと思います」

子ども向けの地域の居場所づくりも目指すなど、教師としての経験が今に生きています。

【和books 加藤由佳さん】
「先生をしていたほうが良かったんじゃないとか、まだ若いのに…と結構言われるんですけども。今もすごく楽しく日々言葉を探しながらやってるところです」

毎朝、一日の始まりに相応しい一節を小さな黒板に書いています。

【和books 加藤由佳さん】
「『私はその人を常に先生と呼んでいた』から始まるある作品の一部です。文学の授業をしている中で1番思い入れがあるというか、力を入れてやっていた作品が『こころ』だったので、今日はちょっと『こころ』の一文を書いてみました」

特に加藤さんが選書した新刊の本棚には、人を想う「心」が詰まっています。

【和books 加藤由佳さん】
「エッセイとかケアに関するような本は少し多めに入れさせてもらっています。ただ、こう本棚の前でぼーっと背表紙のタイトルとかを見ているだけでも、何か自分に向けて言葉をかけられているような気持ちにもなって。もし同じように何か抱えているものが1人で抱えているものがある人がいれば、ぜひうちの本棚の前に立っていただけたらなあって」

本に救われてきたという加藤さんの本棚は訪れた人たちの心を温めます。

【利用客】
「選書が自分に合っているなと思うのと、気になる本が多いので通わせてもらっています」
【和books加藤由佳さん】
「今、本当に本を読まれないとか買われないとか、特に若い世代はそうと思われがちなんですけれども、意外とそんなこともなくって。若い人がたくさん読まれているっていうのは、この本屋を始めてみてすごく実感したところです」

デジタルの進展で活字離れが進んでいるとも言われていますが、一方で、店主の個性が輝く新しい本屋さんのカタチも県内で広がりつつあります。

テレビ新広島
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