フルートを始めてわずか数年で、全国の頂点に立った中学2年生がいる。鹿屋市立鹿屋中学校に通う久保篤弘さん(14歳)だ。2026年5月、千葉県で開催された全日本管楽コンクールの中学生の部で金賞(最優秀賞)を受賞。63人がエントリーした全国規模の舞台で、その音色が審査員の心をつかんだ。地元・鹿屋市では、この快挙をたたえるコンサートがすでに満員御礼となっており、地域全体が14歳の天才フルート奏者に熱い視線を注いでいる。

「打楽器」の全国大会でフルートが頂点へ

全日本管楽コンクールの中学生の部には、フルート、クラリネット、オーボエ、サックスという4種類の管楽器の奏者、計63人が全国からエントリーした。その中で久保さんは最優秀賞にあたる金賞を獲得した。

この記事の画像(11枚)

受賞の瞬間を久保さんはこう振り返る。「びっくりの一言です。自分もどうなるか心配していたのですが、精一杯やったので、いけるかなという気持ちもあった。本当にうれしかった」。謙虚さと自信が入り混じる言葉に、日々の鍛錬の積み重ねが透けて見える。

10歳で初めて吹いたフルート、最初から「すごい良い音」

久保さんがフルートと出会ったのは10歳のころ。通っていたピアノ教室で、試しにフルートを手にしたことがきっかけだった。

指導にあたるピアノ&フルート教室の竹下順子先生は、当時のことをこう語る。「久保君のお母様が『この子は音が鳴るものはすべて音を鳴らして遊んでいる、1日中』と。じゃあ『フルート吹いてみない?』って言ってフルートを持たせてみたんですね。そしたら最初からすごい良い音が鳴って」。

フルートは、楽器の穴に息を吹きかけるだけで音を出す仕組みだが、吹きかけ方が少しでも違えば音が出ない。竹下先生によれば「半年音が出ない子もいる」という難しさがある。それにもかかわらず、久保さんは初めから良い音を鳴らした。その後もめきめきと頭角を現し、数々のコンクールで入賞を果たしてきた。

吹奏楽部の仲間も認める「オーラ」

放課後の鹿屋中学校の音楽室。テスト期間が明け、久しぶりに集まった吹奏楽部の仲間たちと練習に励む久保さんの姿がある。テストを終えたばかりの久保さんは「理科は最後本当に意味が分からない問題が出た」と、ごく普通の中学生らしい顔も見せる。

しかし、楽器を手にした瞬間のまなざしは変わる。吹奏楽部のメンバーたちはその存在感をこう表現する。「音の質とか出し方とか楽器での歌い方とかが本当にすごくて尊敬してます」「練習でもオーラが出てます。『音楽〜』ってオーラが」「練習外でもずっとフルート吹いてます」。

同世代の仲間から「尊敬」という言葉が自然に出てくるあたりに、久保さんの演奏が周囲に与えるインパクトの大きさが伝わってくる。

満席まで1週間、地域が沸く「お祝いコンサート」

この快挙を受け、若手音楽家を支援する「鹿屋市音楽家支援ネットワーク」が、7月に久保さんのコンサートを開催することを決めた。会場は鹿屋市にある「リナシティかのや」の最大ホール。400席を用意したが、情報を公開してから1週間も経たないうちに全席が埋まってしまった。

同ネットワークの末吉俊一代表は驚きをこう話す。「今回はリリースして1週間もしないうちに400席全て出てしまいまして。想像以上です。だから今はどちらかというと、行きたい思いがあるのに来られない方々をどうフォローするのか頭を悩ませている状況です」。

末吉代表はこの快挙の意義についても語る。「こんな賞を獲る機会はそんなにないし、こういう子たちが鹿屋にいるんだよということをみんなに知って欲しいし」「これまでも鹿屋出身の音楽家たちって結構いるんですよ。でも、その中でも天才的な将来性を持っているんじゃないかとかなり期待している」。

鹿屋市が音楽的な才能を育んできた土地であることへの誇りと、次世代への期待が言葉の端々ににじむ。

「いろいろなことを仕掛けてくる」――ピアニストも楽しみにする共演

コンサートで当日ピアノ伴奏を担当するのは、ピアニストの竹下智子さんだ。久保さんとの共演についてこう語る。「勘とセンスがすごく良いのでいつも素敵な音楽を聴かせてくれます。毎回同じことをするわけではなくて、いろいろなことを仕掛けてくるので、そこに反応して演奏するのが楽しいところです」。

伴奏者が「反応するのが楽しい」と語るほど、久保さんの演奏には即興的な生命力がある。それは単なる技術の高さではなく、音楽を内側から感じ取る感性の豊かさを示しているといえるだろう。

「最終目標はベルリンフィル」、夢へ進み続ける14歳

久保さんが掲げる目標は大きい。「最終的な目標はベルリンフィル!フルートの首席で演奏できたらなっていうのが一番の目標です」。世界最高峰とも称されるオーケストラで首席を務める――14歳がそう言い切る姿に、頼もしさと清々しさを感じる。

7月のコンサートはすでに満員御礼となり、チケットを手に入れられなかった市民も少なくない。それでも久保篤弘さんの演奏を聴ける機会は、きっとこれからも増えていく。ベルリンフィルへの道のりは長いかもしれないが、この14歳は確かな一歩をすでに踏み出している。

【動画で見る▶鹿屋市の中学2年生 フルートで日本一! 地元では受賞記念コンサートを準備中 】

鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。