日常的に医療的ケアが必要な重い障害がある人達が、安心して過ごせる居場所を作ろうと活動する女性がいる。施設を立ち上げ、スタッフらと共に働く思いとは。

通所施設『ニコちゃん家』

福岡市城南区にある重度の障害がある人たちが通う施設『ケアコミュニティハウス ニコちゃん家(ち)』。日常生活の中で医療的ケアが必要な人たちが主に通っている。

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施設を運営するのは、森山淳子さん。

2012年にNPO法人『ニコちゃんの会』(現在は認定NPO法人)を立ち上げ、3年前にこの場所に開所した。

木造2階建てで天井は高く、温かい雰囲気の建物には、この場所を利用する人の様々な症状にも対応する工夫がなされている。

寝たきりの利用者が眩しくないように、梁についているライトは全て上向きに。

利用者のその日の体調に合わせて温度を調整できるように、床暖房やエアコンは、エリアで分けられるようになっている。特に、玄関は、屋根を大きく張り出し、雨が降っても車の乗り降りで体や人工呼吸器などが濡れないように設計されている。

玄関は利用者が濡れないように設計を工夫
玄関は利用者が濡れないように設計を工夫

森山さんは、この施設の開設にあたり、『どんなに重い病気や障害があっても心豊かに、その人らしく、人生を生き抜くこと』をモットーにしていると話す。「それを叶えるための1つの場所として考えた時に、その子達に1番快適な時間が過ごせるような環境を整えることが、私達の優先順位として1番大きかった」と森山さんは強調する。

この施設では、利用者はもちろん、地域の人達と一緒に楽しい時間が過ごせる場所としてイベントも行っている。

「地域の方たちと普通に交じり合って、いろんな楽しい時間を過ごせる。そういう交流が途切れないでいるのが、凄く私は大事かなと思っている」と森山さんは、地域との交流についても大事にしている。

重い障害を持っていた娘と夫の言葉

森山さんが、こうした活動を始めたきっかけとなる大きな出来事がある。「私自身が、重い障害のある子供の母親だったんですけど、3歳4カ月で亡くしていて…」。

森山さんの長女、涼子ちゃん。低酸素脳症で生まれ救急搬送された。出産から1週間ほど経ち、人工呼吸器をつけた娘の写真を初めて見て、涙が止まらなかったという。

そんな悲しみと絶望の中、森山さんを救ったのは、夫の言葉だった。「主人が『涼ちゃんと3人で、これからは楽しく生きていこうね」と。本当に魂が救われた。

私が今、ここでこんなことをやれているエネルギーは、その一言から来ている」と森山さんは当時を振り返る。

ボランティアと大学院に通った日々

2人の妹もいた涼子ちゃん。亡くなる直前まで、様々な場所に出かけたという。

その後、森山さんは、障害があっても楽しく生きていける社会を作りたいと、ママ友たちと一緒に、今の活動の原点となる『ニコちゃん通信の会』をスタート。

8年間ボランティアに参加し、15年前には、九州大学大学院で子供の心理や看護学についても、きちんと学んだと話す。

スタッフが何かの準備を始めた。梁に紐を取付ける。完成したのは、部屋の中でも楽しめるブランコだ。大学院で、海外には障害がある人たちも楽しめる遊具がたくさんあることを知り、設置したという。

「あのブランコ、呼吸器を付けている子も乗れるけど、やんちゃな男の子とか女の子も乗れる。私、『インクルーシブ(誰も排除せず共に参加し生きられるよう全てを包み込む考え方)』は、そういうことだと思う」と話す森山さん。

スタッフと一緒に父の日のプレゼントを作るのは、雄真さん。週に1度、この施設に通っている。

「『ニコちゃん家』は明るいし、寛大。小学校6年生の時に人工呼吸器になったけど、それまで使っていた放デイ(放課後等デイサービス)が『気管切開したら中止です』と言われて、利用できる所がなくなった」と話すのは、母親の美紀さん。

国が定める規定の約2倍のスタッフ

福岡市によると、医療的ケアが必要な子供を主な対象としている施設は、市内に約30カ所(未就学児含む 6月1日時点)で、決して多いとは言えない。

「ここは、年齢とか障害とかに合わせて、いろんな活動を提案してくれる。これらも全部『ニコちゃん家』で作ったけど、凄くクオリティも高くて、良い時間を過ごしてるんだなと思う。安心だし、『いってらっしゃい』となったら、雄真は雄真の時間、私は私のことをするみたいな感じになれる」と母親の美紀さんは、『ニコちゃん家』の存在に感謝している。

利用者は、もちろん、施設で働くスタッフの評価も高い。看護師の中山真樹さんは、「皆んな楽しそう。スタッフも来ている人も」。

保育士の漆山阿弥さんは、「保育士だから保育のことをするとか、看護師だから看護のことをするとかではなくて、対人間同士の付き合いみたいなのができている」と『ニコちゃん会』の魅力を語る。

この日の利用者は4人。一方、支援を行うスタッフは9人と、日頃から、国が定める基準の2倍ほどの人員を配置し、手厚いケアを行っている。

「本人達が、ここで楽しむということをしっかり実践していきたいと思うと、うちに来ている子供たちは医療ニーズが凄く高くて、リスクも背負っている。安心・安全・楽しいことをするとなると、スタッフの絶対数がそれぐらい必要」と森山さんは語る。

基本的には、国の基準を超えてスタッフを配置した場合、施設側が人件費を負担することになるが、森山さんがこのやり方を変えないのは、スタッフへの思いもある。「本当にホスピタリティ溢れる人達なんです。その人達が笑顔で子供たちと過ごすためには、チームワークが取れやすいぐらいの人数は必要だし、1人で考えるより横の人と何のアイデアでもケアも皆んなで出し合って見ていくというのが大事」。

森山さんは、医療的ケアが必要な人が、年齢や症状の重さで行き場をなくさず、サービスを受けられるようにしたいと思いを新たにしている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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