中東情勢の影響で石油製品「ナフサ」の供給が懸念される中、医療用製品の不足も深刻化。医療的なケアを必要とする子供の母親は「生死に関わる」と危機感を感じている。
1日5回の栄養剤注入に必要なシリンジが品薄に
坂井市に住む10歳の西村心翔さん。生まれつき口から十分な量の食事をとれず栄養が不足しがちなため、食事以外に栄養剤を注入しないと体力が維持できない。

チューブを使って鼻から胃に直接栄養を送る必要があり、ナフサを原料とするプラスチック製の医療用シリンジを使って1日5回、栄養剤を注入する。
心翔さんのケアに使うシリンジは大小必要で、大きい方は経管栄養用、小さい方は栄養注入の最後にお湯で流し込んだり、注入の前に鼻から入っている管が胃に届いているか、空気を入れて確認する際に使用している。
「生死に関わる」やむを得ず再利用
混乱する中東情勢の影響が続く中、母の友宇子さんは医療器具が品切れにならないか不安を感じる日々を送っている。「これがないと心翔くんに栄養を入れてあげられない。生きる上で大事なことで、生死に関わる」
医療用シリンジは診察の際に病院からも支給されるが、大半は薬局で購入したもの。衛生面から「再使用禁止」が原則。しかし、少しでも長持ちさせようと、いまは洗って繰り返し使っている。
それでも5日ほどでピストンのゴムの部分が劣化して使用できなくなるという。
「ナフサ不足の情報が流れた時から薬局には小まめに連絡して多めに注文しているけど、石油が足りない状況がいつまで続くかが分からないし…怖い」
薬局でも「再利用」を検討
心翔さんの家に医療器具や薬などを届けているフロンティア薬局三国店の山崎寛薬局長によると「いまのところシリンジはどうにか入ってきてはいるが、メーカーに確認した限りでは今後はちょっと分からないと…入荷が滞る可能性があるといわれている」という。
医療的ケア児だけでなく、様々な患者に使用するプラスチック製の医療器具のうち、すでに入荷が滞っているものもあるという。粉薬を包む分包紙、液体の薬を入れるボトル、軟膏を入れる容器だ。
「軟膏や水剤のボトルなどは他の店舗で余裕のあるところから融通してもらいしのいだ時もあったが、限界がある。今後は、一度患者に渡したものを再利用することを検討している」
「どれか一つでも無くなると、死活問題」
政府はナフサ由来の製品について、年度を越えて供給の継続は可能で、あくまで“目詰まり”が問題だとしている。
ただ、その“目詰まり”解消に向けては有効打がないのが現状で、すでに医療現場に影響が及んでいる。

シリンジ以外にもたくさんの医療器具を使いながら心翔さんのケアを続ける友宇子さん。「遠くで行われてる戦争なので最初は全然気にしてなかったけど…どれか1個でも無くなると、死活問題。生きていく上で必要なものばかり」
母の言葉に、心翔くんもうなずく。
一つのプラスチック製品の不足が命に関わる医療現場。中東情勢の混乱により、医療的ケアが必要な子供たちや、その家族は不安な日々を送っている。
