世界が認めたオリーブオイルに、障がい者とともに育てるキクラゲ。広島・江田島市では、地域の特産品を生かした商品開発が広がっている。その背景には、後継者不足や耕作放棄地といった課題があった。
本場イタリアも驚いたオリーブオイル
瀬戸内海に囲まれた江田島市。その豊かな自然の中に佇む「江田島オリーブファクトリー」で作られているのが、「安芸の島の実」というオリーブオイルだ。製造開始から5年目となる2019年、このオリーブオイルはイタリアの国際コンテストにおいて、全8部門中2部門で1位を獲得した。
「安芸の島の実 江田島搾り」リベラグループの浜田章裕理事は、当時をこう振り返る。
「イタリアはオリーブオイルの本場ですから歴史も違いますし、この賞を取った時にはイタリアの関係者たちがざわついたらしい。イタリアで日本のオリーブオイルが1位を獲得したということは快挙だったのかもしれませんね」
実際に味わった矢野寛樹記者も、その香りの良さに驚いた。
「オリーブオイルの香りがいいですね。パンに付けて食べたい」
浜田理事は「パンに付けたら最高ですね。若干、辛味もある。これはポリフェノールらしいです」と話す。
この会社では2019年の受賞以降も毎年国際コンテストに挑戦し、受賞を重ねている。
浜田理事は、その理由についてこう話す。
「うちは地元農家からオリーブの実を買い取っています。『このオリーブオイルが世界一になっているので、わしらも頑張る』という農家のモチベーション維持につながればいいと思いながら、毎年国際コンテストにチャレンジしています」
耕作放棄地をオリーブ畑に
オリーブオイルづくりには、製造開始当初から変わらないこだわりがある。
それは「収穫したその日に搾る」こと。
「もう10年になりますが、農家の皆さんが約束をちゃんと守ってきれいな状態で出荷してくれるので、安心して搾油できる。その連携ができているからこそ、このような賞をいただいていると思います」
この事業は、地域活性化を目的に始まった。背景にあったのは各地で増える耕作放棄地の問題だ。
「耕作放棄地が増える中で、何とかそこにオリーブの木を植えてもらい、オリーブの実は私たちが買い取る。そんな取り組みを2011年から始めました」
農家が栽培し、会社が搾油・販売を担う。いわゆる6次産業化の仕組みづくりにも取り組んだ。農家にとっては、自ら育てたオリーブがどのように販売されているのか“出口”が見えることも強みだという。現在では、インターネットを通じて全国から注文が寄せられるようになった。
その成果は数字にも表れている。
「生産農家も徐々に増え、2025年は101軒の農家に出荷してもらっています。収穫量も出荷農家の数も過去最高です」
15年近く続けてきた取り組みは、地域産業の新たな柱へと成長している。
障がい者と育てる“白いキクラゲ”
江田島市にある福祉サービス事業所「りんりん」では、地域の特産品を生かした別の挑戦が行われている。
栽培しているのはキクラゲだ。
乾燥品だけでなく、生のキクラゲも少量だが地元の小売店などへ出荷している。育てているのは黒と白の2種類。特に白いキクラゲは栽培が難しいとされるが、障がいのある人とともに取り組める農業として、2022年から栽培を始めた。
一方、地域産業を維持するためには、農産物の生産だけでなく商品開発も重要だ。江田島では、廃校を活用して特産品の加工に取り組む動きも広がっている。
廃校から生まれる新たな“島みやげ”
江田島市内の廃校になった中学校。案内されたのは、かつて家庭科調理室だった教室だ。
沖美地域再生会議の勝谷邦三理事長は説明する。
「ここはもともと家庭科教室だったんです。ここで菓子製造の許可を取って、ジャムや菓子類の製造を始めました」
県外の食品会社で働いた経験を持つ勝谷理事長は、退職後に故郷の広島へ戻り、江田島で商品開発に取り組んでいる。
甘夏みかんジャム、いちじくジャム、オリーブ茶など、すべての加工品に江田島産の素材を使用。きっかけは、移住後に感じた地域の課題だった。
「私が9年前に移住してきた時は、お客さんがまず来ない。来ても宿泊する所がないし、お土産物もないということで、非常に不評でした。そこで地元のものを利用して何かできないかと考え、生まれたのがこの商品です」
“江田島ブランド”で後継者を呼び戻す
勝谷理事長が商品開発に力を入れる理由は、それだけではない。背景には、地域で進む高齢化や後継者不足への危機感がある。
「農家を息子に『継げ』とは言えないという親御さんが多かった。そうした2代目、3代目の人たちにもう一度戻ってきてもらうために取り組んでいるのが加工品づくりです。お金になれば、農業を続けようという人も増えると思います」
人気商品の甘夏みかんピールは、水炊きに約4時間、その後のシロップ炊きに約6時間。さらに天日乾燥まで行う手間のかかる商品だ。
ジャムづくりにも独自の工夫を凝らしている。
「われわれはあえて果肉を大きくして、粒を残している。ミカンならミカンを食べた、イチジクならイチジクを食べたという食味を体験できるのが強みだと思っています」
目指しているのは商品の販売だけではない。
「われわれは江田島ブランドを売りたい。江田島を何とか立ち上げるという思いです」
地域の特性を生かした商品づくりを通じて、地域の雇用や産業を守る。少子高齢化や人口減少が進む中、江田島ではそんな挑戦が続いている。
なお、こうした広島県内の個性豊かな商品や取り組みを紹介する「広島グリーンズマーケット」が、6月6日から7日にかけて広島市中区の「ひろしまゲートパーク」で開かれ、商品の背景にあるブランドストーリーも紹介された。
(テレビ新広島)
