町のほとんどが森林という自然豊かな福島県古殿町。この土地ならではの自然の恵みを生かした草木染めと、昔ながらの知恵が詰まった伝統食「凍み餅」がある。捨てられるはずだったものが美しい布に生まれ変わり、地域の野草が1年待ちの人気グルメを支える。古殿町に受け継がれる、暮らしの知恵と彩り豊かな世界を紹介する。

■捨てられるものが宝物に
古殿町で草木染めの制作や販売を行う「ソメットコロ」。運営するのは、いわき市出身で元地域おこし協力隊の吉田チエミさんだ。店内には、植物から生まれた天然の色合いが美しい、素朴で温かみのあるストールや小物が並ぶ。
吉田さんの草木染めには、古殿町の豊かな自然がふんだんに使われている。森林が多いことから、杉の木で染めることも多いという。地域の農家も吉田さんの活動を応援しており、様々な素材を提供してくれる。
中でも意外な素材が、シャインマスカットの枝だ。農家が切り落とし、本来なら捨てられてしまう枝を譲り受け、「これで染まるかな」と試したところ、美しい色合いが生まれた。吉田さんは「みんながいらないっていうものが、最高のお宝に変わるかなって思ってやっています」と語る。
染色作業は繊細だ。例えばサルナシの枝でストールを染める場合、約40℃の染色液で20分ほど布を動かし続ける。その後、水洗いをして色を定着させるための「媒染液」につけ、さらに染色液にくぐらせて色に深みを加えていく。農家が大切に育てたものから生まれた染液を無駄にしないよう、感謝の気持ちを込めて一枚一枚丁寧に染め上げる。
《ソメットコロ》
月に1回草木染めの体験会も開催。詳細はインスタグラムで確認。

■1年待ち!伝統の凍み餅
草木染めの活動とともに、吉田さんがその魅力を伝えようと力を入れているのが古殿町の「凍み餅」だ。凍み餅は、冬に餅を軒先などに吊るして凍らせ、乾燥させて作る伝統的な保存食。吉田さんが「古殿の凍み餅はアツイ」とこよなく愛するのが、「ふるさと工房おざわふぁ~む」の小澤啓子さんが作る凍み餅である。
小澤さんの作る凍み餅には、この地域ならではの素材が使われている。それが「オヤマボクチ」という山野に自生するキク科の多年草。この地域では「ごぼっぱ」と呼ばれている。夏から秋にかけて収穫した葉を乾燥させ、餅に混ぜ込むのだ。
ごぼっぱの葉は繊維が非常に豊富で、餅の「つなぎ」の役割を果たす。かつて農家では、年貢を納めると手元に残る米はわずかだった。そこで、餅を少しでも増やすためにごぼっぱが使われるようになったと伝えられている。
小澤さんは「地域に伝わる生活の知恵を守りたい」との思いから、手作りの昔懐かしい味を届け続けている。この凍み餅には、地域の環境を生かして作られてきた歴史と、作り手の愛情が込められている。

■外カリッ中とろ~り 絶品凍み餅
小澤さんおすすめの食べ方は、水で戻した凍み餅を多めの油でじっくりと焼く。両面が焼けたら、醤油、砂糖、みりんを合わせたタレに絡めて完成だ。外側はカリカリと香ばしく、中はとろーりとした食感が楽しめる。ごぼっぱ特有のえぐみや強い香りはなく、食感の違いを生み出している。
小澤さんの凍み餅はそのおいしさから大人気で、なんと1年待ちという状況だ。小澤さんは「この古殿の気候、空気を吸い取ってきた凍み餅を皆さんに食べてほしいです」と話す。
この味に魅了された吉田さんも、今では自分で凍み餅を作ったり、その魅力を伝える活動をしたりと、草木染めとの「二刀流」で古殿町を盛り上げている。「自然の力を生かして受け継がれてきた食と彩り。古殿の皆さんの知恵は素晴らしい」と吉田さんは語る。
《ふるさと工房おざわふぁ~む》
凍み餅の製造・販売のほか、米作りや農業体験なども行う。
※小澤さんの作る凍み餅は1年待ち。『道の駅ふるどの』で加工したものが販売されている。

福島テレビ
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