望まない妊娠を防ぐ“最後の砦”と言われる緊急避妊薬。薬局での販売が始まり3ヵ月が経ち、評価の声がある一方、新たな課題も見えてきた。
福岡市の中心部にある『大賀薬局西鉄福岡駅店』。3カ月ほど前から“緊急避妊薬”『ノルレボ』の取り扱いを始めている。

緊急避妊薬は“アフターピル”とも呼ばれ、性行為から72時間以内に服用することで排卵を遅らせるなど妊娠を阻害する作用があり、予期せぬ妊娠を約8割防ぐことができるという。

個室で薬剤師の目の前で服用
約90の国と地域では医師の処方箋がなくても薬局で購入できたのに対し、これまで日本では、医師の診察や処方箋が必要とされてきた。

2026年2月からは日本でも薬局で購入できるようになったが、他の市販薬とは異なり、販売には厳格な条件が設けられている。
「緊急避妊薬は、『要指導薬品』というものに分類されていて、必要な事項を確認させていただいた上で販売することが可能となっている」と話すのは大賀薬局西鉄福岡駅店の薬剤師、松田輝翔店長。
具体的には、購入者のプライバシー保護のため個室での対応が義務付けられ、研修を受けた薬剤師が行為の詳細な日時や体温の確認、生理周期など定められた項目をチェックシートに従い、細かく尋ねていく。
そして、問題なしと判断されれば、薬剤師の目の前で服用することになっている。

『ノルレボ』1錠7480円
緊急避妊薬『ノルレボ』の価格は1錠7480円。薬剤師の確認は必要だが、未成年が服用する場合でも保護者の同意は不要だ。

福岡県内では359カ所の薬局で販売されていて、この薬局では1日に5人以上が購入しているという。
これまでに比べ手に取りやすくなった緊急避妊薬。販売開始から約3か月が経ち、店長の松田さんは課題も感じていると話す。「思ったより購入を希望される方が多いので、どうしても時間はとられてしまう。一方で、薬剤師として適切に判断し、販売可能かどうか、時間がない中でもしっかり判断していく必要がある」。

緊急避妊薬の市販化について女性からは好意的な声が多く聞かれた。「病院に行くのは、少し怖かったりするので、安心するかなと思う」(30代女性)

「望まない子供というところもあると思う。緊急的な、生まれる前にどうにかするという策があるのは、いいのかなとは思う」(40代女性)

性被害者からの相談10代が3割
厚生労働省によると、2024年度の中絶は12万件超。福岡県は全国で5番目に多い7058件にのぼっている。そのうち600件以上は10代で、中には性暴力による被害も潜んでいると言われている。

服用が早いほど効果が高いとされる緊急避妊薬。福岡市にある『犯罪被害者支援センター』では、性被害が多く発生する夜間でも薬の処方を含めた相談をすぐ受けられるようスタッフが24時間体制で対応に当たっている。

「やはり10代もしくは20代の若い世代からの相談がすごく多い状況。10代からの電話は3割程度」と福岡犯罪被害者支援センターの相談支援員、加来麻子さんは現状を語る。

センターでは、薬局での緊急避妊薬の販売は「望まない妊娠を防ぐ選択肢が増える」と一定の評価をしている。

しかし一方で、薬剤師が聞き取りを行う中で、服用する人のプライバシーにどこまで踏み込むべきなのか?

そして、それをセンターなどに知らせるべきかどうか、戸惑いも起きていると加来さんは話す。「薬剤師のところに緊急避妊薬を買いに来た人がいた場合、全員にセンターのカードを渡してもらい、もしも被害に遭った人で相談したいという状況であれば、センターに相談下さいと案内する形にしている」。
産科医「時期尚早だったのでは」
今回の緊急避妊薬の市販化について、産婦人科の医師からは『薬剤師にかかる心理的負担が大きすぎる』と指摘する声もある。

「薬剤師さんの問診だけで的確な診断が本当にできているのか、かなり難しいことではないかと思う。事件などに巻き込まれていないか、既に妊娠している人もいたりする」と福岡県産婦人科医会の藤伸裕会長は懸念する。
さらに藤会長は、薬局での販売開始が「時期尚早だったのではないか」との見解を示した。
「性教育もしっかりと行われてない中で薬局での販売が解禁になったことは少し時期が早かったのではないかという気もする。これからは急いで性教育等をきちんとした形で進めていく必要があるのではないか」。
日本では学習指導要領にある『はどめ規定』により、受精や妊娠については教えるものの「妊娠の経過を取り扱わない」と規定していて、多くの学校現場では性交を教えない限定的な教育内容となっている。藤会長が指摘する性教育をきちんとするということは、現在の学校教育の在り方に大きく起因している。

緊急避妊薬『ノルレボ』の市販解禁は女性の心身を守る意味で選択肢が増えたともいえるが、今後、販売における運用やその後の各機関との連携構築も課題として早急に対処する必要がありそうだ。
(テレビ西日本)
