学校現場の危機感と対策

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5月6日、福島県郡山市の磐越自動車道で、新潟県の高校の男子ソフトテニス部員を乗せたレンタカーのマイクロバスがガードレールに衝突し、高校生1人が死亡、20人が重軽傷を負った。
過失運転致死傷の疑いで逮捕された運転手の男(68)は、営業運転に必要な二種免許を所持していなかった。
警察は、学校と運行会社の間で「白バス」行為(違法な旅客輸送)が繰り返されていたとみて捜査を進めている。

宮城学院中学校高等学校 平林健校長
宮城学院中学校高等学校 平林健校長

この事故をうけ、宮城県内でも部活動などの移動の在り方を見直す動きが広がっている。

仙台市青葉区にある宮城学院中学校高等学校の平林健校長は、「事故に遭った高校と同じ私立学校として、注意喚起を徹底しなければならない。より一層の注意が必要だと痛感している」と語る。

宮城学院では、遠征の際は公共交通機関の利用や保護者による送迎が主であるが、バスを委託する場合は業者選定を顧問に一任していた。しかし今後は、校長や教頭への「遠征計画書」の提出を義務付ける方針だ。

宮城学院中学校高等学校 平林健校長:
これまで不透明だったバス会社の詳細や支払額を明確にする。細かな練習試合についても計画書を提出させる。

また、遠征の在り方自体も見直す考えだ。「費用面と目的を天秤にかけた際、安全を絶対優先すべきであることを教職員も把握し、部活を運営させたい」と、安全確保の重要性を強調した。

行政による実態調査と通知

宮城県教育委員会が県立学校に対して通知した内容
宮城県教育委員会が県立学校に対して通知した内容

宮城県教育委員会は5月12日、県立学校に対し「原則として、児童・生徒を教職員らの自家用車に同乗させない」などの事故防止策を通知した。宮城県は13日、私立学校にも同様の通知を出し、安全確保の徹底を求めている。今後は県立学校を対象に、移動の実態調査も行う方針だ。

伊藤哲也副知事は、「不適切な事例があれば再発防止策を検討する。生徒や保護者の安心のため、教職員が運転手の免許証を確認するなどの対策をまとめていく」と述べた。

宮城県教育委員会が通知した主な内容は以下の5点である。

1.    原則として、児童・生徒を教職員や部活動指導員などの自家用車に同乗させない。
2.    移動の際は、主に公共交通機関などを利用する。
3.    やむを得ず車両を使用する場合は、任意保険の加入や保護者の承諾を確認する。
4.    バス会社へ依頼する際は、書面で適切な契約を交わし、事業用車両(緑ナンバー)であることを確認し、安全体制を把握する。
5.    各学校の危機管理マニュアルに基づき、安全管理体制を整える。

仙台市教育委員会も、全ての市立学校に対して安全管理の徹底を求める通知を出し、送迎の実態調査を実施する予定だ。

現場の現実と「学校への丸投げ」への指摘

仙台大学体育学部 江尻雅彦教授
仙台大学体育学部 江尻雅彦教授

一方で、部活動運営に詳しい仙台大学体育学部の江尻雅彦教授は、今回の通知内容について「学校への丸投げ状態である」と厳しく指摘する。

仙台大学体育学部 江尻雅彦教授:
緑ナンバーのバスを利用したくても、ドライバー不足や働き方改革による勤務時間の短縮により、現実的には手配が困難な場合が多い。国や自治体が発想を変えなければ、また同じような事故が起きる。

20年間にわたり高校野球部の監督を務めた経験を持つ江尻教授は、部活動運営には「抜け道」が多く、国単位でのルール作りと責任の明確化が必要だと説く。

仙台大学体育学部 江尻雅彦教授:
これからの部活動は学校だけでなく、地域や家庭を含めた社会全体で子供たちを支援するという発想に立つべき。

さらに、学校側が遠征の方針について保護者に説明し、理解を得ることの重要性も強調した。

仙台大学体育学部 江尻雅彦教授:
顧問と業者のやり取りの中でお金の流れが不透明になることもある。年度の初めに、学校としての遠征方針を保護者へきちんと説明すべきだ。

磐越自動車道で発生した事故は、部活動の遠征の在り方を問い直す契機となった。安全管理を「現場への丸投げ」にせず、実態に即した持続可能なルール作りを、県や国レベルで進めていくことが強く求められている。

仙台放送
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