岩手県八幡平市の安代地区は、もとは「安代町」という町名でしたが、松尾村と西根町と合併して2005年に「八幡平市」になりました。

長年にわたり岩手県内の地名を調べている宍戸敦さんによると、八幡平市安代町を流れる「安比川」と「米代川」の川の名前から付けられた合成地名で、川の名前を2つ使うのは全国でも珍しい町名だということです。

安比川と米代川、それぞれの由来についても宍戸さんは次のように説明します。

宍戸敦さん:
「安比」は安比川の上流に安比岳という山があり、周囲の山はなだらかだが、安比岳は急な崖になっている。急な崖のことを「アブ」と言い、その「アブ」から「安比」に変化して安比岳、そして地名となっていったと考える。「米代」は米代川が秋田県の方に流れている。この米代の「ヨネ」は、「ヨナ」という方言で「砂地」のこと。米代川の「シロ」は「尻」という字で、秋田側の米代川の河口の砂地を地名の由来にしたと考える。

安比川が流れる安代、そして川沿いにある地域は荒屋新町と呼ばれていますが、「新町」がつくということは新たにできた町なのでしょうか。

宍戸敦さん:
もともとは「荒屋村」という村があった。荒屋村は「新たに切り開かれた土地」という地名。河川敷の肥沃な土地だったから新たに人家が増えていった。荒屋村もそういう由来の地名になる。荒屋村の中で交通の便がいい場所が見つかり、新たにその中心部に移動して町を作った。それが「荒屋新町」という地名になっていく。

盛岡市から秋田県の大館市へと続く鹿角街道の中継地点として栄えたのが荒屋新町です。

荒屋新町の周辺は、江戸時代から汁椀など実用的な漆器の産地となっていて、時が経った今も漆器の文化を受け継ぐ場所「安比塗漆器工房」があります。

安比塗漆器工房代表理事 工藤理沙さん:
安比塗は日常生活の中で使ってほしいという思いを込めて作っている漆器。技法としての特徴は漆を全部で6回塗り重ねて作る「塗り重ね」という技法で、木と漆だけでシンプルに作るやり方。どんな料理でも他の食器と組み合わせても、けんかしないデザイン。町が「荒沢村」と呼ばれていた時代は宿場町としても栄え、その当時は「荒沢漆器」という名前で世の中に広まっていった漆器。

かつて荒屋村があり、その中に荒屋新町が含まれていました。
その後、荒屋村は隣接する浅沢村と合併し「荒沢村」へ、そこで生まれた荒沢漆器でしたが、大きな困難に直面することとなります。

安比塗漆器工房代表理事 工藤理沙さん:
戦後にプラスチックの食器が出てきて、漆器を作る人が昭和50年代(1970年代)にはいない状態が続いた。この町にある伝統文化がなくなるのはもったいないということで、昭和58年(1983年)に新たに人を育てて新しく「安比塗」という名前も付けた。
作り方も新しくなっており、荒沢漆器は簡単な作りの漆器だったが、安比塗は木に漆を塗り重ねるという作り方に変わった。伝統は伝統で守りつつ、世の中のライフスタイルは変わっていくので、それに合わせて柔軟なものづくりができるような環境をつくって次の世代を育てたい。

安代地区で一度は途絶えかけた漆器の文化は、新たな感性を取り入れながら次世代に受け継がれていきます。

岩手めんこいテレビ
岩手めんこいテレビ

岩手の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。