ハンセン病患者の隔離政策を定めた「らい予防法」が憲法違反との司法判断が出て、25年です。瀬戸内市では5月9日、共生社会の実現をテーマにシンポジウムが開かれました。
熊本地裁で「らい予防法」の違憲判決が出たのは25年前の2001年5月11日。法律は1996年に廃止されていましたが、判決では、少なくとも治療法が確立された1960年以降、患者を隔離する必要がなかったとして、国に対して元患者に賠償を命じました。
(当時の小泉純一郎総理大臣)
「控訴を断念」国は控訴を断念し判決が確定。元患者に謝罪した上で偏見や差別の解消に取り組むことを約束しました。あれから25年。偏見や差別は解消されたのでしょうか。
9日に共生社会の実現をテーマにシンポジウムが開かれた瀬戸内市のハンセン病療養所長島愛生園。この日は1988年に長島と本土を結び、「人間回復の橋」と呼ばれた邑久長島大橋の開通記念日です。
入所者で89歳の石田雅男さんは、隔離生活や法律の廃止などこれまでの人生を振り返りました。
(長島愛生園 石田雅男さん(89))
「病気になったことは不幸、しかし得難い経験をしたそれは何かと言うと、つらい思いをいっぱい味わって傷だらけの心に、ふと思うのは、それでも人間という生き物は優しい生き物、そういうことを思わせてくれた人間社会」
社会と交流することに不安を感じたこともありました。それでも人間らしく生きていこうと努力し、偏見や差別の解消に向けて取り組み続けたことなどを語りました。
こうした入所者の努力の一方、厳しい現実もあります。ハンセン病を巡って国が2025年に公表した初の全国意識調査では、偏見や差別は今もあり、これまでの啓発活動が国民にほとんど届いていないことが浮き彫りになったのです。
(長島愛生園 山本典良園長)
「若い人に関心を持ってもらうために切り口を変えたい」
「共生社会実現を祈念することに着眼」
偏見や差別の意識はハンセン病だけでなく今も様々なところで見られます。シンポジウムでは、重度の障がい児の親や認知症をはじめ精神疾患の専門家も参加。病気や障がいなど様々な立場の人たちが生きやすい社会を目指して意見を交わしました。
また園では長島に橋が架かった5月9日を「共生社会の実現を祈念する日」に制定するよう呼びかけています。
(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「ハンセン病というはんこはなかなか消えない、少しでも早くごく普通の病気であるとなってほしい」
「私たちのことをやっぱり伝えてもうことしかない、知ってもらって伝えてもらうことしかない」
(長島愛生園入所者 石田雅男さん)
「後退はしていない、前に進んできたと感じる」
「らい予防法はどんなものかどんな影響を与えたか社会も国も反省してほしい」
「人と人の関係、手を取り合うことを心がけてほしい(頑張ります)(笑)」
全国に13ある国立療養所では、639人が暮らしていて平均年齢は88.8歳です。今後、問題を風化させることなく、私たち1人1人が身近なこととして考え続け、偏見や差別のない共生社会をつくる必要があります。