中学校の部活動についてです。これまで学校が主体となっていた「部活動」を、地域のクラブなどに委ねる「地域展開」が進んでいます。背景には、少子化で学校単位での部活動の維持が難しくなってきたことや、教員の働き方改革があります。2025年度までは「改革推進期間」で、可能なところから「休日」の部活動を地域に展開。長野県内の中学校では「休日」の地域展開が2026年度までに完了する予定の部活動は、運動部、文化部あわせて「87.5%」にのぼります。そして2026年度からの6年間は、次の段階の「改革実行期間」で、休日は原則すべて地域に展開、平日は地域の実情に応じて進めることを目指しています。地域クラブへの展開が進む一方で、多くの課題も浮上してきています。長野県内でも先駆的に地域展開を進めた千曲市と坂城町合同の地域クラブを取材し、現状と課題をまとめました。
■学校の垣根を越えた地域クラブ
4月14日の火曜日、戸倉上山田中学校のグラウンドで陸上の練習に励むのは―
クラブ員:
「(何中学校?)戸倉上山田中学校です」
「屋代中です」
「埴生中です」
千曲市と坂城町の中学校5校から21人の生徒が集まり、一緒に練習をしていました。この練習は、部活動ではなく―
中学生:
「今は千曲坂城クラブの陸上の練習中です」
「千曲坂城クラブ」は千曲市と坂城町が3年前(2023年)に立ち上げた地域クラブです。
■県内初、行政主体のクラブ
千曲坂城クラブ 陸上専門部・宮入修一さん:
「もっとリラックスして」
陸上専門部を指導するのは宮入修一さん(59)です。
会社員として働く傍ら、20年以上、戸倉上山田中陸上部の外部コーチを務め、「クラブ」に移行した後も引き続き指導員として教えています。
千曲坂城クラブ 陸上専門部・宮入修一さん:
「一生懸命取り組む子どもたちの集まりなので、困ることも少なく順調に(活動できている)」
千曲坂城クラブは長野県内初の行政主体のクラブで、市と町の6つの中学校の運動系・文化系合わせて「18の部活動」を一つの枠組みに入れて運営しています。
生徒の会員数は約1100人(2025年度時点)。指導員は270人(2026年4月時点)。
一部の専門部では、休日だけでなく、平日の活動も行い、完全移行が進んでいます。
■自転車で25分かけ練習へ
4月14日火曜日午後3時半すぎ、千曲市の埴生中学校は下校の時間です。
歩いて帰宅するのは2年生の柴田心寧さん(14)。「千曲坂城クラブ」の陸上専門部に所属しています。
埴生中・柴田心寧さん:
「(これからどこに?)家に帰って、補食を食べて、自転車で戸上中まで行きます」
練習開始まで少し時間があるので、いったん家に戻り、着替えや軽食を済ませます。
柴田さんの母・志乃さん:
「いってらっしゃい」
クラブの仲間と一緒に自転車で出発。
向かうのは自宅から4.5km離れた戸倉上山田中学校です。到着まで自転車で約25分かかりました。
午後5時半、練習開始です。
■「陸上ができてうれしい」
もともと、千曲市、坂城町の中学校で陸上部があったのは戸倉上山田中のみ。
クラブができたことで陸上部がなかった中学の生徒も、陸上ができるようになったのは大きなメリットです。
屋代中からの生徒:
「屋代中はもともと陸上部がないので、(陸上が)できなかったのがここまで来てできるようになったのがうれしい」
戸上中からの生徒:
「平日もこうやってきつい練習をこなしていけば、将来にも役立つかもしれないし、結果を残すためには必要なこと」
埴生中・柴田心寧さん:
「違う中学でも練習に参加させていただいていることに感謝しています」
■夜8時過ぎの帰宅…親の心配
宮入さんは平日にも練習が広がることでメリットも多いと話す一方、課題も多いと指摘します。
千曲坂城クラブ 陸上専門部・宮入修一さん:
「陸上専門部は学校の先生方のスタッフがいませんので、どうしても17時30分~19時30分という2時間の枠で活動しているので、見る側としては仕事帰りで見られるけどその分、集まってくる生徒にとっては負担があって申し訳ない」
平日は仕事が終わってからの活動となり、必然的に開始時間が遅れます。
部活動の時と比べると約1時間、開始と終了時間が遅くなり、季節によっては日没後の練習になることもあります。
何より生徒の帰宅時間が遅くなることが心配だといいます。
千曲坂城クラブ 陸上専門部・宮入修一さん:
「生徒の生活のリズムに悪影響がなければいいと感じています」
柴田さんの母・志乃さん:
「学校から帰って来てから行くようになるので、帰りの時間が少し遅くなった。午後8時すぎに帰ってくることが多いので(心配)」
■指導者の確保に奔走
「指導者の確保」も大きな課題です。
千曲坂城クラブに登録している指導者は270人。このうち教員の「兼業」は51人と2割以下で、ほとんどが「地域の指導者」です。
クラブは、設立時から説明会などを数多く開き、指導者確保に力を注いできました。
陸上専門部の地域指導者は8人いますが、宮入さんは20年以上のコーチ経験で得た人脈を駆使して、指導者確保に奔走したといいます。
千曲坂城クラブ 陸上専門部・宮入修一さん:
「この学校の卒業生で地元に残っていたり、協会の関係者で声をかけて手伝ってもらっています」
■3000円の「年会費」が「月会費」に
そして「費用負担」も大きな課題です。
休日だけでなく平日まで活動が広がることで、指導者への報酬・施設利用料・移動費などの負担が増えることになります。
千曲坂城クラブでは―
宮入修一さん:
「すべての専門部が、一律月会費が(上限)3000円。2026年度からスタートしているので、各ご家庭の負担になる部分なので、その辺(負担感)がなければいいなと」
2025年度までは保険を含め3000円の年会費だけでしたが、2026年度から活動時間によって上限3000円の「月会費」を徴収するようになりました。
柴田さんの母・志乃さん:
「学校の先生から地域の指導者になるので、料金の発生は仕方ないかなと。(月会費は)そんなに気にしていなくて(指導に)専門性もあるので、負担ではない」
県内の多くのクラブでは会費だけでは賄えず、行政からの補助金を活用しているのが現状です。
しかし、補助金が将来も維持されるかは不透明で今後、自立した運営の検討が求めれられるかもしれません。
■県も課題解消へ「伴走支援」
一方、県も、応援サポーターや指導者を募集し、クラブとのマッチング支援を行うなど、課題解消にむけて取り組んでいます。
県教委事務局保健厚生課・柳沢誠さん:
「子どもたちの多様なニーズに応えることができるように、伴走支援をしていきたい。子どもたちが将来に向かって豊かなスポーツライフ、文化活動を継続していく、裾野を広げていきたい」
ネットを活用した「オンラインクラブ」の実証実験も行い、離れた地域にいてもプロの指導などが受けられるような体制づくりも進めています。
県教委事務局保健厚生課・柳沢誠さん:
「オンラインを活用して指導をする中で、子どもたちのニーズに合わせた活動につながっていけば」
■平日も43%が移行予定 地域差も
県内は全国的に見ても先進的に地域展開を進めていて、2026年度末までに平日も約43%が移行を完了する予定です。
ただ地域によって差があり、北信の69%に対し、南信は24%にとどまっています。
子どもたちのクラブ活動をどう支えていくのか。
先ほどの課題以外にも、「移動・送迎問題」や「指導の質の担保」など、問題は山積みで、行政と地域・学校が一体となって、知恵を絞る必要がありそうです。