群馬県から秋田・藤里町へ移り住み、ヒツジの牧場を一から立ち上げた宮野洋平さん・友美さん夫妻。3人の子供とともに歩んだ5年間は、全国でも珍しいヒツジの生産に挑む日々だった。厳しい自然と向き合いながらも、地域に支えられ、ヒツジへの純粋な思いを形にしてきた。
ヒツジの声が響く山あいで
藤里町粕毛の山あいにある「宮の羊の牧場」。静かな環境に、草を食むヒツジの声が響く。
この牧場を営むのが、宮野洋平さん(44)と友美さん(40)夫妻だ。

2021年、3人の子供とともに移住し、ヒツジの飼育と生産に本格的に取り組んできた。
ヒツジの飼育数は現在220匹。放牧地の整備も進み、牧場としての形が少しずつ整ってきている。
動物が結んだ2人の出会い
2人が出会ったのは群馬県の観光牧場だった。
栃木県出身の洋平さんは、動物専門学校で学んだ後、各地の観光牧場で経験を積んできた。一方、新潟県出身の友美さんも動物専門高校を卒業し、同じ牧場で働くことになった。
当初、2人ともヒツジに特別な関心があったわけではない。しかし、牧羊犬の飼育に関心のあった洋平さんがヒツジの担当となり、世話を続けるうちに、その奥深さや家畜としての魅力に気づいていった。友美さんもまた、牧場の仕事を通じてヒツジが好きになったという。
「観光だけでなく、肉や毛を生み出す存在としてヒツジに向き合いたい」。いつしか2人の夢は、「自分たちの牧場をつくること」へと変わっていった。
藤里町との巡り合い
ヒツジの生産は全国的にも事例が少なく、牧場を始める場所探しは難航した。そんな中で知ったのが藤里町だった。町には30年以上にわたるヒツジ飼育の実績があり、地域おこし協力隊を募集していた。
洋平さんは、牧場経営に加え、農業体験の受け入れなど、観光牧場で培った経験を生かした事業を提案。町もその思いに応え、住居の修繕や畜舎建設の支援を行った。
「やりたいことを理解してもらえたのが大きかった」と友美さんは振り返る。
雪国で育てるという試練
秋田でのヒツジ飼育は容易ではない。特に冬は、畜舎周辺の除雪が欠かせず、1~3月の出産時期には昼夜を問わず目が離せない。体力的にも精神的にも負担の大きい日々が続く。
そんな中で支えとなったのが、地域の人たちだった。「知ってるよ」「頑張ってるね」と自然に声をかけてくれる。小さな町だからこそ、人のつながりの温かさがあった。
子供たちも町にすっかりなじみ、「この町が好き」と話すようになったという。
ヒツジの魅力を次のステージへ
宮野さん夫妻にとって、ヒツジは単なる家畜ではない。「財産」そのものだという。
肉や羊毛といった副産物を丁寧に商品化し、将来は自分たちで育てたヒツジの肉を使った料理を提供する機会も増やしていきたいと考えている。
全国的にはまだ珍しいヒツジ牧場だが、藤里町からその魅力を発信し続ける挑戦は、着実に前へ進んでいる。理想の牧場づくりは、いまも現在進行形だ。
(秋田テレビ)
