全国的に百貨店の閉店が相次ぐ中、関西では、売り上げなどで好調が続いている。
取材を進めると関西ならではのワケや、売り上げを支えるあるサービスの存在が見えてきた。
小売りの王様、百貨店がいま危機を迎えている。
東京では「西武渋谷店」がことし9月いっぱいで閉店することに。3年前には「東急百貨店」の本店も営業を終了するなど、ネットショッピングの影響で全国的に百貨店の苦境が続いている。
■ことし9月末で閉店 東京の「西武渋谷店」
そんな中、SNS上ではある投稿が話題に。
【Xより】
東京『デパート文化が終わろうとしている』
~そのころ大阪では~
阪急百貨店『建て替えして爆誕』
阪神百貨店『建て替えして爆誕』
大丸心斎橋『建て替えして爆誕』
近鉄百貨店『建て替えして爆誕』
この差ってなんだろう。

■関西の百貨店が好調な理由は「親しみやすさ」
阪急うめだ本店は3月、超高級ブランドを集めたフロアを新たにオープン。阪神梅田本店でも、食品フロアなどのリニューアルが続いている。
さらに売上高の伸び率では、東京や名古屋と比べても大阪が一番高くなっている。
一体なぜ、関西の百貨店は好調なのか。
まず“食の阪神”でおなじみ阪神梅田本店のデパ地下で聞いてみると…。
百貨店の客:確実に週1は来てて、週2週3来ることも。夏やったらスリッパでも来るんで。
3年前まで東京に住んでいた人:(東京より)こちらのほうが身近な感じ。お店の方と距離が近い。私はこっちが好きですね。
みなさん口をそろえるのは、「親しみやすさ」があるということ。

■「さん」付けは関西人の特徴
中には、こんな呼び方をする人も。
百貨店の客:阪急さんが多いんですけど…。
(Q.百貨店に「さん」をつけるの関西だけらしい)
百貨店の客:そうなんや!阪急は親戚みたいな、『阪急さーん』て感じ。阪急電車よく乗らしてもろてるし。阪神さんは電車あんまり乗れへんから親戚じゃないかも。
百貨店に詳しい専門家は、関西ならではの成り立ちが影響していると話す。
中部大学 末田智樹教授:昭和4年に阪急百貨店が出てきた。いわゆるターミナルデパート。“呉服系”に対して、“電鉄系”百貨店という。店員は電鉄マン、“ずぶの素人経営”と言われている。コンセプトとして『大衆本位』という言葉を掲げるんですよ。
“庶民”に愛されてきた関西の百貨店。

■百貨店の売り上げを支えるサービス「外商」
しかし取材を進めると、その裏で売り上げを支える百貨店ならではのサービスの存在が見えてきた。
こちらはあべのハルカス近鉄本店。通されたのは売り場の奥にある「専用サロン」。
近鉄百貨店外商本部 長村雄一郎さん:いい馬の絵が入りまして、馬のお仕事をしてると聞いてましたので…。中畑艸人(そうじん)さんって方なんですけど、『馬の画伯』って言われるくらい、馬の絵がうまい先生で…。
百貨店ならではのサービス、それは専属の担当者が、自宅や専用サロンで接客してくれるVIP向けの「外商サービス」だ。
外商の顧客であるこの女性は、化粧品会社を経営している。馬主でもあるということで、紹介されたのは、馬の絵だ。
外商顧客(60代):見るだけも、すごくドキドキしながらみれますし、次はどんなもの見せてくださるのか楽しみもありますし。買わなかったからといって嫌な顔されないんです。重たくても持ってこられるんですけど、気楽に見せていただいて。
担当の長村さんは入社当初から外商一筋で26年目。普段は顧客の自宅への訪問も多く、VIPを相手にする外商にも、関西ならではの「気軽さ」があると感じている。
近鉄百貨店外商本部 長村雄一郎さん:すごい親しいお客さんに関しては、インターホン押さずに入ったりして、台所あがって、ないものがあったら『今度これ持ってきましょうか』って、サザエさんの三河屋みたいな感じで自宅へ行ってますね。

■外商歴26年ベテランが語る変化 「外商顧客の若年化」
外商の売り上げは、近鉄百貨店や関西の百貨店各社でも、全体のおよそ4分の1程度を占める。
そんな中、長村さんが最近感じている“ある変化”とは。
近鉄百貨店外商本部 長村雄一郎さん:最近は30~50代ぐらいの若手経営者さんに外商に入ってもらうようにしてます。高齢化が進んでますので、若い方を取り込むことで売上も増えていくと思う。
それは「外商顧客の若年化」だ。
これまでは50代以上の顧客が多く、百貨店側からの勧誘や顧客同士の紹介がないと入会できないシステムだった。
近鉄百貨店では3年前から「オンライン入会」も導入。
目安として30歳以上で、年収1000万円以上など審査はあるが、顧客側から入会を希望できるようになり、若い層の取り込みを狙えるようになったのだ。

■「イエロー系お好きですよね」 娘の入学式にネックレス2点と指輪購入
他の百貨店も若い世代の取り込みに力を入れている。
高島屋大阪店の外商員、鍋嶋広樹さん(36)。120人近くいる外商員の中で、唯一の30代。客層の変化に合わせて6年前に抜擢された。
この日も30代の女性が来店するそうで、好みに合いそうなジュエリーをセレクト。
若い世代は仕事の合間を縫っての来店が多く、店頭で接客する機会が増えているということだ。
顧客:もうすぐ娘の入学式があるので、セレモニー用に新調したい。今週には決めたい。
(Q.お急ぎで?)
顧客:そうなんです。
高島屋大阪店外商部 鍋嶋広樹さん:春らしいこういった…。
顧客:かわいい~これ石、何ですか?
販売員:サファイアでございます。
顧客:ゴールド?
販売員:そうですね。金も今上がっていてトレンド。
高島屋大阪店外商部 鍋嶋広樹さん:イエロー系お好きですよね。
顧客:好きです。
準備の甲斐あって、この日はネックレス2点と指輪を。

■「私以上に流行を知っている」 さらに外商部に若手を配属
鍋嶋さんとは3年のお付き合いだそうだ。
顧客:(家に)来て下さることもあるけど、子供がいるので、隙間でパっと来たい。私以上に流行を知っている。(鍋嶋さんの)お子さんも年が近いので、ほしいものをちょうど紹介してくれたりします。
インターネットで簡単にモノが買える時代。
それでも人と人がつながる外商の意義を鍋嶋さんはこう話す。
高島屋大阪店外商部 鍋嶋広樹さん:(お客さまの)ライフスタイルや生活に寄り添ったご案内。お話のなかでお客さまを知って、ご提案ができる。パーソナルな部分に踏み込んだ提案が外商。
さらに高島屋大阪店はこの春、外商部に20代の社員3人を配属し、新たな客層への対応力を強めたいとしている。

■外商が鍵 生き残るため海外の富裕層を捕まえられるか
専門家は、今後もさらに外商が百貨店の売り上げの軸になっていくと分析する。
中部大学 末田智樹教授:遠隔で商売できるようになったのが、すごく大きい。日本の顧客層だけじゃない、外商が狙うのは。海外の富裕層を捕まえようという戦略に出てくる。これからの百貨店は間違いなく外商の動き方。外商が鍵を握っている。
伝統を守りながらも進化する百貨店。
生き残るための試行錯誤が続いている。
(関西テレビ「newsランナー」2026年4月23日放送)

