国内にわずか11頭。希少種のマサイキリンがいま絶滅の危機に瀕している。宮崎市フェニックス自然動物園では2025年に新たな命が誕生した。1970年から50年以上にわたり紡がれてきたマサイキリンの命のバトン。しかし、その裏側には「血統の偏り」という深刻な壁が立ちはだかっている。絶滅危惧種を守る飼育現場の最前線と、私たちが向き合うべき自然の未来を取材した。

 国内11頭の希少種マサイキリン

星が散りばめられたような独特の模様を持つ「マサイキリン」。かつては日本各地で見ることができたこの動物がいま、国内にわずか11頭という絶滅の危機に瀕している。

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 そのうち4頭を飼育し、国内におけるマサイキリン保護の最前線となっているのが、宮崎市フェニックス自然動物園だ。

 同園では、2025年10月にマサイキリンの「シュウマ」が誕生した。シュウマは現在、父親の「トウマ」、母親の「コユメ」、姉の「ヒマリ」と一緒に暮らしている。

 同園の竹田園長は「マサイキリンは国内に少ないから、元気に生まれてきてくれて非常に嬉しく思っている。以前は北海道から九州まで、いろんなところで飼われていたけど、あまり繁殖がうまくいかなかった」と話す。

50年以上続く命のバトン

同園にマサイキリンがやってきたのは1970年。

 初代園長がアフリカから8頭のマサイキリンを船で連れてきたことが始まりだ。

  竹田園長によると、初代園長がアフリカでしっかり飼育をされている健康な個体をチェックして連れてきて、そこから現在まで、ずっと血が繋がっているという。

 マサイキリンは全国で約200頭飼育されているアミメキリンとは模様が異なり、星のような模様が特徴だ。

宮崎市フェニックス自然動物園 竹田園長:
大昔はキリンは1種類で、6亜種から12亜種ぐらいに分けられていた。マサイキリンの数が少なくなっていたので、アミメキリンと混ぜることも考えた時期があったが、2025年に国際自然保護連合(IUCN)が「地球上のキリンはマサイキリンを含み4種に分けられる」と認定をしたので、その時にちゃんと分けていてよかったなと思った。

 繁殖を支える細やかな観察

種を途絶えさせないために、動物園では日々細やかな観察と情報収集が行われている。

 マサイキリン担当飼育員の山田美波さんにリポートしていただいた。

 山田さんリポート:
朝のアフリカ園はまったりしています。

 山田さんリポート:
天井の高いキリンの部屋には、夜にはコユメとシュウマ、ヒマリが入ります。

山田さんは、餌やりや掃除のほか、排泄物や行動から体調の変化がないかを確認する。

 中でも繁殖のための重要なサインが、オスがメスの後ろを追いかける「追尾行動」だ。この行動を観察することで発情のタイミングを把握し、妊娠の時期がわかるという。

 「きょうもいつもと変わらず元気な様子が見られたので安心している」と話す山田さん。

マサイキリン担当飼育員 山田美波さん:
コユメとトウマがすごく仲がいい。妊娠後に子どもがいつ出てくるのか正確にはわからないので、出産時期が近くなると、いつ産み落とされても大丈夫なように寝室にワラを多めに敷いて、床がふかふかになるようにしていた。

 血統の偏りと海外連携の必要性

国内の個体数が限られている中、徹底した血統管理が続けられているが、そこには大きな課題も残されている。

竹田園長は「日本中の個体をしっかり把握し、いつどこで誰が生まれたか、お父さんお母さんは誰だったかという戸籍管理ができているが、血が濃くなっていくと、例えば繁殖しにくかったりすることもあり得る」と話す。

 現在日本で飼育されているマサイキリンの家系図をみると、主な繁殖のペアは宮崎市フェニックス自然動物園のコユメとトウマだ。

2025年にはコユメの娘であるコナツも熊本市動植物公園でメスのココナツを出産した。

 フェニックス自然動物園 竹田園長:
最後のメスがうちのコユメさんだった。これから先、コユメの血統だけになると危惧している。将来的には海外の動物園との交換をしていくということが重要になってくるかなと思う。

私たちが守るべき自然の未来

マサイキリンの飼育開始から56年。バトンを繋ぐために私たちができることとは。

 竹田園長は「まずその動物たちを見ながら動物に興味を持ってもらって、彼らの生息地のことを考えてもらう。動物を守り、自然を守り、やがては僕たちが守られるということになるかなと思う」と話す。

私たちが資源を消費し、野生の生息地を奪い続ける限り、動物たちは追い詰められ、その影響は巡り巡って私たちの暮らしへと返ってくる。

 宮崎の温暖な気候の中で、今日もまったりと過ごすマサイキリンたち。動物や私たちの穏やかな日常を守り続けるためにいま私たちにできるのは、まず彼らの存在を知り、その背後に広がる広大な自然との繋がりを想像することから始まるのかもしれない。

(テレビ宮崎)

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