遠く離れた中東の緊張が、私たちの身近な暮らしを揺らしています。原油の供給が不安定になる中、県内ではモノの値段が上がるだけでなく、営業そのものが止まる事態も出始めました。惣菜店、製造業、そして温泉施設まで…現場で何が起きているのか取材しました。

◆涙をのんで値上がり分を負担…惣菜店

坂井市春江町に本社を置く惣菜店「はるせん」は、1972年の創業以来、半世紀以上、  地域の食卓を支えてきた人気店です。魚屋が営むこの店では、新鮮な刺身に加えて日替わり惣菜や人気のソースカツなどの揚げ物など、毎日、約100種類の商品が並んでいます。
  
買い物客は―
「(近所の人)みんな来る。値段が安いで」
「仕事場が近いのでたまに寄る。種類もたくさんあるし手作り感があって好き」
 
種類が豊富なのはもちろん、長年地域に愛される理由は家計に優しい価格帯。日替わりの手作り惣菜は1パック250円で売られていて、1日に600個ほど売れる大人気ぶりです。
 
そんな庶民の味方の店にも原油高の影響がー
 
福山千奈アナウンサー:
「コーナーにはたくさんの揚げ物が並んでいます。この容器も値上がりする予定で、 店への負担がじわじわ増えています」
 
惣菜を入れるプラスチック容器や、商品を包むラップ。これらは石油を原料とした製品の価格が今急激に上がっています。特にラップはパック詰めした惣菜を包むだけでなく、刺身やおにぎりなどにも使うため消費量が多いといいます。
  
商品に欠かせないラップは、ゴールデンウイークごろを目途に30%から50%ほど値上がりする見通しです。
 
これまで1カ月あたり1万円だった費用は、最大で5000円上がり、年間では約6万円の負担増となる見込みです。プラスチック容器やビニール袋も値上がりが予定されています。
  
それでも店は当面値上げには踏み切らない考えです。
 
「容器の値上がり分は店で負担する。値段にすぐ反映させるわけにはいかない。涙をのんで飲み込むしかない。客がいてこその商売なので値上げして客が付いて来てくれるかが…経営者からすると不安」

◆燃料費が2割増で経営を圧迫…染色加工業

こうした影響は製造の現場にも広がっています。福井市で洋服やユニフォーム生地の染色加工を行っているウエマツ。
 
原渕由布奈アナウンサー:
「こちらの工場では、生地を染めたり乾燥したりする時に大量の重油が必要となりますが、この1カ月で約2割値上がりしました。」
  
工場は24時間稼働のこの工場では、ボイラーを動かす燃料として1週間に6000リットル、1カ月に約3万リットルの重油を使用しています。その大量の燃料代が、3月は前の月から2割アップ、額にして約60万円増えました。4月は、さらに上がる見込みだといいます。
 
上松悦志社長は「本当に経営に影響してきています。燃料と、あとは染色に使う原材料ですね」と困惑の表情。
 
石油が由来の染色加工用の薬剤は、値上がりに加え入荷が困難になり始めています。
 
「4月に入り3割値上がりした。これまでは2社から入荷があったが、今は1社だけ」(上松社長)
 
値上げだけでなく、手に入りにくい状況になっているのです。また、梱包するためのビニール袋など資材も高騰していて、これまでより5割アップした上、納期が長くなりました。
   
この会社では、物価の上昇や人手確保のため去年11月に賃上げに踏み切っていて、想定していなかった今回のコストアップは経営をさらに圧迫しています。
  
「今のところまだ進んでないんですが、今後、状況によっては価格転嫁せざるを得ない状況になってくると思います。率直に言って、早く終息してほしいというのが一番」(上松社長)

◆インフラ工事が止まる恐れも…塩化ビニールパイプの資材が不足

また、私たちの生活を支えるインフラ工事が止まる恐れも出てきています。
  
「このまま材料が入ってこなかったら大変なことになる。受注しても仕事ができないのでは…」
  
こう話すのは、坂井市で給水や空調の設計などを手がける北山設備の北山耕三社長です。水や空気を送るのに欠かせない塩化ビニールパイプが市場に並ばない状況だといいます。
  
原油を原材料とする塩化ビニールパイプ。不測の事態に備えてメーカーが在庫を抱え込んでると指摘します。
 
「5月からの分に関しては、塩ビなんていつでもあると思っていたので、まだ発注していなかったが、いまだに回答がもらえていない。これから先は入荷しない可能性もある」(北山社長)
  
また、5月には塩化ビニールパイプなど資材価格の上昇が見込まれており、工事の施工は物理的な資材不足に加え、経営的にもますます難しい状況となりそうです。
  
「(値上がりを)吸収できる範囲はいいが、できない分は元受けに正直に話してその分を値上げするか、それが無理なら僕らも仕事止まっちゃいますね」(北山社長)

◆温泉は臨時休業、再開の見通し立たず

そして、地域の施設にも影響が―
  
田島嘉晃アナウンサー:
「越前町の温泉施設です。ボイラー用の重油の調達が難しくなり、臨時休館に追い込まれました」 
  
県の内外から年間2万人が訪れる越前町営の温泉施設「若竹荘」。慢性皮膚炎や神経痛などに効くと人気の湯ですが、浴槽は空です。
 
ボイラー用の燃料となる重油の調達が難しくなり、3月31日から約2週間にわたり臨時休館に。再開の見通しは立っていません。
 
重油問題による休館は、1992年に温泉施設として運用されてから初めてです。
  
内湯からサクラを楽しめるこの時期は本来ならば書き入れ時。いまは葉桜となり、その機会は失われました。
  
地元の人は「湯がぬるっとしていて気持ちいい。客が温泉に行けないからみんな寂しがっている」と話します。
  
遠く離れた中東の緊張が温泉の湯を止める。
  
その影響は食卓から産業、そして地域のにぎわいまで、私たちに押し寄せています。    

福井テレビ
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