震度7の地震を2回観測した熊本地震から10年。甚大な被害が出た住宅の多くは、『大地震を想定していない』旧耐震基準の建物だったことが分かっている。国が地震発生の危険度が高いと分類している『警固断層』が市の中心部を走る福岡。耐震化は進んでいるのか、取材した。
震度7の地震2回観測は異例
2016年4月14日夜、九州で初めてとなる最大震度7の地震、熊本地震(前震)が発生した。その後、16日未明にも最大震度7の更に規模が大きい地震(本震)が発生し、住宅の倒壊など被害を拡大させた。熊本地震は、震度7の大地震が28時間で連続するという国内では初めての異例な地震だった。
地震による死者は、災害関連死を含めて278人。

建物の全半壊は4万3000棟以上にのぼった。

当時、現地を調査した福岡大学工学部の高山峯夫教授は、「旧耐震、古い住宅の被害がとても大きくて、完全に倒壊するとか住み続けることができない状態になっていた」と被害の特徴について振り返る。

地震に対する最低限の強度を定めた耐震基準は、3段階に分かれている。1981年5月までは、旧耐震基準で、震度5強程度しか想定されておらず、大地震(震度6程度)の場合、倒壊する危険性が高いとされている。

その後、2000年5月までが『新耐震基準』。震度6強以上の地震でも倒壊・崩壊の恐れがないが、現行の『2000年基準』(2000年6月~)は、満たしていない可能性がある。現行のものでは、建物の構造種別や規模別に3つのルートに分けて構造計算するといった詳細な検討が求められている。
調査によると、熊本地震で被害が集中した益城町では、倒壊した木造の住宅のうち、70%以上が『旧耐震基準』によるものだった。一方、『新耐震基準』でも約25%が倒壊していた。

「耐震基準が新しくなって、被害を減らしていくことに繋がったが、全く被害がないという状況には、今、至っていない。まずは、自宅がいつ建設されて、どんな耐震性を持つかを把握することが必要」と福岡大学工学部の高山教授は語る。

熊本地震のような大地震に見舞われる恐れは、九州一の人口を誇る福岡にもある。福岡市中心部を走る『警固断層』だ。

警固断層地震は、国が示す分類で、最も危険度が高い『Sランク』。最大震度7の揺れが予想され、今後30年以内の発生確率は0.3%から6%と予測されている。

県の調査による被害想定は、死者数が1800人で、建物の全半壊は12万棟以上と見込まれている。「熊本地震は、『ほぼ0%』という確率で起きた。

それに比べると警固断層の発生確率は高い」と高山教授は警鐘を鳴らす。
耐震強度補うリフォーム検討も
いつ起きてもおかしくない地震に備えて、耐震リフォーム工事を決めた人もいる。1988年に建てられた『新耐震基準』の住宅。

住人の女性は、中古で住宅を購入するタイミングで耐震診断を受けることに決めた。「以前、地震で夜半に凄い揺れで飛び起きて…あの時の不安は強く記憶に残っている。できるだけ災害に強い住宅の方が、日頃安心して住めると思って」と話す。

診断にあたったのは、耐震の専門家で、『福岡市耐震推進協議会』会長を務める前田修さん。

壁の強さや建物の劣化度などについて検査したところ、「1階は今の耐震基準を下回っていて、(大きな地震の際は)倒壊する可能性が高い」という結果が出た。この結果を受けて天井も床も壊さない手法で、壁の補強などの工事を行うことになった。

前田さんは、「金具の補強や軸を組んで、その上に耐震ボードを貼る」ことで、壁の強度を今の3.5倍に上げ、現行の耐震基準まで高めると話す。

補助の対象は『旧耐震』のみ
一方で、課題も明らかになった。福岡県の補助制度では、1981年5月より前の『旧耐震基準』のみが対象で、『新耐震基準』の住宅の工事費用は、全額自己負担となるのだ。

「『新耐震基準』でも、どんどん古くなって劣化している。『新耐震基準』の住宅にも行政として、補助金を考えて頂きたい」と前田さんは強調する。

熊本地震から10年。国は南海トラフ地震など、大規模地震の発生が想定されていることから、『2035年までに耐震性が不十分な住宅を概ね解消する』との目標を掲げている。

そのためには、個人の備えはもちろん、誰もが対策に踏み出せるような『補助制度のアップデート』も急ぎ検討が必要だ。
(テレビ西日本)
