この入学シーズン、ある夫妻にとっては、小学校入学がかなわなかった、亡き娘の誕生日を祝う季節でもあります。宮城県石巻市の家族の特別な一日を取材しました。

「はい!せーの」
「ハッピーバースーデーディアはるちゃん」

石巻市の西城さん一家です。

4月8日、次女・春音さん(当時6歳)の誕生日を祝いました。

東日本大震災発生当時、幼稚園の年長だった春音さん。

あの日、幼稚園バスは高台から海側へと走り、津波と火災に巻き込まれて、ほかの園児4人とともに命を落としました。

母・江津子さん
「(春音さんが)発見された時の姿がもうひどかったので、なんでこんなことになったのかと。あの姿は一生目に焼きついたまま、ずっと頭から離れない」

自分で選んだランドセルを背負って、小学校に通うことは叶いませんでした。

震災前の家族写真。春音さんには2歳上の姉の楓音さんがいて、弟の靖汰さんが生まれ、お姉ちゃんに。

「はるちゃん」と呼ばれ、ムードメーカーだったといいます。

父・靖之さん
「幼稚園であったことを家に帰ってくると楽しそうに、本当に1から10まで全部話す感じの子供でした」

父の靖之さんは我が子の成長をカメラに収めてきました。

西城春音ちゃん(動画)
「好きな食べ物は?さくらんぼ、いちご〜!好きな遊びは?ブランコ!」

8日の春音さんの誕生日。毎年、春音さんが好きな、イチゴのタルトを買いに行きます。

母・江津子さん
「震災の前から1度食べたら気に入って、次の年からずっと、これにしていましたので」

悲しみのなか、震災発生翌月の4月8日も、春音さんの誕生日を祝いました。

母・江津子さん
「祝ってあげたい気持ちと、春音がいなくなってしまった気持ちと、すごく複雑だったかもしれない、その年の誕生日は」

次の年も、その次の年も…毎年、欠かさずお祝いしてきました。

母・江津子さん
「春音だけ成長しないのは嫌だから、私のなかではね。年を数えていたいんだよね。年を数えて、毎年成長したい、成長させてあげたいというか」

8日の22歳の誕生日。食卓にはもう1つ、ケーキが並びました。

この春、高校3年生になった長男・靖汰さんの進級祝いと、4兄弟の末っ子・春汰さんの中学入学祝いです。

春音さんを亡くした悲しみのなか、震災発生の2年後に生まれたのが、春汰さんです。

「春音」さんから「春」の一文字を受け継ぎました。

母・江津子さん
「本当に大きくなったなと、この間まで本当に小さかったのに、中学生になって制服を着ると、ちょっと大人になったなと感じましたね」

父・靖之さん
「前に進まなければと、前に進むというか、春汰を育てていかなければと思って、8日を迎えられてうれしく思います。春音を亡くしてというのもあって、いつまでも、そこに立ち止まってはいられないなと思うなかで…」

生きて会うことはかないませんでしたが、春汰さんは家族から、春音さんの話を聞いて育ちました。

次男・春汰さん
「すごいおもしろい子だったんだよみたいな、こんなことしたんだよみたいな」
Q.春音さんはどんな存在
「普通にお姉ちゃん」

春音さんは、いつも家族のそばに…。

今年の誕生日は春汰さんの中学入学式が重なり、例年以上に特別な1日でした。

次男・春汰さん
「春ちゃんと一緒に祝ってもらえて、ケーキ食べられてうれしい」

父・靖之さん
「春音がいなくなって16回目の誕生日と、あんなに小さかった春汰がやっと中学生になったその喜びを、8日は両方味わえたというか、良い一日でした」

4月11日で、東日本大震災の発生から15年と1カ月。西城さん一家はこれからも家族6人で、春を重ねていきます。

仙台放送
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