秋田・大潟村出身のバスケットボールコーチ・宮川紀元さんが、3月28日から2日間、強い思いを込めた大会を開いた。秋田県内外の小中学生チームが参加したバスケットボール大会の会場となったのは「大潟村村民体育館」。4月から約1年間の改修工事に入るこの体育館は、宮川さんにとってバスケットボール人生の原点とも言える場所だ。「改修前の記念になれば」。その言葉には、思い出の場所への感謝と、次の世代への願いが込められていた。
バスケと出合った体育館
宮川さんが生まれ育ったのは、広大な水田に囲まれた大潟村。
村にある唯一の体育館「大潟村村民体育館」で、宮川さんは小学5年生の時にバスケットボールと出合った。ボールを追い、仲間と声を掛け合った日々は、今も鮮明に記憶に残っているという。
その体育館は2026年で築46年。長年地域のスポーツ活動を支えてきたが、老朽化に伴い、この春から大規模な改修工事に入ることが決まった。
「新しくなるのは楽しみ。でも、ずっと変わらなかった昔からの風景がなくなってしまうのは、正直、少し寂しい」と、宮川さんは原点の場所が変わっていくことへの複雑な心境を語る。
「居場所をつくりたい」とチーム立ち上げ
現在、宮川さんは秋田市で小学生バスケットボールチーム「Streak(ストリーク)」のコーチを務めている。
チームを立ち上げたのは2021年。「バスケットボールをしたいけれど、小学校や地域にチームがない」。そんな子どもたちの声を耳にし、自分にできることはないかと考えた末の決断だった。
Streakには現在、小学1年生から5年生まで16人が所属している。
宮川さんは会社勤めの傍ら、仕事の前後の時間を使って指導にあたる。決して楽な生活ではないが、「子どもたちが輝ける場所をつくりたい」という思いが、日々コートに立つ原動力になっている。
思い出の地で開いた特別な大会
宮川さんが企画した今回の大会には、秋田県内だけでなく、青森・岩手・宮城・新潟からも小中学生チームが参加した。
「せっかくの春休みなので、普段はできないような貴重な経験を子どもたちにさせてあげたかった」
そうした思いから、あえて遠方のチームにも声をかけた。
会場に大潟村村民体育館を選んだ理由には、もう一つの願いがある。
「大潟村は自分が生まれ育った場所。普段あまり来ることのない県外の人にも来てもらって、秋田を楽しんでもらえたら」と話す宮川さん。
大会は、競技の場であると同時に、故郷を紹介する機会でもあった。
「いい選手じゃなかった」 だからこそ伝えたいこと
宮川さんは自身の競技歴について「全然いい選手ではなかった」という。
それでも、バスケットボールが好きで続けてきた。その積み重ねが今、指導者として子どもたちと向き合う日々につながっている。
「クラブを持つことができて、子どもたちと一緒に、同じ場所でバスケットをできることがうれしい。ここで良い思い出をつくれたらと思った」と語る宮川さん。
かつて憧れを抱いたコートに、今は“支える側”として立つ。そこには、時間を重ねた人だけが持つ実感がある。
恩返しは次の世代へ
半世紀近くバスケットボールをはじめ、地域のスポーツ活動を見守ってきた体育館で開かれた2日間の大会。
体育館への恩返し、そして生まれ育った大潟村を少しでも盛り上げたい――。その気持ちは、試合を終えた子どもたちの胸にも、確かに届いているだろう。
宮川さんの原点から生まれた大会の記憶は、次の世代のプレーヤーへと受け継がれていく。
(秋田テレビ)
