アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃開始から約1ヵ月。中東情勢の緊張が続くなか、石油供給への不安が、世界中に広がっている。

ガソリンスタンドでは 或る“異変”が

福岡・北九州市でガソリンスタンドを運営する九販石油では、市内7店舗のうち3店舗を3月中旬過ぎから臨時休業している。

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九販石油の松田耕平・常務取締役は「今回の中東の戦争によってガソリンの供給が不安定になり、休業することに…」と苦渋の選択を口にする。中東情勢の緊迫化で仕入れ価格が上昇し、安定的に確保できない店舗を一時的に休業したというのだ。

休業を知らずに訪れた客は「全然、知らなかった。困りますよね。仕事で車を使ったりもしますし…」と困惑の表情を浮かべていた。

政府は全国11の基地で石油の国家備蓄の放出を順次始めることを決定。このうち北九州市若松区沖にある白島国家石油備蓄基地でも3月27日午後3時半過ぎからタンカーへの放出が始まった。

白島基地では今後、約1カ月間、放出作業が行われ、180万キロリットルの石油が輸送されることになっているが、中東情勢が沈静化しない限り、エネルギー不足の問題は解消されない。

石油供給体制は、不安定な状態が続く。

石油不足の影響は“命の現場”にも

医療の現場が受ける影響も深刻だ。石油を由来とする医療用品の一部で、仕入れ価格の値上げを通知されていて今後、病院経営を圧迫しかねない状況となっている。

福岡市西区にある『やまもとホームクリニック』。定期的な訪問診療を行うなど地域の医療を支えている。平日の診療時間のうち訪問による診療が半分を占めていて、医師と看護師の2人体制で高齢者施設などを回っている。

クリニックでは、燃費の良さなどを考慮して、訪問診療の移動手段となる車を軽自動車にしているが、山本希治院長が気にしているのが、中東情勢の緊迫化を背景としたガソリン価格の高騰だ。補助金効果で価格が一時的に押し下げられたとはいえ、今後の値動きは不透明な状態となっている。

「きょうは1日中、訪問診療している。約20件。週に1回ぐらいガソリンを入れなければならない。価格がどんどん上がっていくのは、経営的に切実です」とやりきれない表情で山本院長は車窓を眺めた。

訪問診療にかかる交通費は、患者や施設から受け取っておらず、全てクリニック側の負担。ガソリン価格の上昇が、地域の医療体制を崩壊させかねない深刻な問題となりつつある。

山本院長は「先週も自分でガソリン入れにいったが、189円だったので、とても高いなと思った。少し下がってきているが、1リットルで30円、40円、価格が違うと結構大きい」と溜息を吐く。

“命”に直結 深刻な医療器具不足

石油の供給不足の懸念による医療現場への影響。石油を由来とする医療用品の一部が値上げとなる動きがある。ワクチン接種などで使う医療用品の注射器などの値段も基本的には上がる。予防接種などで使用される使い捨ての注射器は、1箱2030円(税抜き)だが、4月以降は2320円と約15%アップする見通しだ。

消耗品となる医療用品は原則、クリニックで費用を負担し、揃えなければならず、いまのガソリン価格の上昇に加え、ダブルパンチで経営を直撃している。

山本院長は「懸念は、今後の供給不足。必要なものが手に入らない。それが患者側にとって一番の不利益を生じさせてしまうと危惧している」と表情を曇らせた。

21世紀に巻き起こる“令和の石油危機”の波紋。残りの備蓄で何カ月持つのか?中東以外の輸入先はどう確保しているのか?供給体制だけでなく需要のあり方にもついても先手先手の対応策が求められている。

(テレビ西日本)

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