アメリカ・ルイジアナ州のバークスデール空軍基地上空に、正体不明のドローン編隊が出現した。しかも一回ではない。12~15機の編隊が「波状的」に侵入し、飛行ラインを含む機密区域上空を数時間にわたり飛び回った。

この基地は単なる航空基地ではない。空軍グローバル・ストライク・コマンドの本拠であり、B-52戦略爆撃機が配備され、核抑止の中枢機能を担う場所である。核戦力の運用・指揮・通信の要衝――いわば「米国の核の心臓部」とも言える拠点だ。

その空域に、正体不明のドローンが侵入した。

“「高度な信号運用知識を持つ主体」が関与”

最初の目撃は3月9日。基地は即座にシェルター・イン・プレイス(屋内退避命令)を発令したが、その後もドローンの飛行は約1週間にわたり続いた。内部文書によれば、これらの機体は編隊を組み、侵入と離脱を繰り返しながら、基地内の複数の重要地点へ分散していった。

注目すべきは、その性能である。

これらのドローンは、「非商用の信号特性」「長距離制御リンク」「ジャミング耐性」を備えていた。

バークスデール空軍基地(アメリカ・ルイジアナ州)
バークスデール空軍基地(アメリカ・ルイジアナ州)
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通常、米軍基地は電子戦によってドローンの通信やGPSを妨害し、無力化する。しかし今回はそれが効かなかった。さらに、飛行経路を変えながら侵入し、操縦者の位置特定を避けるような動きを見せていた。

つまり「ただのドローン」ではない。

元国防当局者は「趣味のドローン操縦者とは明らかに異なる」と断じ、内部評価でも「カスタム製で高度な信号運用知識を持つ主体」が関与した可能性が指摘されている。

しかもこのドローン編隊は、単に飛んでいただけではない。飛行ライン上空に滞空し、基地の運用を一時停止に追い込んだ。実際、B-52の離着陸に支障が出たとの報告もある。(HotAir)

“謎のドローン”3つの可能性

では、誰がやったのか。

現時点で犯行主体は特定されていない。しかし、いくつかの可能性は浮かび上がる。

アメリカ上空を中国の偵察気球が飛行(2023年2月)
アメリカ上空を中国の偵察気球が飛行(2023年2月)

第一に、中国。
長距離飛行能力、ジャミング耐性、分散行動――これらの特徴は、中国が近年開発を進める高度無人機と一致するとの指摘がある。     

2023年の偵察気球事件に続く「偵察手段」と見る向きもある。

飛行中のウクライナ軍のドローンを攻撃するロシアのドローン(ロシア国防省)
飛行中のウクライナ軍のドローンを攻撃するロシアのドローン(ロシア国防省)

第二に、ロシア。
ウクライナ戦争でドローン戦術を急速に進化させたロシアは、電子戦環境下での運用能力を高めている。ただし、今回のような長時間滞空・高度な制御能力については、中国の方が優位との見方もある。

イランのドローン攻撃を受けたUAEの港(2026年3月14日)
イランのドローン攻撃を受けたUAEの港(2026年3月14日)

第三に、イラン。
今回の一連の動きが、米国の対イラン作戦と同時期に発生している点は無視できない。イランはすでに中東でドローン戦を展開しており、米本土に「示威行動」を行った可能性も指摘される。

ただし、いずれも決定的な証拠はない。むしろ重要なのは、この事実が、戦争の形がすでに変わっていることを示しているのだ。

かつて防空とは、戦闘機とミサイルの領域だった。しかし今は、レーダーや既存防空の隙を突く形で忍び込んでくる「忍者」のようなドローンへの対応が急がれている。

米北方軍のフライアウェイ・キット
米北方軍のフライアウェイ・キット

米北方軍は、対ドローン装備「フライアウェイ・キット」を導入し、24時間以内に基地へ展開できる体制を整えつつある。しかし現状では、探知したドローンのうち撃退できるのは約4分の1にとどまるという。(AIR & SPACE FORCES MAGAZINE)

言い換えれば、4機中3機は逃している。
米国の空は、もはや完全には守られていないないのかもしれない。
(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。