福岡県議会が実施してきた海外視察をめぐり、旅行会社への委託費が契約後に大幅に増額されるケースが相次いでいます。
不可解ともいえるこの現象、なぜそういったことが起きているのか取材しました。
これはTNCが入手した福岡県議会の海外視察に関する内部資料です。
現地での通訳や添乗員、移動用の車両などの手配を旅行会社に委託する契約が記されていますが、注目すべきはその金額です。
2024年1月のハワイ視察では当初の契約が99万円。
しかし、最終的には769万円に変更されています。
同じ年の4月に実施した南アフリカへの視察では95万円から916万円に…。
去年のハワイ視察でも97万円から651万円に跳ね上がっています。
2024年1月から去年11月までに県議会が実施した海外視察は16件。
その全てで当初の契約金額から増額されていて、最大で10.3倍となったケースもありました。
そして当初の契約金額にはある共通点が…。
◆記者リポート
「地方議会の契約は地方自治法で原則、競争入札と規定されていますが、福岡県議会の当初の契約額は個別に契約する『随意契約』が認められる上限にすべて収まっていました」
そもそも地方議会の契約は、地方自治法により不特定多数の事業者による一般競争入札が原則となっています。
ただし一定の金額までは、任意で選んだ会社と個別に契約する「随意契約」が認められています。
その上で福岡県議会の契約を見てみると、16件全てが随意契約で、しかも2025年3月まではそのほとんどが上限の100万円に近い金額でした。
その後、上限が200万円に変更されましたが、2件ともその範囲内に収まっています。
契約先は県内に事務所がある旅行会社4社に限られ、うち最大手の1社は16件のうち9件、合わせて約5000万円分を受託していました。
この契約内容に福岡の人たちは…。
◆主婦(70年代)
「(当初)99万円で(最終)769万円とか…なんでこんなに高くなったんですか」
◆会社員(60年代)
「うちの会社じゃ怒られると思います」
◆会社員(20代)
「不正…」
Q.不正?疑ってしまう?
「はい」
大幅な増額の理由について契約書では、参加する議員の増員に伴う添乗員や現地ガイドの増員、車両の追加などとされています。
専門家は「違法性はない」としつつも「ある種の脱法行為」と指摘しました。
◆九州大学 法学研究院 出水薫 教授
「市場競争原理がきちんと働くために入札制度が利用されるという話であって、随意契約になると価格競争が生じない恐れがある。契約を結んだ後、あれやこれやの理由で必ず上がっていくようではある種の脱法行為」
取材班は東京や大阪など12の都道府県議会が、2024年以降に実施した海外視察の契約を調査しました。
埼玉や神奈川では一般競争入札が行われていた一方、その他の自治体では随意契約を結んだケースが多くありました。
しかし、当初の契約から増額していたのは38件中4件で、その金額も2万円から17万円ほどでした。
福岡県議会で繰り返されていた異様とも言える契約後の増額については、服部知事にも質問が飛びました。
◆記者
「このような不適切な事務について、知事は認知していたのか」
◆服部知事
「どういう理由で変更が必要であったのか私も逐一、承知しておりませんので」
◆記者
「談合とかの疑いはないと言い切れる?」
◆服部知事
「具体的な契約変更の必要性・内容等についても、我々承知しておりませんので」
契約後の大幅な増額について、契約を管轄する議会事務局に問い合わせたところ、26日に回答が届きました。
Q.随意契約が認められる金額で契約し、その後増額となっていた背景は?
◆議会事務局の回答
「委託業者を選定するための基本契約の趣旨で、必要最小限の要素によって当初契約を締結し直ちに手配業務に着手してもらい、委託業務の全体が確定した時点で契約を変更する方式で締結してきた」
Q.福岡県議会が旅行会社に対し随意契約を選択している理由は?
◆議会事務局の回答
「入札によって、いわゆる“安かろう、悪かろう”の業者が受託した場合、海外活動の目的が十分に達成できなかったり、事故につながる恐れすらある」
また、福岡県議会では他の地方議会とは異なり、議会側が主導してその国の訪問先や行程を決めているため、旅行会社の介入する余地が少なく「随意契約が適している」といいます。
その上で、旅行会社が現地の業者選定などを早めに行えるよう“最低金額での早期契約”を優先していたと回答しました。
Q.議会側と特定の旅行会社との癒着を疑う声があがっていることについては?
◆議会事務局の回答
「癒着といったことはないと断言」
今回明るみに出た海外視察の契約実態について県議会の蔵内議長は…。
◆福岡県議会 蔵内勇夫 議長
「議長になって、そういう契約の方法だったということを初めて聞いた。私たちもよく考えて、少し改善すべきではないかと。でも大事な調査はお金をかけてでもやらなきゃいけない」
県議会は今回の問題を受け、新年度から改善策を導入する方針を示しました。
改善策は「予算の上限を設定した上で当初から実態に見合う金額で契約する」「見積もりを依頼する業者を2社から4社程度に増やす」「県職員を加えた選定委員会で業者を決めて公平性と透明性を高める」となっています。