徳之島で歌い継がれる子守歌を盛り込み顧問の先生が作った曲で全国大会金賞受賞! 鹿児島・徳之島の亀津中学校吹奏楽部の3人が、全日本アンサンブルコンテストで快挙を達成した。「先生に頭を下げてお願いした」という曲への思い、朝から夕方まで続く猛練習、そして島の岬で見た夕日——全国の舞台で響かせた音色の裏側に迫る。
亀津中としては28年ぶりの全国大会、切符をつかんだのは「3人の直訴」から
亀津中学校吹奏楽部は2024年、東京で開催された日本管楽合奏コンテスト全国大会で最優秀賞を受賞。毎年夏に開かれる鹿児島県吹奏楽コンクールでも3年連続で金賞を獲得するなど、めざましい実績をあげている。
全日本アンサンブルコンテストは3人~8人の少人数による合奏の技術や音楽性を競う。亀津中から出場したのは、いずれも2年生のフルートの嶺井結愛さん、クラリネットの寺村香花さん、マリンバの井凛音さんの3人だ。2025年12月の県大会を突破し、2月の九州大会では上位2校に入り九州代表として全国大会出場を決めた。亀津中学校にとっては28年ぶりの快挙だ。
アンサンブルには、様々な楽器編成があるが、フルート、クラリネット、マリンバの三重奏曲となると簡単には見つからない。それでも小学校時代から一緒に演奏してきたという仲良し3人組は大会に出たいという熱い思いを顧問の宇都遼介教諭にぶつけた。マリンバの井さんによると、なんと「3人で頭を下げに行って、『どうにかお願いします』ということで、先生に作曲をお願いしました!」というのだ。

顧問が約1カ月で書き上げた「島の曲」
3人の熱意に動かされた宇都先生は打楽器奏者でもある。亀津中学校に赴任して丸2年、約1カ月で教え子のためにオリジナル曲「結の祈り」を書き上げた。
曲に織り込まれたのが徳之島の民謡であり子守歌でもある「ねんねがせ」だ。
「ある本番で『みんなで歌いましょう』という時、部員が全員歌えて、私だけ歌えなくて。『みんな知っているんだな』というのが、この曲との出会いだった」と語る宇都先生。

取材班が島の人々に聞いても「ゆうなのき~のし~た~で~」「ゆ~れ~るふうりん、りんりらりん」と多くの人が歌えるほど親しまれてきた「ねんねがせ」はコンテスト用に書かれた「結の祈り」の曲後半に引用された。一方、前半は不安や恐怖感を表現した速いテンポで進む構成だ。
さらにラストには、島への思いを音で表現したこだわりが込められている。波の音とか風で揺れる風鈴をどうしても入れたいとの思いから、最後は効果音で終わるようにしたという。

朝から夕方まで、1パートを2時間
全国大会を前にした練習は日曜日も返上で、朝から夕方まで続いた。全国大会ともなると少しのミスも減点の対象となるので、極限まで完成度を上げなければならない。
「アンサンブルコンテストは指揮者がいない。演奏しながら息を合わせる必要がある。その細かいところを事前に詰められるだけ合わせることが、良い演奏につながる」と宇都先生は言う。

各自が自分の楽器と向き合う姿勢も真剣だ。フルートの嶺井さんは「メロディーに合った音色をしっかりできるような演奏をしたい」と語り、寺村さんは「クラリネットは温かい音が出る。そういうところが魅力」と話す。マリンバの井さんは「マレット(ばち)一つ一つの重さ、柄の部分で音が変わる。より良い音色を届けるために変えるようにしている」と繊細な気遣いを見せる。
岬で見た夕日と、島への思い
「課外学習に行きます!」練習の合間、宇都先生が3人を連れ出した。向かったのは島の南西部にある犬田布岬。鈴と波の研究に行くのだという。曲のラストに込めた情景を肌で感じさせようという先生の狙いだ。
ところがこの日は予想外の強風!曲の情景とはかけ離れていた。それでも井さんは「少なからず得るものは得られたので、それを生かせたらと思う」と前向きに受け止め、嶺井さんは「でも夕日見られたから」と笑顔を見せた。

小学校から一緒に演奏してきた仲良し3人組。宇都先生への思いを問われると、「怖いんですけど、リスペクトしてる先生です」と井さんは笑いながら答えた。
大島紬の衣装で全国の舞台へ、審査員も絶賛
3月21日、広島で行われた第49回全日本アンサンブルコンテスト。中学生の部には全国から22団体が出場した。亀津中学校の3人は大島紬の衣装で大会に臨み、「結の祈り」を演奏した。

結果は金賞。審査員からは3人の技術力や豊かな表現力に加え、「まるで物語を聞いているようだ」という高い評価が寄せられた。
「自分たちが今までやってきたことを信じて、自分たちらしい演奏ができたので良かったです」(井さん)、「支えてくださった皆様に良い結果を報告できて本当にうれしいです」(寺村さん)。

宇都先生も「いつも以上に落ち着いて演奏ができていたので、見守りながら『これは大丈夫だろう』と聴いていました」と目を細めた。
島の子守歌に乗せた3人の祈りは、全国の舞台でしっかりと届いた。
(動画で見る▶徳之島・亀津中の3人組が全日本アンサンブルで金賞「大島紬で奏でた故郷の歌」)
