全国的に教師を目指す人が減っている中、2025年度に行われた高知県の小学校教師の試験で合格者の約6割が辞退しています。なぜ半数以上の受験者が辞退しているのか。教育長の受け止めや全国の教員採用試験で起きている現状などを取材しました。
高知県の小学校教師の採用試験で過去5年間の合格者と辞退した人の数です。(※1回目の採用試験。2回目・現職・元職特別選考は含まない)合格者の約5割から、多い時で7割が辞退しています。
今城純子県教育長に現状の辞退率について受け止めを聞くと―
今城純子 県教育長:
「せっかく高知県で教員になろうという人たちが来てくださっているのに、結果としてそういう辞退が6割・7割になることについては本当に残念なことだなということは思っています」
小学校教師の採用現場でいったい何が起きているのでしょうか。
フリージャーナリスト・前屋毅さん:
「(教員)志望者はどんどん減る傾向にある中ででも、学校はその教員を確保しなきゃいけない。少ない人数をみんなで取り合っている状況が今起きてる」
教育問題を中心に取材活動を行うフリージャーナリストの前屋毅さんです。合格しても辞退してしまう傾向は高知県だけの話ではありません。全国的な傾向でその要因の一つに「併願」があります。
前屋毅さん:
「複数受験したら自分の志望のところに行くわけですから、他のところに受かっててもそれは辞退する。もしくは民間企業も一緒に受けてる人がいたら民間企業を選ぶ人も出てくる。そのために教員は辞退することになりますよね」
他の自治体との競争が激しくなる中、高知は全国に先駆けて試験の前倒しを実施してきました。
今城純子 県教育長:
「なぜ早期にやるのかっていうことはそれは多くの方に高知県で教員になろうというふうに思っていただく。そして受審していただくためにやってきたっていうことが一番ですね」
前倒しに加え、2016年からは大阪にも会場を設けて積極的に採用に取り組んできた高知県。しかし、前屋さんは関西にある大学の教育学部の教授への取材でこんな話を聞いたといいます。
前屋毅さん:
「関西でも試験があるのでわざわざ高知に行かなくても試験を受けられるし、しかも他よりも早いんだからまずその度胸試しと滑り止めで受けた方がいいんじゃないのっていう学生にアドバイスもしたし、そういう認識は学生の中にも広がってたっていう話は聞きます」
前倒しと関西会場を設置したことで高知の採用試験が「模擬試験化」しているというのです。この指摘に教育長はー
今城純子 県教育長:
「それはつらいですね、そういうふうに思われるのはつらいですけどね。複数の県を受けてみてどこか受かれば教員をやろうという思いがあるというふうにも捉えられるのかなと思いますね。模擬試験的な要素もあるかもしれませんけれども、選択肢の一つになっているというふうに私は捉えてはいます」
ただ、県教委としては試験を前倒ししないと教師を確保すらできないと考えています。辞退者が出るのを想定した上でより多くの受験者に高知の試験を受けてもらい、それをきっかけに高知に興味を持ってほしいという戦略でもあるのです。
小学校教師の採用者のうち県外出身者の割合をまとめたグラフでは、直近5年間の合計を見ると採用者の半数近くが県外の出身者で占められています。高知市にある江陽小学校では、教師33人のうち7人が県外出身です。
高知市立江陽小学校・山本幹丈 校長:
「毎年、県外出身で採用された先生がいらっしゃるんですけども、もう彼ら・彼女らの力を借りないとこの学校現場は成り立っていかないです。産休、育休、病休の先生たちの代替がなかなか見つからないことがありますので、もう県外出身の方の力はそれは必須だと思います」
山本校長は試験の前倒しにより県外出身の教師の確保に一定効果があるとした上でー
山本幹丈 校長:
「ご縁があった方には高知県、いいところなので働いて高知県が気に入っていただいたらそのままずっと長く続けてもらえたらうれしいなと思います」
志望者そのものが減っている学校の現場。増やすためにも魅力ある職場づくりが急務です。学校の現場で増え続ける仕事に対し、教育問題を中心に取材する前屋さんは教師がやるべき仕事の整理が必要だと指摘します。
前屋毅さん:
「例えば今、1人1台端末になっていますけれど、1人1台端末のメンテナンスまで担任の教員がやらなきゃいけないとかね。それって教員の仕事なのって思いますよね。学校現場で教員の声を聞きながらやる仕事とやらない仕事をきちっと、やっぱり学校の現場ごとに分けるべきだと思いますけどね」
試験の合格者に高知県を選んでもらえるよう、県も取り組みを進めています。
今城純子 県教育長:
「教員に対しての安心感の創出ということ。それから魅力の発信っていう、この2つを大きな柱として取り組んでいます」
教育実習を終えた学生を対象に、ベテラン教師との座談会を開催し不安感を取り除く取り組みやYouTubeチャンネルでの魅力の発信。
さらに2026年度からは複数の教師で子どもたちの担任をする「チーム担任制」を新しく導入します。
今城純子 県教育長:
「高知県で教員になりたい、やってみようっていう意識を持っていただく。こちらにやっぱり注力していく、今はそんな状況です」
高知の学校で『働きたい』と思える魅力ある職場に変えられるか。待ったなしの改革が求められています。