2020年7月豪雨で浸水被害を受けた球磨川のほとりの水天宮。この春、新築された祠(ほこら)が地域住民の前でお披露目されました。

製作を手掛けたのは宮大工を目指す球磨工業高校伝統建築専攻科の学生たち。豪雨災害からの復興に伝統建築の技術で挑んだ若者たちの思いを取材しました。

【球磨工業高校伝統建築専攻科 米村 和真 さん】
「施主さんと(綿密な)絡みもありますし、建物なので普通の工業高校じゃ経験できないことができてるので、(球磨工業に)来てよかったなと思います」

あたたかな日差しのもとこの日、球磨川のほとりで神事が執り行われました。

2020年7月豪雨の被害を受けた水天宮の祠が新築・お披露目されたのです。

その陰には、2年間にわたって伝統建築を学ぶ球磨工業高校生たちの力がありました。

【西村 勇気アナウンサー】
「私の後ろにあるのが球磨川です。その護岸から7~8メートルの所、ちょっと小高くはなっているんです。けれども、この水天宮まで当時、水そして泥が押し寄せたということです」

人吉市下新町。球磨川下りの拠点『HASSENBA(ハッセンバ)』のすぐそばに安産・子授け祈願で知られる水天宮があります。

2020年の豪雨災害では内部に土砂が流れ込むなどの被害を受けましたが、地元有志の働きかけでこのたび祠を新しく作り直すことになりました。

新築を担当するのは球磨工業高校の伝統建築専攻科で宮大工を目指す若者たちです。

高校の過程を卒業後、専攻科に進んだ生徒は2年間かけてさらに技術・知識を学びます。

【球磨工業高校伝統建築専攻科 黒木 光勝 さん】
「実際自分も(豪雨の)被害に遭った側ですので、いいものを作りたい」
「神様への気持ちも忘れず、自分たちの技術向上のために作っていきたいと思っています」

伝統建築のプロになるため業を磨く若者たちが自らの手で設計図を描きます。

暑さに負けず、祠を支える重要な柱を削りだす工程に取り組みました。

【球磨工業高校伝統建築専攻科 米村 和真 さん】
「自分が作ったものが形として残るのはうれしいことなので、被災された方々への気持ちも込めてしっかり頑張って作りたいと思います」

黒木さんは五木村出身。米村さんは、熊本市中央区から人吉の球磨工業を選んで進学し、宮大工を目指しています。

今回の水天宮は、学生たちにとって学びの集大成となる卒業製作。夏から秋、そして冬と季節が移ろう中一心不乱に木材を削り、部材を組み上げていきました。

そして完成の日。水天宮が運び出される瞬間を見守るため朝から多くの人が集まりました。

【西村 勇気アナウンサー】
「心配された雨もやみ、柔らかな朝日に包まれた球磨工業。卒業製作として作られた水天宮がいままさに、学校を出発しようとしています」

トラックに揺られながら祠は球磨川下りの拠点『HASSENBA』を目指します。

球磨川沿いに到着すると、祠の設置が始まりました。少しのずれも許されません。

【黒木さん】
「もう少し川の方にやらないと入らないです」

細かく位置を調整し、支えの木もだんだん細く、薄くしながら重さ1トン近くある祠を少しずつ基礎部分めがけて降ろしていきます。

今回のプロジェクトの施主、坂口 ゆかりさんもこの様子を見守りました。

長年、人吉市内で子ども服店を経営してきた坂口さん。孫が生まれたことを契機に、地元と、安産の守り神でもある水天宮に恩返しをしたいと出資を決めました。

【施主 坂口 ゆかりさん】
「思っていた何倍も素晴らしいお社ができて、本当に2年間一所懸命黒木さんと米村さんが作っていただいて。心がこもった作品で」
「本当にありがたいと思っています」

1時間ほどかけてようやく設置完了、学生たちにも安どの表情がみられました。

このあと黒木さんは滋賀、米村さんは京都の企業へそれぞれ就職し、宮大工としての一歩を踏み出します。

【黒木 光勝さん】
「これまでやってきたのがようやく完成したので、安心しかないです」
「自信ついたところももちろんありますけど、どちらかというとできないところが一番見えた1年間だったんじゃないかなと思います」

【米村 和真さん】
「こっちに置いたときの姿は(学校と)結構違うなって」
「迫力が増してるというか」「立派なものが作れてよかったです」
「京都にある伏見稲荷神社が一番大好きです」
(いつか携われるといいですね。)
「はい、それが夢なので。目標めがけて頑張りたいです」

学生たちと地域の思いが詰まった水天宮。これからも球磨川のほとりで人吉の安全を見守っていきます。

テレビ熊本
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