国土交通省が毎年1月1日時点の土地の価格を公表する「地価公示」。石川県内では5年連続の上昇となった一方、能登半島地震の傷跡は今もなお地価にあらわれている。加賀地方ではインバウンド需要や子育て支援の充実を背景に価格が上昇し、能登地方では復旧が進みながらも下落基調が続くという、県内二極化の現状が浮き彫りになった。

石川県の地価、5年連続上昇 かほく市が住宅地トップに浮上 能登では震災の影響が続く

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石川県内の調査地点は223カ所。そのうち145地点で地価が上昇した。県全体の変動率はプラス1.4%で、5年連続の上昇となった。

上昇の主な牽引役は加賀地方だ。インバウンド需要の増加、金沢市の都市再生緊急整備地域の指定による再開発への期待感など、複数の要因が重なり、金沢駅周辺や市内中心部を中心に地価が押し上げられた。

住宅地の上昇率を自治体別に見ると、昨年トップだった野々市市を抑えて、かほく市が上昇率3.6%で首位に立った。5年連続の上昇である。

かほく市は能登半島地震による被害を受けた地域ではあるが、子どもの医療費助成や学校給食費の無償化など、手厚い子育て支援策が評価され、移住・定住を選ぶ子育て世代が増えているという。

実際に暮らす住民に話を聞くと、その魅力が具体的な言葉で語られた。

「イオンモールも近くにあるし、スーパーも結構あるんで、住みやすいかなっていうの。生まれは金沢なんですけど、家、まあ補助金もたくさん出たんで。」

3年前にかほく市に家を建てたという人は、次のように語った。

「住みやすいっていうのと、金沢も行きやすかったり、アクセスがいいっていうのがあって、かほくにしました。」

隣に立つ子どもに「かほく好き?」と問いかけると、間髪入れずに「うん」と答えが返ってきた。子どもにとっても住み心地のいい街として定着している様子がうかがえた。

地点別トップは野々市市新庄1丁目 「割安感」が人気の理由

より細かい地点別で見た場合、上昇率が最も高かったのは野々市市新庄1丁目だった。大通り沿いには飲食店が軒を連ねるが、一本路地に入ると静かな住宅街が広がる。利便性と住環境の両立が魅力だ。

大型分譲地などの価格が周辺地域よりも割安であることが人気を集める主な理由とされており、新たに家を構えようとする世帯の需要を着実に取り込んでいる。

商業地の最高価格は金沢駅前・本町2丁目 14年連続トップ

商業地で最も高い価格を記録したのは、金沢駅前の本町2丁目だ。1平方メートルあたり123万円と、北信越5県の中でも14年連続のトップとなっている。

インバウンド需要の増加に加え、都市再生緊急整備地域の指定によって再開発への期待感が高まり、上昇率が拡大しているという。金沢駅周辺は今まさに、国内外からの注目が集まる場所となっている。

ただ、この上昇傾向が今後も続くかどうかについては、専門家は慎重な見方を示している。能登不動産鑑定所の西郷悟不動産鑑定士は次のように語った。

「最近、金利の上昇であったり、建築費とか資材価格の高騰といった経済環境というのもありますので、今後もこのような上昇傾向が継続するかどうかというのはちょっと現時点ではわからないです。」

金利上昇と建築コストの高騰という二重の逆風が、上昇トレンドに水を差す可能性は十分にある。市場の先行きは予断を許さない状況だ。

能登半島地震の影響、地価にも継続 輪島市は全国最大の下落幅

加賀地方の明るいニュースとは対照的に、能登半島地震が地価に与えた影響は今もなお続いている。

七尾市以北の6市町では復旧が進み、昨年のような大幅な下落は見られなくなった。しかし住宅地・商業地ともに下落基調は続いており、地価の回復には至っていない。

商業地において全国で最も下落幅が大きかったのは輪島市河井町で、マイナス6.3%を記録した。また、石川県を代表する温泉地として知られる七尾市和倉町でもマイナス5.1%となり、震災の影響が長く尾を引いていることが数字に表れている。

西郷鑑定士はこの状況について、こう述べた。
「復旧復興は進んでいますが、人口減少であったり、過疎化とか高齢化というものも続いていますので、下落基調が続いているということになっております。」

復旧・復興の槌音が響く一方で、震災以前から進行していた人口減少・少子高齢化・過疎化という構造的な問題が、地価の回復を阻む根本的な要因として横たわっている。工事が進み、まちの形が少しずつ取り戻されても、人が戻らなければ地価の数字は動かない。そのことを、今回の地価公示は静かに示している。

加賀の「上昇」と能登の「下落」が映す石川の現実

今回の地価公示が浮き彫りにしたのは、石川県内の南北格差だ。加賀地方では子育て支援や交通アクセスの良さ、インバウンド需要という複数の追い風を受けて地価が上昇し、居住を選ぶ人が増えている。一方、能登地方では震災と構造的課題が複合し、地価の下落が続いている。

同じ石川県内で、まったく異なる方向を向いた二つの地価の動き。それは単なる不動産市場の数字ではなく、それぞれの地域が抱える生活の現実そのものを映し出している。能登の復興と地価回復が本当の意味で果たされるためには、数字の背後にある人々の暮らしの再建こそが問われている。

(石川テレビ)

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