コロナ禍以降、生理用品を購入することが難しい「生理の貧困」が社会問題となっている。自治体や大学で広がる支援、生理を快適に過ごしてほしいと布ナプキンを手作りする女性など、貧困対策にとどまらず、生理そのものへの社会的理解を深めようとする動きを追った。
「急な生理でも安心」学生に好評
長崎市の活水女子大学では、2022年から2つのキャンパスの女性トイレ5カ所に、無料の生理用ナプキンを常備している。
きっかけは、コロナ禍でアルバイトができなくなった学生が増えたことだ。親から経済的な自立を求められ、お小遣いで生理用品を買わざるを得ない学生がいることが分かり、父母会からの申し出もあって設置に踏み切った。
無料ナプキンは年間4000から5000枚が使われるという。費用は年間約30万円かかるが、学生からは「急に始まったときに助かる」と好評だ。
活水女子大学の岩瀬貴子副学長は「自分の健康は自分で守るというセルフケアの視点でもいいきっかけになっている」と、学生にとって必要不可欠な取り組みだと語る。
物価高で生理用ナプキンも価格上昇
生理用品の価格は、上昇を続けている。
長崎市のゆめタウン夢彩都では、1パック(20枚台)の平均価格が1年ほど前は約300円だったが、今では400円近くと約3割上がった。
個人差はあるが、女性は1カ月あたり生理用品に平均で1000円程度を使うとされており、生涯にかかる費用は約48万円ともいわれている。
18歳の女性からは「高いなとは思う。1つで400円弱くらいするので毎月きつい。病院に行ったりもしているから病院代もかかる」という切実な声が上がっている。
トイレットペーパーと同じように
生理の貧困が社会問題として注目されるようになったのは2021年ごろからだ。
対応に乗り出す自治体は2021年からの2年間で約3.7倍に増え、企業も生理用ナプキン設置のサポートを進めている。
しかし、「誰もが快適な生理を」プロジェクトの野口俊英代表は「まだまだだ」と話す。「生理用品はぜいたく品ではない。トイレットペーパーと同じようにトイレには必ずあるとなってほしい。生理を女性だけの問題とせず、男性も含めて全員が取り組む形が大切だ」と訴える。
体に優しい感じ「布ナプキン」
社会的な支援の輪が広がる中、独自のアプローチで生理の在り方を変えようとしている女性がいる。
長崎市在住の大原万里亜さんだ。大原さんは手作りの「布ナプキン」を製作、販売する企業を立ち上げている。
優しい色合いの布ナプキンはすべて大原さんの手作りだ。使用しているのはオーガニックコットンで「肌にあたったときの感触が紙ナプキンやタンポンに比べて一番体に柔らかく優しい感じがするように」と、こだわりを話す。
色にも独自の工夫が施されている。ベージュはビワの葉、ピンクはアカネの根、黄緑はザクロの実の皮でそれぞれ染められた「草木染め」仕上げだ。「草木染めすると、コーティングされて血液がきれいにはがれやすくなる」と大原さんは説明する。
1枚の完成までに5日から1週間ほどかかるが、丁寧に色を煮出し布を染める作業は、快適に使ってもらうためのひと手間だ。
使用後は水に30分ほど浸けてから洗濯機で洗えば繰り返し使える。女性が一生涯で使う紙ナプキンが1万枚から1万2千枚とされる中、「ゴミにならず、とてもエコだ」と大原さんは強調する。
声にできない生徒の力になりたい
大原さんが布ナプキンの道を歩み始めたのには深い動機がある。
特別支援学校の教員を16年間務めた大原さんは、月経による痛みやかゆみを声にできない生徒たちと向き合ってきた。生徒たちの力になりたいという思いから、2013年に布ナプキンの会社を設立した。
販売だけでなく、定期的にワークショップを開き、布ナプキンの良さを広めている。約30分で手作りできる布ナプキンは、繰り返し使うことで生理用品の購入の負担を軽減するだけでなく、災害など緊急時にも「買えなくても自分で作ることができる」安心感につながる。
生理を楽しくする「救世主」に
大原さんは布ナプキンを単なる経済的支援策としてではなく、生理そのものをポジティブにとらえ直すきっかけとして広めたいと考えている。
「生理を楽しくする救世主として布ナプキンが広まってほしい」と大原さんは力強く語る。今後は、生理について知ることができる施設を作り、理解をさらに浸透させていきたいそうだ。
「隠すような内容ではなく語り合えるような環境を作っていかなくてはいけない。まず長崎から発信して、日本中で生理のことがわかるような場所が広まっていったらいいな」と展望を語る。
生理に対する社会の理解は徐々に広まりつつある。互いを思いやり、生理の不安や負担が和らぐ社会に向けて、各方面からの確かな発信は続いている。
(テレビ長崎)
