「乳児への揺さぶり」か。それとも「病気か」が争われた裁判に判決です。

大阪地裁は、交際相手の生後4カ月になる娘への傷害罪に問われた男性に無罪を言い渡しました。

裁判長が「主文、被告人は無罪」と言い渡すのを、背中をまっすぐ伸ばして聞いていた男性。

言い渡しが終わると、立ち上がり、裁判長に向かって「ありがとうございました」と述べて深々と一礼し、傍聴席にも深くお辞儀をしました。

この裁判は、「揺さぶられっ子症候群」=SBSか、病気かが問われた裁判でした。

■5分の間に赤ちゃんの様子が急変 男性が傷害罪で起訴される

5年前、男性は週末になると交際女性の家に通い、2歳児と生後4カ月の赤ちゃんの世話をしていました。

女性がゴミを捨てに家を出た、およそ5分の間に赤ちゃんの様子が急変し、男性はすぐに病院に連れて行きました。

検査の結果、急性硬膜下血腫などが見つかり、最後に一緒にいた男性が揺さぶって暴行したと疑われ、傷害罪で起訴されました。

【男性(去年10月)】「これだけはわかってほしいのは、僕はやっていません。本当に。僕は隣の部屋にいて、様子が急変してから気づいているので」

■検察側「揺さぶりなどで出血」弁護側「揺さぶりでしか生じない根拠はない」

裁判で検察は揺さぶりなどの外力により、硬膜下血腫などの出血があったと主張。

一方、弁護側は、赤ちゃんには重度のけいれんがあったことから、低酸素状態に伴う出血の可能性が高いと主張しました。

【秋田真志弁護士】「硬膜下血腫があっても、やはり内因(病気)でも硬膜下血腫が起こり得るんだということは、海外ではかなり言われてきているんですけれども、残念ながら日本でまだまだそこまでの議論には至っていないなという状況です」

さらに検察は揺さぶりの根拠として眼底出血を強調。眼科医が「これは暴力的に極めて強く揺さぶる行為だけが可能である」と証言しました。

弁護側は「頭蓋内出血」で脳圧が高まることに伴う眼底出血で「揺さぶりでしか生じないという根拠はない」と反論しました。

ことし1月、裁判は結審し、検察は懲役6年を求刑していました。

■裁判所は“検察の立証をことごとく否定”

そして、きょう(13日)の判決を前に、男性は取材に今の思いを語りました。

【男性】「誤った判断をされなければいいなとは思ってるんですけど。僕はずっと父親になろうしてやってきたものですから、あの時の家族が壊されたじゃないですけど、壊されなければよかったなというのもすごい思いながら…」

大阪地裁(三輪篤志裁判長)は、硬膜下血腫の原因について、「弁護側が主張する低酸素による出血の可能性を否定できない」と判断。

また、検察が「揺さぶり」の根拠として「首に近い部分に血腫がある」と主張したことについては「存在自体に疑義がある」としました。

さらに、眼底出血についても、「なぜ生じさせることができるのか具体的な証言をしていない」と検察の立証をことごとく否定し無罪を言い渡しました。

■弁護団 相次ぐ無罪判決に「『SBS事件』の捜査はゼロベースで見直すべき」

「揺さぶられっ子症候群」(SBS)を巡る裁判では、先週、福岡地裁で今週、宇都宮地裁で、暴行を否定する無罪判決が相次いで出ています。

【男性】「実感というか、すぐに切り替えることができないんですけど、ちゃんと判断してもらって裁判官の方に、よかったと思います」

2歳の娘に対する傷害致死罪などに問われ、先週、逆転無罪が確定した今西貴大さん(37)も裁判に駆け付けていました。

今西さんは男性と抱き合うと、「良かったな」と声を掛けていました。

弁護団は、「検察の控訴は許されるはずがない。『SBS事件』の捜査はゼロベースで見直すべきだ」と話しています。

■“『虐待ありき』の捜査の怖さ”を「弁護士記者」が指摘

長年SBSを巡る裁判を取材しこの裁判も取材した、弁護士資格を持つ上田大輔記者は、「捜査が『虐待ありき』で進んだ」と指摘しました。

【上田大輔記者】「改めて“『虐待ありき』の捜査だったのではないか”と言わざるをえないと思っています。

今回は児童虐待、このSBSに非常に詳しい、脳神経外科医が最初に首の近くの血腫を見て、『ほぼ黒の事案だ』ということを児童相談所に言った。そこからどんどん虐待ありきで進んでしまった。

そして男性がイライラしてやったのではないかとか、そういう虐待のストーリーで沿って捜査が進められたというところに、この捜査の怖さを私は感じました」

そして男性が逮捕・起訴されたことが、男性だけでなく元交際相手や子供たちの「人生を狂わせた」と話します。

【上田大輔記者】私も裁判の傍聴してこの事件を詳しく知って行ったんですけれども、男性は、本当に父親になろうと頑張っていたということなんですね。

出産時にサポートして、この女の子の名前の漢字も彼が考えて、普段も育児をしていて。それは元交際相手の女性の方もすごく認めているんです。

今も女の子は意識不明で入院中で、男性に今日の無罪判決の前に、『判決についてどう思いますか』と聞いたら、『自分の判決よりも、今もあの子が1日も早く回復してくれないかということを僕は毎日祈っています』ということをお話されていました。

父親になろうとした彼の人生と交際相手と、その子供の人生を狂わせた、そういう虐待ありきの捜査だったのではないかと感じています」

(関西テレビ「newsランナー」2026年3月13日放送)

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