専門家はどう語る?「代理出産より子宮移植」
こうした問題を専門家らはどう捉えているのか。
「特定生殖補助医療法案」の議論を主導してきた自民党の古川俊治参院議員は、代理出産を望む当事者の思いには理解を示しつつも、制度化のハードルは高いと指摘する。
「女性の身体的負担や契約トラブル、障害があった場合の責任など、倫理的・法的課題が多い」
一方、国内ではいまだ実用化のめどが立っていないものの、子宮がない女性でも出産できる可能性がある子宮移植の研究が進んでいるとし、「技術が現実的になってきた以上、社会的問題が多い代理出産より、こうした医療を進めるべきだ」との考えを示した。
学会ではなく国が判断を
代理出産をめぐっては、日本産科婦人科学会が長く禁止方針を示してきた。
同学会元理事長で慶應義塾大学名誉教授の吉村泰典医師は、「学会は国の方針に沿ってきた」と説明する。
議論が進まない背景の一つとして挙げたのが、実態の見えにくさだ。
「代理出産は本人が公表しない限り、外からは分からない。裁判などになったケースを除けば、どれくらい行われているのか実態は把握できていないのではないか」
代理出産は「他人に妊娠や出産の大きな負担を負わせる医療だ」と指摘する。一方で、生まれつき子宮がない女性など、子どもを持ちたくても持てない人たちの存在にも理解を示す。
「産婦人科医として賛成ではないが、そうしたケースでは例外的に認める議論も必要ではないか。学会ではなく、国が制度として判断すべき問題だ」
子どもを持てない人への支援を
一方、“子どもを持てない人への支援”という観点から、制度整備を訴える医師もいる。
長野県の諏訪マタニティークリニック院長の根津八紘医師だ。2001年、子宮を摘出した女性のために国内で初めて代理出産を実施し、大きな批判を浴びた。
当時を、「子どもを産めない人がいる一方、その人を助けたいと望む人もいた。そうした状況を医師として放置できなかった」と振り返る。
営利目的の代理出産には反対だとした上で、「精子がない人、卵子がない人、子宮がない人。それぞれ事情は違うが、子どもを持てないという点では同じだ」と指摘。病気で子どもを産めない人を網羅的に支える「生殖障害者支援法」のような枠組みがあれば、より丁寧なケアにつながるはずと説明する。
「科学の進歩で、これまで子どもを持てなかった人が親になれる可能性が生まれている。人権が守られる形で、国が法律を整え、支援体制をつくるべきだ」
宙づりのまま四半世紀
海外では、代理出産を禁止する国もあれば、法律でルールを整えた国もある。一方で、日本では“宙づり”のまま、四半世紀が過ぎた。
諦めることも、別の選択肢を正面から選び取ることもできない。
子どもを望む人たちは、いまも宙づりの状態に置かれている。
(フジテレビ報道局・調査報道統括チーム 松岡紳顕、阿部桃子)
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