「編集に職務が限定」 原告の主張

原告の女性は、雇用契約自体が編集業務に限定されていたと主張した。

契約書に明記された勤務内容、異動条項を除外する特約、さらに7年間一貫して編集のみを担当してきた実態は、被告・出版社との間に「編集職に限定する合意」が存在する決定的根拠だとした。

したがって、総務部への配転命令は契約違反で無効である以上、従わないのは当然であり、その後の欠勤も会社側の事情による就労不能だと位置づけた。無断欠勤の扱いも懲戒解雇も成立しないと主張した。

被告は正当性主張「適性に欠けたため配置転換」

被告A社は、会社が業務上の必要性に応じて、従業員の職種や勤務地を変更することが出来ると記載された「配転条項」を含む就業規則を2023年5月に周知したので、原告にも配転条項の効力が及ぶと主張。

女性との契約書は当初の配属を示しただけで、職種を限定する趣旨ではないと反論した。

配転命令の理由としては、原告が編集者としての適性を欠くと判断したと訴えた。

新刊発行の「必達目標」が半分以下しか達成されていなかったり、誤訳の指摘への対応が遅れたなどと主張し、原告には編集業務を遂行する能力が不十分で、被告側は解雇を避けるために総務部での勤務を提案したとしている。

懲戒解雇については、配転命令が有効である以上、原告の拒否は「正当な理由なき命令違反」、有給消化後の出社拒否は「無断欠勤」に該当するため、就業規則に照らし懲戒解雇は適法だと主張した。

「配転命令と懲戒解雇は無効」裁判所の判断

東京地裁はまず、核心となる「職種を編集部での仕事に限定する合意」があったのかどうかを検討した。

判決では、原告女性が長年編集者を務め、編集者としての能力を買われて派遣契約から直接雇用に切り替えたという経緯から、「編集企画業務のみに従事する編集者として雇用する意志だった」と推認。原告女性もそれに応じていた事から、職種を編集業に限定する合意が成立していたと判断した。

東京地裁
東京地裁

したがって、被告のA社が女性に対して異動・配置転換を命じる権限はそもそも無いとして、総務部への異動命令は無効とした。

「不当な動機」会社を厳しく批判

さらに裁判所は、原告女性についてA社が「編集者としての適性を欠く」と主張していた点について、「解雇に値するほどの業務遂行能力の欠如があったとは認められない」と認定。突然の工場への出向命令や、不服であれば転職か訴訟をするしかないなど「高圧的な内容の」文書を送っている事などと合わせて、「本件配転命令が原告排除の不当な動機、目的をもって行われたこともうかがわれる」と厳しく指摘したのだ。

その上で、懲戒解雇については、基礎となる異動命令が無効である以上、拒否には正当な理由があり、欠勤も無断ではないため、懲戒権の濫用で無効と結論付けた。

賃金は、無効な命令によって働けないのであって、会社に責任があるとして、有休消化から判決確定まで、月額約29万円の支払いを命じた。

東京地裁は最終的に、配転命令も懲戒解雇もいずれも無効とし、会社の対応は正当化できないと明確に判断したのである。

プライムオンライン編集部
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