ベテラン書籍編集者が突然命じられた総務部への異動命令――。編集者は命令に従わず、欠勤の末に懲戒解雇された。
東京地裁は1月、「異動命令そのものが無効であり、従わなかったことを理由に社員を処分するのは許されない」と判断。ベテラン編集者の解雇は無効として、欠勤期間の給与の支払いを会社に命じた。なぜ裁判所は会社の異動命令は無効と判断したのか。判決で、「配転命令は不当な動機、目的をもって行われたことがうかがわれる」とまで断じられた、会社の対応とは。

原告は編集者歴27年のベテラン

原告の女性が書籍の編集者としてのキャリアをスタートさせたのは1996年のこと。最初は専門書の翻訳出版の編集者を5年務め、著名な翻訳小説の出版社に転職。12年間にわたり、編集業務に従事した。

2014年からは派遣社員として都内の出版社A社(今回の被告会社)に派遣され、翻訳小説の編集業務に従事。A社の編集部長から実績を評価され、2016年6月に、A社は女性と直接雇用契約を結んだ。

契約書には勤務内容が「編集企画業務」と明記され、さらに就業規則のうち異動条項を含む部分は準用しない特約が付されていた。

契約は有期契約だったが、契約期間が経過した後も、更新手続きが行われないまま約7年間、女性は編集者として勤務し続け、ベストセラー作品を手がけた事もあったという。

27年間に渡って編集者としてのキャリアを積んできた女性。彼女に対してA社は2023年8月、突然、関連会社である印刷工場への出向を命じた。

総務部への異動命令

しかし、就業規則に出向命令の根拠はなく、女性は応じないとA社に伝えた。するとA社は、出向を撤回しないまま、今度は女性に総務部への配転命令を発したのだ。

事前協議はなかった。

女性はこれに応じず、弁護士を通じてA社に撤回を申し入れ、有給休暇を消化した。

有給が尽きた10月31日以降、女性は出社しなかったが、女性側はその理由について「無効な配転命令に基づく出勤指示には応じられない」とA社に通知。一方、A社側はこれを無断欠勤として扱った。

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2023年12月、A社は原告に出社を促す文書を送り、原告の代理人は「配転命令が無効な限り従えない」と回答。A社は2024年1月にも再度出社を命じたが、その内容は総務部での勤務を前提としたままだった。

A社は2024年3月、女性に対し再度出社を促す文書を送付したうえで、同年4月に懲戒委員会を設置。女性は体調不良で弁明期日に出席しなかったが、代理人を通じて「配転命令が無効である以上、欠勤は正当」と文書で回答した。

A社は2024年5月30日付で女性を懲戒解雇。理由を「正当理由なき配転命令拒否」「無断欠勤の継続」とした。

こうした経緯を踏まえ、女性は、配転命令や懲戒解雇の無効、無効期間の賃金支払い(毎月約29万円)などを求めて提訴した。