深刻化する農業の担い手不足に向き合おうと、秋田・にかほ市の農業法人「権右衛門」が学生向けの農業体験プログラムを開始した。IT企業と連携し、若者と地域農業をつなぐ新たな試みは、農業現場の課題にどれほどの光を投げかけるのか。現場の声とともに、その一歩を追った。
農業法人が企画「学生向け体験」始動
にかほ市の農業法人「権右衛門」は、鳥海山の麓でコメと長ネギを生産する地域密着型の農業法人だ。
1月、同社が初めて企画した学生向け農業体験が行われ、秋田市の国際教養大学から3人の学生が参加した。
企画の発案者は権右衛門の佐々木唯翔社長。
県内では農家の高齢化や後継者不足が深刻で、特に秋の農繁期は人手不足が続いているという。「農業に興味のある若者に場を開き、未来の担い手育成につなげたい」という思いから、体験会の実施に踏み切った。
IT企業とタッグ 若者と農業つなぐ新しいアプローチ
今回の取り組みには、東京のIT企業「AilaB(アイラボ)」の佐藤律希CEOが協力。AilaBでインターンを行う県内大学生が体験に参加しており、農業体験が学生と地域をつなぐ機会にもなっている。
AIやDXを得意とするAilaBが農業に関わる理由について、佐藤さんは「IT企業として農業の課題を理解し、サポートできる部分を模索したのが始まり」と語る。
異業種の視点が入ることで、農業現場に新たな風を呼び込む狙いもある。
雪の中での長ネギ収穫を体験
学生たちが挑んだ作業は長ネギの収穫。にかほ市は秋田県内でも降雪が比較的少ない地域で、権右衛門では冬場でも長ネギの栽培が可能だ。鳥海山の伏流水で育つ長ネギは、雪の下で甘さが増すという。
取材当日は雪が多く、収穫作業は全て手作業となった。凍結が進んでいたため皮むきも一苦労。袋詰め作業までは進められなかったが、学生たちは雪中での農作業の大変さと奥深さを実感した。
学生に見えた農業の可能性
報酬は、収穫したばかりの長ネギ。実際の農作業に触れた学生たちは口をそろえて「貴重な体験だった」と語る。
国際教養大学3年の劉雨佳さんは「仕事として農業に入らなくても、何らかの形で関われる。こうした体験が、将来の選択肢につながる」と話し、農業との距離が縮まった様子だった。
地域と若者をつなぐ“相乗効果”
AilaBの佐藤CEOは「県内の若者が県内で事業を承継し、秋田を再興していくことがゴール」と語る。農業体験は学生と地域を結びつけるだけでなく、IT企業にとっても若者との対話を深める貴重な機会になっている。
一方、権右衛門の佐々木社長は、「農学部出身ではない学生たちに、農業に対する新鮮さを感じてもらうと同時に、農業の厳しさと楽しさを実感してもらいたい」と体験の効果に期待を寄せる。
農業とITが手を取り合うことで生まれる可能性はどこまで広がるのか。
春からはコメ作りの農業体験も予定されており、地域の未来を切り開く取り組みは次のステージへ進もうとしている。
(秋田テレビ)
