鳥取県米子市の鳥取大学附属病院では、2025年4月から心臓の機能が低下する重い症状の患者を救うため、新たな治療法を提供しています。
根治が難しいとされる患者の「希望」になっているこの新しい治療法について取材しました。

高齢化が進む日本。
近い将来、患者数が急増すると言われているのが「重症心不全」。
心臓のポンプ機能が低下し、十分な血液を全身に送り出せなくなる状態で、高齢者ほど発症しやすく、1年間の死亡率は5割以上とも言われています。
この症状の新たな治療法として登場したのが、長期在宅補助人工心臓治療、通称“DT治療”です。

鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科学・吉川泰司教授:
悲願ですね。悲願だったと思います。

高齢などの理由で治療が受けられず、祈るしかなかった患者の新たな希望とは…。

松江市の中村茂己さん(66)。
DT治療で命を救われた1人です。
大阪大学でDT治療を受け、現在は鳥大病院に通院しています。

「ちょっと音が鳴ります」

この装置がつながる先は、中村さんの心臓…埋め込まれた「補助人工心臓」に異常がないか、月1回の定期点検を受けています。
そのきっかけは3年前…。

中村茂己さん:
心臓の兆候も全然なかったので、えーっていう感じで。未だに夢見ている感じなんです。なんでこんなことになっているのかみたいな。

中村茂己さんの娘・中村裕美さん:
心臓が止まってしまって、電気ショックで何とかまた脈打ちましたと言われたときに、本当にもうこのまま会えないんだなと思いました。

「重症心不全」に陥り、生死の狭間をさまよいました。

鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科学・吉川泰司教授:
重症心不全の出口治療の『ゴールドスタンダード』は、やはり心臓移植なんです。しかしドナーが日本では極端に不足してます。

鳥大病院の吉川泰司教授。
30年以上第一線に立つ心臓血管外科のスペシャリストで、ロボット支援心臓手術の第一人者としても知られています。

吉川教授によると、重症心不全は投薬などでは回復が見込めず、今のところ最終的な治療法は「心臓移植」に限られると言います。

しかし、国内ではドナー不足のため、心臓移植手術を受けるまでに平均で5年から6年の待機期間があり、手術を受けるにも高齢の患者にとっては厳しい条件があります。

鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科学・吉川泰司教授:
高齢者を中心に、そういう重症心不全の方がたくさんいる。そういう方は心臓移植を受けられない。生きる術がなくなってしまう。

こうした中、2021年から公的医療保険の適用対象になったのが、「DT治療」。
外付けのバッテリーで動く補助人工心臓を埋め込み、弱った心臓の代わりに血液を循環させます。

補助人工心臓は、心臓移植を待つ間の「つなぎ」として使われますが、これを最終的な治療として生涯、装着します。

高齢化が進む山陰でもDT治療が受けられる道を開こうと、吉川教授を中心に態勢を整え、2025年4月、鳥大病院は国内で21番目、中国地方では初めての実施施設に認定されました。

鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科学・吉川泰司教授:
悲願ですね。悲願だったと思います。地域完結で行うことが大事なので。

期待の治療法ですが、一方で課題もあります。

中村さん:
買って、一年待って来て、11月に来て、で一月…。

補助人工心臓に異常が起きれば重大事故のリスクがあるため、車の運転は禁止。
車好きの中村さん、納車まで1年待ちで手に入れた愛車は、わずか3か月で手放しました。
また、装置を壊さないよう湯船につかることはできず、シャワーだけとなりました。
さらに…。

中村茂己さん:
毎日背負ってると思うと結構しんどい。すごい緊張します。これが心臓だと思うと。動いてる元になるのでね。えらいもんつけれらなきゃいけない。

中村さんが常に持ち歩く装置の重さは約3キロ。
しかし、補助人工心臓に電源を供給するため手放すことはできません。
バッテリーによる駆動は最大17時間、文字通り「心臓の代わり」になるため、常に残量を把握しておく必要があります。

中村茂己さんの娘・中村裕美さん:
(補助人工心臓の充電器を)一回、直でコンセントに挿して寝ている間に、夜中に停電になったことがあって。その時は警告音が(鳴った)。

電源を失い、装置が止まれば、「死」に直結します。
もしもの場合が頭をよぎることもあると言います。
それでも…。

中村茂己さんの娘・中村裕美さん:
もうとにかく、『命が長らえるっていうか続くのであれば、もう何でもいいから』ぐらいの気持ちでいましたね。

中村茂己さん:
神様が助けてくださったんだなっていうような思いはありますけどね。本当に今まで経験したことない病気でもあり、長期間の病院生活だったので、本当に皆さんに感謝してます。

高齢化の進行に伴って「重症心不全」患者の増加が見込まれる中、「DT治療」は
患者が失った日常を再び取り戻すための新たな選択肢となりそうです。

TSKさんいん中央テレビ
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