飛躍的な進歩が見られる人工知能「AI」。
実は、アニメ制作でも活用が始まっています。
どのように使われているのか島根ゆかりの企業が手がけるAIアニメの制作現場に潜入、新しいコンテンツ作りの世界を探ります。
文書の作成から情報収集、音楽や動画の作成まで幅広い分野で活用が進む「生成AI」。
さらに…。
安部大地記者:
「今や誰もが使うAI、アニメに活用するスタジオがこちらにあります。早速行ってみましょう」
訪ねたのは、東京・千代田区にあるオフィスビル。
安部大地記者:
「DLEの本社にやってきました。吉田くんをはじめ、人気作品のポスターがたくさんあります」
DLE・小野亮社長:
(吉田くんの声で)
「よろしくお願いします」
Q.吉田くん?
DLE・小野亮社長:
「DLEの代表、小野です」
アニメ「秘密結社鷹の爪」の監督で、人気キャラクターしまねの「吉田くん」の声も担当する「FROGMAN」ことクリエーターの小野亮さんです。
制作会社「ディー・エル・イー(DLE)」の社長を務めています。
アニメ「クレヨンしんちゃん」のスピンオフ作品「野原ひろし 昼メシの流儀」など話題作を手がけるこの会社では2025年、業界に先駆けてAIを導入した映像制作スタジオを社内に設けました。
このスタジオで制作されたのが、TSKさんいん中央テレビで放送中の「小泉八雲のKWAIDANの世界」。
生成AIを活用して松江ゆかりの文豪・小泉八雲の作品をアニメ風と実写調、異なるタッチで映像化した1話約3分間のショートアニメです。
その制作の現場をのぞいてみると…。
DLE・小野亮社長:
「雪女が白い息を吹きかけていって、だんだん霜が顔に落ちていくように」
制作チームは監督の小野さん以下4人。
書き下ろしのオリジナルのキャラクターデザインから絵コンテに沿って、シーンごとの画像を生成AIを使って作り出します。
例えば、雪女が息を吹きかけ男性を凍りつかせるシーン、顔の表情から背景まで生成AIに対し、「プロンプト」と呼ばれる文章で細かく指示を出します。
そのプロンプトも生成AIで作成したものですが…。
制作スタッフ:
「立っていて、おかしいから座った状態で。抱えているアップだけで」
絵コンテとは違う構図に…なかなかイメージ通りになりません。
指示の内容をさらに細かく追加、修正していくと…。
制作スタッフ:
「これいいね」
ようやく思い描いた画像に!
この1枚の画像をもとに次は動画。
再びプロンプトを修正しながら生成させていきます。
いわば「絵心」なしでもアニメーションが作れるAIの世界。
このスタジオでは、実写の世界での「演出」経験が生かせると、スタッフにも映画やテレビなど実写での映像制作の現場経験がある人が少なくないといいます。
制作スタッフ:
「テレビのバラエティのディレクターをやっていて、アニメはこれまで一切やったことがない。カット割りやカメラワークは自分が経験しているのも生かせている」
DLE・小野亮社長:
「今一番AIで魅力的に感じているのは、やはり早く作れるというポイント。いわゆるディレクターと言われる人たちが直観的にすぐ作ることができる」
「革命」的な変化を起こしつつあるAIによる映像制作、その最大のメリットは制作期間の短さです。
DLEでは、1話3分程度のショートアニメを制作する場合、従来の手法で3週間程度かかるのに対し、AIを使用した「KWAIDAN」ではわずか4日。
世の中の動きや流行を敏感に取り入れ、ヒットを狙う戦略です。
かつては作画から編集、声の出演までほぼ一人で完結する制作スタイルだった小野さん、AIに大きな可能性を感じています。
DLE・小野亮社長:
「自分で書くので、自分が描ける絵の中でしか世界観を構築できなかった。そうなるとちょっとチープな…(吉田くんを見ながら)チープというとあれなんですけど、リミテッドアニメーションしか作れなかったんですけれども、AI使ったら一気に自分の表現の幅が広がった」
一方で、生成AIを使ったアニメ制作は発展途上。
複雑な動きを表現するのが難しいなど多くの課題があります。
また、AIによって生成された、著作権侵害にあたる動画がネット上で拡散され問題になることもあり、AIの活用は「賭け」だったともいいます。
DLE・小野亮社長:
「ずっとアニメーションを作っている会社が生成AIを使うのはリスクは大きい。『なんだよ、あいつら、魂売ったのか』という風に言われるんじゃないか、炎上するんじゃないかというおそれはありましたけれども、ネガティブに反応する人は意外にいなかった、少なかった。映像は何よりも企画とシナリオと演出、今までなかったエンタメもAIで作っていくというのは、我々の大きなテーマになっている」
この会社では、AIを活用して観客の「アバター」、分身が作品本編に参加できるインタラクティブ映画を開発、活用を模索しています。
従来の枠に捕らわれないアイデアで新しい「エンタメ」の世界へ。
AIは今後、コンテンツの裾野を広げる欠くことのできないカギとなりそうです。