「長い間ごひいきありがとうございました」

 
 
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先週、近所の東麻布の商店街を歩いていたら、よく行く定食屋さんに貼り紙がしてあったので、まさか、と思い読んだ。
「築地の豊洲移転に伴い閉店させていただきます。長い間ごひいきありがとうございました」と書いてあった。
閉店したのか!

8年間土日勤務だったので平日の昼ご飯をよく食べに行った店で、元魚屋さんなのでおいしくていつも混んでいた。築地で仕入れたマグロの刺身定食が有名だったが、なぜか僕はブリ照焼定食が好きで、そればかり食べていた。

 
 

ただ、魚を切ったり焼いたりしているのが、かなり高齢のお爺さんで、嫌な予感がしていたのだが、築地から直線距離で2.3km先の豊洲は遠かったのだろうか。
などと考えていたら翌日の産経新聞が記事にしていて、このお爺さんは82歳で、なんと朝5時過ぎに自転車で築地に行っていたらしい。
僕はよくウチから電動自転車で銀座まで行くが大体4kmくらい。これにプラス2.3kmは電動でもキツい。

ということで築地の豊洲移転は僕の食生活にも影響を及ぼしているのデス。

豊洲移転はやむを得ない

 
 

 築地を惜しむ声も多いが、衛生環境や今後の魚の流通などを考えると豊洲移転はやむを得ない。
メディアも今回は概ねその論調だ。

だからこそ小池東京都知事による2年間の豊洲移転延期というのは、全く意味がなかった。
当時の小池さんの「豊洲は安全だが安心はできない」というセリフはいまだに意味が分からない。

石原慎太郎元知事を百条委員会という「公開裁判」の場に引きずり出して、都議会議員やメディアが、あたかも豊洲移転が「悪」であるかのように、石原氏を集団リンチしたのも嫌な記憶だ。

当時僕が番組で「小池知事は豊洲移転の延期などできるはずがない。日本の技術力をもってすれば豊洲の安全確保など簡単だ」と言ったらいろんな人からバカにされたのを覚えている。

都知事と都議会議員とメディアによるあの騒ぎは、いったい何だったのだろうか。
 

街のインフラは冷静な判断を

 
 

築地のあの独特の雰囲気がなくなるのはもったいない。
なじみの定食屋さんが消えるのも寂しい。
だが街のインフラは未来のことを冷静に考えて作るべきで、その時の感情で判断してはいかん、とつくづく思った。

(執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫)

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。