600万人。この数字、実は潜在的にいるとされる「男性更年期障害」の患者数だ。女性特有のものと思われてきた更年期障害が今、中高年男性の間で広がっているという。

働き盛りの男性を襲う更年期障害の実態はどういうものなのか。
 

全国で600万人いると言われる男性の更年期障害

 
 
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東京・新宿の泌尿器科があるクリニックをのぞいてみると待合室には、男性の姿ばかり。話を聞くと症状は「目が覚めても体が動かせない」や「ほてりが辛くて汗もスゴい」などだ。
不眠やほてりなど、泌尿器科とは関係ないような症状に聞こえるが、彼らを悩ませているのは「男性更年期障害」だ。
 

 
 

このクリニックは男性更年期障害の専門外来を行うクリニック。院長の平澤医師が20数年前に、この治療を始めた頃は、1週間に数人患者が来れば多い方だったが、今だと多い時は1日に数十人の患者が来ることもあるという。年々、外来に訪れる患者は増えているといい、こうした更年期障害の悩みを抱えた男性の数は、全国で600万人以上いるとも言われている。

症状が出始めるのは、一般的に40代前後。働き盛りの男性に忍び寄る症状に、妻たちは「わからないです」「あんまりわからない」という意見が多く、どんな症状だと思うか聞いてみると「加齢臭がする?」という答えも。そもそも、男性に更年期障害があることすらあまり知られていないのが現状だ。
 

うつ病を疑ったが、心療内科では軽くあしらわれた

 
 

更年期障害に悩まされる男性に密着すると、放置すると危険で、心と体に様々な不調をもたらす「男性更年期障害」の実態が見えてくる。

この日、男性更年期障害の専門外来を訪れていたのは、半年前から通院しているという48歳の黒川さん。
話を聞いてみると、「暑すぎたりすると、やはり血の気が引くような気がする感じで、しんどいです」という症状で、体がほてったり、汗をかきやすくなったり、目まいを感じることも多いということだ。さらにこの日は、朝起きてから20分ぐらい動けないような状態で、以前は2時間くらい起き上がることができなかったという。他にも、不眠や無気力、骨や関節の痛みなど様々な症状を引き起こす男性更年期障害。


黒川さんが、症状に気付いたのは4年ほど前。当初、うつ病を疑い、心療内科にも相談したといいます。しかし、心療内科では「低血圧のせい」と言われ「更年期障害ではないんじゃないですか」と軽くあしらわれたように感じたという。

黒川さんは現在福祉の仕事をしているが、発病した当時は大手通信会社で朝早くから夜遅くまで働いていた。しかし、体調が悪く会社に遅刻や休みを取らせて欲しいという連絡をする際に、病名が無いため困ってしまったそうだ。

突然襲う原因不明の体調不良に悩まされる日々を過ごしていたところ、テレビで男性にも更年期障害が起こることを知り、ようやく専門外来にたどり着いたという。
 

 
 

男性更年期障害は、男性ホルモンの一種『テストステロン』の減少により、引き起こされる。一般的に、血液中のテストステロンの数値が8.5pg(ピコグラム)以下で『男性更年期障害』と診断されるが黒川さんは、4.7pg(ピコグラム)と大きく下回る結果だった。現在は、定期的に男性ホルモンを補い、改善に向かっているという。

治療されないまま放置してしまい、60歳代以降もそのまま継続していくと、社会との接触が断たれ、認知症症状などのリスクも高まると前出の平澤医師は指摘する。
 

「年齢のせい」と気がつかない妻たち

中高年の働き盛りの男性が要注意。実際に専門外来での診断に使われるアンケートを使って、お台場にいた40代以上の男性100人に診断チェックをしたところ、78人もの方が更年期障害の可能性があるという結果が出た。

そんな夫の不調に、妻たちは気づいているのか聞いてみたところ、「あんまり一緒にいないんで、仕事が遅いので一緒にいる時間が少ないので、ちょっと分からない」という声や、「全然気にも留めなかったです。『疲れやすいんやな、年やな』ぐらいにしか、思っていなかったです。」「(性欲も)減退していると思います20代の頃とか比べると」などの意見が多く、「年齢のせい」と、夫の症状をあまり気にしていない人も多いようだった。
 

更年期障害で普通の生活が送れなくなってしまう人も

 
 

更年期障害によって人生が激変してしまう人もいる。

51歳の倉持さんは、異常な発汗や、不眠などに悩まされているという。現在、倉持さんは都内のアパートで1人暮らし。夜眠れないため、日中も雨戸は閉めたままだ。寝られない時は3日間も寝ることができない日々を送っている。

以前は、大手銀行の関連会社で働いていたが、ミスに対する上司からの圧力をなど、ストレスを抱えながら仕事を続けていたが、突然更年期障害の症状が出始め、5年前に退職せざるを得ない状況になってしまった。こうしたストレスも男性ホルモンが低下する要因だという。

しかし、当時体調不良の原因は分からず、辞めた年の翌年ぐらいまで様々な銀行の面接を受け続け、やっと採用されたにもかかわらず、体調不良から仕事を続けられず「何をやっているんだ俺は」と精神的な悪循環につながっていった。その後も、定職にはつけず、収入は生活保護に頼らざるを得なくなったという倉持さん。

昼夜逆転の生活が続き、症状が悪化する中、4年前に男性更年期障害を知ったことから通院を始め、現在は少しずつ改善に向かっているという。しかし、今も倉持さんを悩ませているのが、眠る時に現れる症状だ。普段悩まされているほてりだけではなく、手足がしびれる症状が現れるという。そこで更に不眠に陥るという悪循環だが、今は治療に専念するという。

倉持さんは「家族がいたらどうだったのかってやっぱり考えた時はあった。病気になってしまった以上は家族がいなかったことが唯一の救いだったなとは思います。」とつらい胸の内を語った。
 

気付かずに進行する男性の更年期障害

小倉:
だいたいどれくらいの年齢からなるものなんですか?

立川:
個人差は大きいですが、だいたい40代前後からと言われていて、大きな原因としては老化とストレスによって男性ホルモンが減少してしまい、更年期障害が引き起こされるということです。
 

立川:
また、上の写真の10項目のうち、3項目以上当てはまる場合、更年期障害の可能性があると言われています。この症状はうつ病とも似ていますが、うつ病の薬は男性ホルモンを低下させてしまうため、より症状が酷くなってしまうこともあります。そのためしっかりとした検査が必要です。もしかしたらと思ったら、泌尿器科に行って男性ホルモンの値を調べてもらうことで、症状にあった治療ができます。

女性の場合は更年期障害が閉経などの明確なラインが共有されていますが、男性の場合は気付かずに進行することがあるので、そこが怖いところかもしれません。
 

とくダネ!
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