「お医者さんに相談」すると、どうなる?

某議員(当時)の「このハゲ~!」暴言は、薄毛に悩む多くの男性の心も傷つけたことでしょう。
1200万人以上の男性が発症しているとされるAGA(男性型脱毛症)。大きな悩みになっている男性も少なくありません。
いろんな育毛剤や養毛剤を試したけど、あまり効果が実感できなくて…という方も多いかもしれません。
「AGAはお医者さんに相談しよう」と謳うテレビCMも流れていましたが、では医師は具体的にどのように治療するのでしょうか?

治療薬の“2トップ”とは

AGAの代表的な治療薬としては、「フィナステリド(商品名:プロペシア)」と「デュタステリド(商品名:ザガーロ)」が“2トップ”と言えるでしょう。
“薄毛のためのクスリ”と言うと、つい頭皮に塗るものを想起されるかもしれませんが、この2薬は、いずれも内服薬です。
まず、「フィナステリド」についてですが、世界60か国以上で効果が認定されており、AGA治療の主戦力と言っていいでしょう。

 
 
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AGAは、「5αリアクターゼ」という酵素が作用して、「DHT」という男性ホルモンが生成されることで、ヘアサイクルが乱れ、薄毛が進行していきます。
「フィナステリド」は「5α-リダクターゼ」の働きを抑えることによって、AGAの直接的原因である「DHT」の生成を事前に防ぎます。その結果、毛母細胞が守られて抜け毛が減り、徐々に頭髪が増えていくという仕組みです。
気になる効果ですが、「フィナステリド」を、5年間、1日1mg服用した男性の90%に効果が認められています。特に頭頂部の薄毛の進行を食い止める効果が高いようです。

昨年登場した強力な新薬

もうひとつの「デュタステリド」は、昨年の6月に承認された新薬です。
先述した、脱毛の直接原因である「DHT」を生成する「5αリダクターゼ」には、1型と2型があります。
「フィナステリド」は、そのうち2型のみの働きを抑制するのに対し、新薬「デュタステリド」は2型に加え、1型の働きも抑制します。
また「フィナステリド」に生え際への効果が全くない訳ではありませんが、「デュタステリド」の方がより高い効果が見られます。

 
 

こちらの効果ですが、米国皮膚科学会発行の学術誌に掲載されたデータによると、12~24週間服用した結果、「デュタステリド」0.5mgは、「フィナステリド」1mgの1.6倍の発毛効果あったとされています。また髪の太さも、「デュタステリド」のほうが1.45倍太くなったとしています。

頭皮に塗るクスリが血流促進

AGA治療薬には、「ミノキシジル」と言う、頭皮に塗る外用薬もあります。市販もされています。
もともとは高血圧患者の降圧剤として用いられていましたが、その副作用として体毛が濃くなるという症状が認められました。そこで、その副作用をAGA改善の「効能」として転用したものです。
「ミノキシジル」には毛細血管を広げる働きがあります。頭皮の血行を良くして、髪の毛を成長させるために必要な栄養、酸素を、毛乳頭細胞に多く補給することでAGAの改善を図ります。
「ミノキシジル」の効果ですが、48週間、5%含有の薬剤を塗布したことで、51%に発毛の改善がみられました。ただし、頭頂部の発毛がほとんどで、生え際には ほぼ効果はありません。

AGA治療のステップ

クリニックに行った際の最初の基本ステップとしては、「フィナステリド」や「デュタステリド」の服用と、「ミノキシジル」の塗布を併用しての治療を6か月程度行います。
基本的には頭皮に塗って使用する「ミノキシジル」ですが、医師の責任の下、日本では未承認の「ミノキシジル」内服薬を取り寄せ、内服してもらうケースもあります。
皮膚には強い防御機能があり、「ミノキシジル」を頭皮に塗布しても、毛穴から吸収される量は限られているからです。
さらなるステップとしては「メゾセラピー」と言って、「フィナステリド」「ミノキシジル」等々を、薄毛部分に直接注射します。有効成分が体内で薄まることなく、最大の効果を発揮できる状態で頭皮に浸透します。

治療は専門知識にある医師の下で

これらの治療については、専門知識のある皮膚科医などで受けて下さい。
AGA治療は、継続的に服薬等する必要があります。また例えば「フィナステリド」には、主な副作用として勃起機能の低下などの精力低下や性欲減退などが報告されています。
気になる症状があれば、直ちに医師に相談をして下さい。
(いずれの治療法も発毛効果には個人差があります)


(執筆:Watanabe Chiharu)

プライムオンライン編集部
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