年々巧妙化するサイバー空間での犯罪を取り締まる福岡県警サイバー犯罪対策課。捜査上の制約から多くのベールに包まれた組織に、取材班が迫った。

ネット上の“違法”を取り締まる

「美白、化粧水、激安、韓国、みたいな感じでちょっと調べてみます」と言って福岡県警サイバー犯罪対策課の担当官がパソコンのキーボードをたたく。出て来た画面には。

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福岡県警サイバー犯罪対策課 担当官:
ここ(画面上)にURLが記されてあるんですけども、通常、日本のサイトだと、URLの最後が「.jp」になってることが多いんですけど…、「gr」って記されてあるんです。あんまり見たことがないドメイン名になっています

一見、よくある通販サイトのようだが…。

福岡県警サイバー犯罪対策課 担当官:
「通常価格1万4,200円」のところを消されまして、現在の価格は「1万1,360円」と結構、安くなっています。ある一定の条件がないと、こういう表記はできないように法律上なっていますので、こういうところは(捜査上の)ひとつのポイントとなります

この会社概要には、従業員数が195人とある。そこで本社とされる青森の住所を検索してみると画面に出て来たのは一軒のアパートだった。

福岡県警サイバー犯罪対策課 担当官:
(住所検索で)出てきたのは、このアパートですね。こんなところに多分、このショップはないんじゃないかなと私は思います

とても従業員が195人も居るようには見えない。

福岡県警サイバー犯罪対策課による、サイバーパトロール。サイバー犯罪対策課が、違法な詐欺サイトと判断した場合、閲覧防止の措置がとられることになる。

知識をつけるためサイバー捜査研修

サイバー捜査のポイントは隠されたデータを明らかにすることだ。

そんな中、サイバー課が重要視しているのが、県警本部や各警察署の別の部署に所属する警察官へのサイバー捜査研修だ。インターネットが関わる、あらゆる犯罪に“オール県警”で対応しようという狙いがある。

この日の内容は応用編で3人1組、1時間で10問の課題に当たる。

パソコン上のラーメンの画像から、店の名前と住所を特定するという課題では、「緯度…経度…、356635…、(場所特定!)」と、画像データが撮影された緯度と経度を読み取って地図上に打ち込み、見事、ラーメン店を導き出すことに成功。

参加した警察官:
交番業務でもサイバー犯罪に関して問い合わせがあったりするので、インターネットの知識とか、もっと深堀りしていったら、こういった捜査にもつなげることができるんだなと

参加した警察官:
いままで自分が見逃していたかもしれないところとかに、もしかしたらヒントが隠されているかもしれないという

担当官に教わりながら記者もとあるサイトでのログイン認証を突破するといったサイバー捜査研修の問題を解いてみた。

担当官:
右クリックを…、このウェブページのソースを見ていただきたいんです。これが、このウェブページがどういうふうに表示されて、どんな動作をすると、どういったコマンドを出すかといったところを書いてる文書になります

記者:
「ID:FUKUOKA」とあります、これですか?

担当官:
そうです。(サイバー捜査では)ウェブサイトもそうなんですけども、データですね、見れるところは見るという

複雑・高度化していくサイバー犯罪

福岡県警のサイバー犯罪対策課が8月、神奈川県に住む25歳の男を逮捕。

毛利拓也記者リポート:
男はスマートフォンなどを使い、女の子のSNSのアカウントに不正にログインし、わいせつな動画を送るよう強要するなどの行為を繰り返していました

男は、福岡県内に住む女子中学生のインスタグラムに不正にログインし、個人情報を盗み取り、「個人情報をさらすぞ」などと脅して、わいせつな動画を要求したとされている。サイバー課が、アメリカにある運営会社に女子中学生のアカウントへのログイン記録の開示を求め、男を逮捕した。

県警によると、詐欺や悪徳商法、不正アクセスといったサイバー犯罪の相談件数は、ここ数年、右肩上がりに増加していて、2023年も6,000件を上回った。2022年とほぼ同じペースで推移しているという。

2023年に入り、被害が急増しているサイバー犯罪がある。

福岡県警サイバー犯罪対策課・的野史孝次席:
フィッシング行為によって、ログイン情報を抜き取られて、それを元にインターネットバンキングに不正アクセスされて、預貯金を送金されてしまうと

インターネットバンキングを悪用し、口座番号やパスワードを盗み取って不正に送金する「フィッシング詐欺」。銀行を装った犯人から送られてきた「ログインして情報を確認してほしい」というメールのURLをクリックすると、本物とうり二つの偽物の画面に移る。この画面で、口座番号やパスワードを入力してしまうと…。

福岡県警サイバー犯罪対策課・的野史孝次席:
ログインしたら、この犯人側に情報が送られるというプログラムで、ここにもう既に送ってきてます。これがどうなるかといいますと、本物のサイトで抜き取った情報を元に犯人が不正アクセスをする

県内では、このようなフィッシングによる不正送金の被害が7月末の時点で、2022年と同じ時期の20倍を超える100件余り発生。その被害総額は1億円を超えていて、サイバー課が対策を強化している。

福岡県警サイバー犯罪対策課・的野史孝次席:
サイバー犯罪は複雑…、しかも高度化しているという印象は受けます。県警全体のサイバー犯罪に対する対処能力を高める、そして関係各課がいままで以上に連携を強化して、被疑者検挙に向けて強力に捜査を進めていく

私たちの生活に欠かせなくなっているインターネット。無限に広がるその空間でサイバー犯罪対策課はきょうも捜査を続けている。

(テレビ西日本)

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