3月26日からアメリカ・ボストンで行われた世界フィギュアスケート選手権。

初出場の佐藤駿は、全体6位で2026年2月に行われるミラノ・コルティナ五輪の出場枠3枠獲得に貢献した。

渾身(こんしん)のガッツポーズが飛び出した裏には、世界王者・宇野昌磨さんの存在があった。

悔しさを味わった全日本選手権

24-25シーズンの佐藤は、波に乗っていた。

GPシリーズ初優勝、そしてGPファイナルでも世界王者のイリア・マリニン(アメリカ)、同級生で日本のエース、鍵山優真に次ぐ、3位と結果を残し、初の世界選手権代表をつかんだ。

しかし、“日本一”だけを狙って挑んだ年末の全日本選手権で佐藤に試練が訪れる。

バックステージで涙を流す佐藤駿(2024年全日本選手権)
バックステージで涙を流す佐藤駿(2024年全日本選手権)
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日本の現役選手で佐藤だけが跳ぶことができ、今季高い成功率を誇った4回転ルッツをショートで転倒。巻き返しを誓ったフリーでもジャンプのミスが響き、まさかの7位で終えた。

「練習でできていたものが試合で出せない…」さらに全日本でのトラウマは、世界選手権が近づくにつれて夢に出てくるほど、不安がのしかかっていた。

復活のカギはアクセルとトゥループの完成度

そんな佐藤のもとへ取材に向かったのが、世界選手権2連覇の宇野昌磨さんだ。

必死に上達しようとする佐藤の姿に宇野さんは、自身の現役時代と重ねて自然とアドバイスを送っていた。

世界選手権前、佐藤の練習を見学する宇野昌磨さん
世界選手権前、佐藤の練習を見学する宇野昌磨さん

その取材中には佐藤のコーチ・浅野敬子さんに逆取材を受けた宇野さん。

「一番大事なのはアクセルとトゥループ。この2本の練習に7割くらい時間を使っていて、ほぼ100%になれば他の高難度ジャンプに集中できる」など、現役時代の練習方法を熱心に伝授していた。

宇野さんからのアドバイスを真剣な表情で聞く佐藤
宇野さんからのアドバイスを真剣な表情で聞く佐藤

対談では、悩んでいる「メンタルの弱さ」を打ち明けた佐藤に、宇野さんは「失敗するならこい!くらいの気持ちで」とアドバイスし、宇野さんが現役時代に感じた体験談とともにエールを送った。

「僕は失敗を恐れていた。変えていけたら、メンタル強くなれるかな。緊張せずに本番臨めると思う」と宇野さんの金言は、佐藤の考えや気持ちを変えていく。

この対談を受けたあとから、佐藤の練習に変化があったという。

それから約1カ月、ついに世界選手権デビューの時を迎える。