7月20日、全国の新型コロナの感染者が15万人を越え、過去最多となりました。政府は「ウィズコロナ」の新対策の柱の一つとして「検査のさらなる活用」を打ち出したものの、実際には今、「検査を受けられない」という声が続出しています。
そんな中、新型コロナ対策の切り札と期待されている、初の国産飲み薬の承認が見送られました。

感染者数 30府県で過去最多…PCR検査に行列 発熱外来も満員に

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20日、全国で確認された新型コロナウイルスの新規感染者が初めて15万人を上回り、大阪や福岡など30府県で過去最多を更新しました。全国の死者が53人、重症者が176人(19日時点)となっています。
東京は2万401人で、過去最多となった2月2日の2万1562人に非常に近い数字に。病床使用率も、13日から10ポイント以上増え、43.5%以上まで上がっています。

同じ20日、東京・新宿にあるPCR検査場には行列ができていました。3年ぶりに行動制限がない夏休みを目前に、帰省やレジャーに行くため、検査を受けに来たという人もいます。
この検査場での検査数は、6月下旬に比べ、この1カ月で約3倍に膨れ上がっているといいます。需要の高まりからか、中には検査をなかなか受けられず、あちこち“はしご”した、という人も。

一方、病院の発熱外来にも長い行列ができていました。埼玉県のふじみの救急病院では、7月11日以降、1日700人を超える人たちが発熱外来を受診。病院内の待合室は、どの部屋も人でいっぱいです。さらに病院の駐車場も、PCR検査を待つ人たちの車でほぼ満車状態。18日には検査数が1200を超え、陽性率も60%を超える状況になったといいます。

新たな行動制限ナシ…「まだまだ増える」8月上旬にBA.5置き換わり完了か

医療体制のひっ迫が懸念される状況の中、行動制限について、後藤厚労大臣は19日、「病床がひっ迫するという事態が見込まれるようになってくれば、行動制限を含む実効性の高い強力な感染拡大防止措置を講ずることになる」と話しました。
一方で翌20日、松野官房長官は「新たな行動制限を行うのではなく、重症化リスクのある高齢者を守ることに重点を置く」と発言。保健医療体制の確保に取り組む考えを示しました。

感染者が急増している理由について、ふじみの救急病院の鹿野晃院長は…

ふじみの救急病院・鹿野 晃 院長:
やはりBA.5の置き換わりですね。BA.5の感染力が高いっていうのと、ワクチンや感染で得られた抗体が効きにくい、免疫をすり抜けていくという特性が大きいと思います。これから8月上旬にかけて完全に置き換わりが完了すると言われていますので、それに伴ってまだまだこれから、陽性者数は増えていくと考えています

国産初の飲み薬「ゾコーバ」BA.5に効果確認も承認見送り

歯止めが掛からない感染拡大。そんな局面を変えるかもしれない“ある薬”の審議が、20日に行われました。

厚生労働省の薬事分科会と専門部会が話し合ったのは、国産初となる飲み薬。塩野義製薬が開発した「ゾコーバ」です。感染初期に1日1回・5日続けて服用するもので、塩野義製薬は「緊急承認制度」の初の適用を求めて申請していました。
6月に行われた会議では「さらに慎重に議論を重ねる必要がある」として、結論が持ち越されていたものです。

塩野義製薬の治験の結果によると、体内のウイルスが投与3回後に90%減少。陰性になるまで1~2日間短縮。そしてBA.4やBA.5にも効果が確認でき、重い副作用はみられなかったということです。
そして20日、再び審議されましたが、有効性などのデータが不十分と判断され、またしても緊急承認は見送りとなりました。

現在、日本で承認されているコロナの飲み薬は「モルヌピラビル」、「パキロビッドパック」の2種類のみ。いずれも製造しているのは海外の製薬会社です。

国産の飲み薬とどう違うのか、専門家は…

琉球大学・藤田次郎 名誉教授:
これまでの2種類の薬は、高齢者でハイリスクの方に使われていました。ですから、社会全体でいうとごく一部の人しか薬が使えないということになります。一方国産の「ゾコーバ」は治験そのものが若い方、20代・30代・40代の、軽症から中等症Ⅰの方を対象にしているので、そこにある程度の効果が得られたということになりますと、社会全体でウイルス量を減らすことができるわけです

国産の飲み薬は、若い人にも使えるため、社会復帰も早くなるはずだと指摘。さらには…

琉球大学・藤田次郎 名誉教授:
(危険度が)インフルエンザと同じだったら解熱して、療養は2日でいいと思ってるんですよ。隔離期間は最初14日でしたからね、濃厚接触者が14日でしたからね

この薬に関しては、先日亡くなった安倍元首相も、自身が率いる派閥の総会で「感染しても薬を飲めば治るということであれば、5類への見直しも加速できるのではないか」と期待を寄せていました。

期待が高い国内初のコロナの飲み薬。なぜ緊急承認が見送りになったのかというと、「同時に使えない薬が多い」「妊婦や妊娠の可能性のある女性に使用できない」など安全性という部分です。

「現時点での治験データは有効性を推定するには不十分」としていて、11月の治験の最終結果を踏まえ、再度審議されるということです。

(めざまし8 7月21日放送)