個性的な動画の配信で爆発的な反響を呼ぶことがあるSNSの世界。そのメリットを駆使しているのは若者だけではない。85歳の干物職人が孫と挑戦した投稿、冬の集客難に悩む著名な料理人の訴えが相次いで拡散し、大きな反響を呼んだ。行政PRやネット販売による売上増、閑散期の予約回復といった成果も生まれるなど、山陰発の意外な動画が人と仕事を動かす実態を探った。

県庁職員が“全力”で子育て支援をPR

島根県の子ども・子育て支援課が解説した公式アカウントより
島根県の子ども・子育て支援課が解説した公式アカウントより
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クラシック音楽に合わせて県の政策を紹介するのは、「こちら島根県庁全力公務員」。島根県の子ども・子育て支援課が2025年10月に開設した公式アカウントだ。

2025年11月に投稿された動画はInstagramでの再生回数135万回を超え、話題となっている。動画では麦わら帽子に首に手ぬぐいをまいた職員が登場する。

麦わら帽子に手ぬぐい姿で職員がPR
麦わら帽子に手ぬぐい姿で職員がPR

「ご成婚された方には、縁結び箸と石州和紙で書かれた知事からのメッセージをお送りします」

担当者自らが県の婚活支援事業をPRする姿は、全力ダッシュに超ハイテンションだ。しかし同僚によると「SNSと普段はギャップがある」という。上司は「普段はおとなしくて穏やかな性格で、人柄が良くて誰とでも話しやすい性格を持っている」と評する。

SNS発信を提案した金築民男さん
SNS発信を提案した金築民男さん

2人の子育て中の金築民男さんは、自身の経験から「県の取り組みや支援策を役立てられたら、子育てがもっと楽になったかも」という思いでSNS発信を提案した。年間予算約200万円、映像制作は外部委託だが、構成やメッセージ内容には積極的に関わっている。

「生の声がSNSを通じて聞けたので、やっていることは間違ってなかったとか、さらにはそういったコメントの中からもっと改善点はこうしていこうとか(政策に)活かせているので、やってよかったなと思う」と金築さん。県民からの反応は上々だ。

85歳“干物ばあちゃん”の「人生最後の挑戦」

"干物ばあちゃん"のアカウント
"干物ばあちゃん"のアカウント

「人生最後の挑戦」。こうつぶやくのは、"干物ばあちゃん"こと和田日出子さん。85歳で、家族が営む浜田市の干物店で今も現役だ。2025年11月に立ち上げたアカウントのフォロワー数は3.7万人。初投稿動画は再生回数195万回と、見事に"バズった"。

「干物のいいところは日持ちができるところ」と話す日出子さん、店では今も元気に魚をさばいている。85歳とは思えない手際の良さだ。傍らでスマートフォンを構えるのは、孫のパーヴィルさん。動画撮影担当だ。

孫のパーヴィルさんが動画撮影
孫のパーヴィルさんが動画撮影

「(フォロワーは)徐々に増やしていけばと思っていたが、急に増えてびっくりしている」とパーヴィルさん。

和田商店は1972年創業。浜田港で水揚げされたのどぐろやサバなどを干物に加工、販売している。しかし近年は「干物離れ」が進み、一時は廃業寸前だったという。この窮地を抜け出そうと始めたのがSNS発信だった。

和田商店(島根・浜田市)
和田商店(島根・浜田市)

「一番初めは何をするのかわからなかった。『ばあちゃん、こうしてこうして』…というような感じでね」と日出子さん。

慣れない撮影に不安だったが、動画投稿のおかげで注文も増加。ネット販売などでの売り上げは、わずかひと月で前年同月の10倍を超えたという。

干物の魅力発信続ける“干物ばあちゃん”
干物の魅力発信続ける“干物ばあちゃん”

「(干物は)焼くと煙が出るとかみんなに嫌われると思うけど、焼いて食べたらおいしい」と日出子さんは干物の魅力を発信している。「90歳まで働きたい」と意気込んでいる。

雪国にたたずむ名店 SNSで「店が潰れます」窮地訴え

日本料理店「和彩空間たち花」の公式インスタグラムより
日本料理店「和彩空間たち花」の公式インスタグラムより

「助けてください。皆様の協力がないと、この冬で私の奥出雲の店は維持できなくなります」

Instagramでこう訴えたのは、島根・奥出雲町で日本料理店「和彩空間たち花」を営む立花秀明さん。

「1月、2月、3月というのは奥出雲って雪で閉ざされてしまいまして。ほとんどお客さまが来てくださらなくて」

立花さんの胸の高さまである雪
立花さんの胸の高さまである雪

奥出雲町では例年冬場に50センチほどの積雪がある。2025年2月には立花さんの胸の高さまで雪が積もり、予約の9割がキャンセルに。2008年の開業以来、冬場の客足対策に悩んできた。

そこで考え出したのが積雪シーズン限定の「お引っ越し」。雪の少ない松江市に期間限定で移転することにした。そのPR動画には2万以上の「いいね」がつき、予想外に"バズった"。

「まさか、あそこまでバズるとは」と立花さん。

「料理マスターズ」に選出
「料理マスターズ」に選出

急遽決まった松江移転は2025年の年末に決定し、準備は急ピッチで進んだ。立花さんは農林水産省の「料理マスターズ」に選ばれた実力派。JRの豪華寝台列車「瑞風」の料理も監修している。

「この緊張感を最後まで続けられるように頑張りたいと思います。皆さんに知っていただいて奥出雲のほうにも足を運んでいただきたい」と“お引っ越し”効果に期待を寄せる。

松江市で季節限定営業「たち花」
松江市で季節限定営業「たち花」

松江市での営業は3月末まで毎日続ける予定だ。

意外な人たちの発信から見えるビジネスチャンス

SNS動画は若者だけのものではない。山陰発のこれらの事例からは、年齢や職業を問わず、個性的な発信が共感を呼び、新たなビジネスチャンスにつながる可能性が見えてくる。意外な人たちの意外な投稿から、あなたも意外なビジネスのヒントが見つかるかもしれない。

(TSKさんいん中央テレビ)

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TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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