東京・JR品川駅から歩いて数分の場所に東京都中央卸売市場食肉市場がある。ここから出荷される牛肉や豚肉は「芝浦ブランド」と呼ばれ、国内はもとより、海外でも認知度が日々向上している。

いま、「芝浦ブランド」を世界のブランドにしようと、東京都は大規模な設備更新やブランドのPR作戦を展開している。

高品質・安全・新鮮

芝浦ブランドが人気を博す理由は、「高品質」「安全」「新鮮」の3つのポイントがある。

高品質なのは、全国から上質な肉が集まることと、食肉処理の技術レベルが高いからだ。芝浦の取引価格は全国の目安となっているため、上質な肉が全国から集まる。安全管理体制を徹底し、牛や豚1頭ごとに獣医師が肉に異常がないか検査を行う。

東京都中央卸売市場食肉市場
東京都中央卸売市場食肉市場
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そして、芝浦ブランドのもっとも重要な要素の1つが、作業員の匠の技とも呼べる技術力の高さだ。枝肉へ作業工程で最も難しい、巨大な電動のこぎりを扱う背割り作業は、誤差1ミリ単位で肉そのものの価値・価格が変わってしまうため、極めて高度なテクニックを必要とする。芝浦では、都に採用された作業員が、技を磨き、上質で新鮮な肉を日々出荷している。

1966年に開場

食肉市場ができたのは1966年。施設や機器の更新は随時行われているが、今後、大規模な改修を行う必要がでてきそうだ。

東京都中央卸売市場食肉市場の周りには高層ビルが建ち並ぶ
東京都中央卸売市場食肉市場の周りには高層ビルが建ち並ぶ

現地にいってみると、市場の周りは真新しい高層ビルに囲まれていた。市場の中に入って驚いたのが、多数の牛や豚がいるにも関わらずほとんど匂ってこない点だ。周辺に配慮して、極力匂いがでないような対策を講じているという。

白衣を着た食肉処理の作業員や検査員のほか、卸売り業者や肉の等級・格付けを行う担当者が市場内で働いている。建物の周りは、仲卸業者のトラックがひっきりなしに往来している。場内には食肉市場の歴史などを学べる「お肉の情報館」があり、都内の小学生が学びにきている。

全国の“牛児”が肉の品質を競う「和牛甲子園」

様々な業種で問題となっている人手不足は食肉関係でも同様だ。そうした状況下で、市場関係者たちに希望を与えているのが、JA全農が主催する「和牛甲子園」だ。

全国にある農業高校の畜産学科などに通う高校生が育てた和牛が集まり、日ごろの和牛飼育の取り組みを発表し、その成果としての枝肉の肉質を競い合う大会が行われている。

和牛甲子園のHPより
和牛甲子園のHPより

参加する高校生たちのことを、大会では「球児」ならぬ「牛児」と呼び、「牛児」がそれぞれの飼育体験を披露、肉の品質を競い合うというものだ。

2026年で9回目を迎える和牛甲子園では、牛を育てる高校生たちの熱い思いが語られる場面が食肉関係者の間でも人気が高い。次世代を担う若者たちの姿をみて、初心に帰るひともいれば仕事への誇りを感じる人もいるという。

「芝浦ブランド」を世界のブランドに

和牛など神戸や仙台など産地をブランドにする場合が多いが、ホルモンなどの部位は、芝浦ブランドが国内では定着している。

東京都中央卸売市場食肉市場の市場棟1階
東京都中央卸売市場食肉市場の市場棟1階

東京都中央卸売市場管理部の市場政策課食肉事業推進担当課長、菅井淑章さんは「芝浦ブランドについては、東京都と市場関係団体で構成する推進協議会が中心となり、安全性や衛生管理、公正な取引、安定供給といった市場の強みを国内に向けて継続的に発信している。今後は、輸出への取組みを進めていくなかで、芝浦ブランドの信頼と認知の向上に努めていく」と話す。

芝浦ブランドが和牛と同様に世界で認知される日も近いのかもしれない。
(フジテレビ社会部 大塚隆広)

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。