福岡県中間市で3歳の男の子が両親に虐待されて死亡したとされる事件。
なぜ周囲は気づくことができなかったのか。
取材で見えてきたのは「無園児」の存在だ。

愛翔ちゃん:(2020年2月 生活発表会)
できるかな~?

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2020年2月、福岡県八女市の保育園で開かれた「発表会」。
ステージに立って大きな声で発表する男の子が末益愛翔ちゃんだ。

愛翔ちゃん:(2020年2月 生活発表会)
まなとです!

元気いっぱいの様子から半年…
3歳の幼い命は失われた―

事件が起きたのは2020年8月。
愛翔ちゃんの頭を複数回殴ってけがをさせた傷害の疑いで、警察は義理の父親の末益涼雅容疑者(23)を逮捕。
その約2週間後に愛翔ちゃんは亡くなり体には複数の痣が残されていた。

涼雅被告と妻の歩被告(22)は愛翔ちゃんの口にペット用トイレの砂を入れるなどした疑いでも逮捕・起訴され、警察は夫婦が共謀して暴行を加えた結果、愛翔ちゃんを死なせたとみて捜査を進めている。

事件はなぜ起きたのか?

愛翔ちゃんは、もともと八女市の歩容疑者の実家で生活。
3歳までの乳幼児検診などで”虐待”が疑われることはなかった。

異変が起き始めたのは2020年5月。
歩容疑者が涼雅容疑者と結婚し、中間市で暮らし始めた頃だった。

捜査関係者:
(涼雅容疑者は)入籍前は優しかったが、入籍してから豹変した経緯がある

愛翔ちゃんと血縁関係が無かった涼雅容疑者。
「子どもの些細な行動に腹が立った」と供述している。

末益涼雅容疑者:
寝る時間になっても、いつまでも寝ないで腹が立った

再婚などで血縁関係のない親子を巡る”虐待”事件について、医師は一般的に「或る傾向」がみられると指摘する。

市立八幡病院小児救急小児総合医療センター・神園淳司医師:
亡くなるほどのとか、程度が強いといった時に、義父=血が繋がってないが、お父さんとして新たに家族に入ったような方が加害に入るパターンは多い

なぜ周囲は異変に気づけなかったのか?

愛翔ちゃんの異変について、中間市や児童相談所などに事前に情報は入っていなかった。

近くに住む人:
子供とか、結婚してるとかも知らんかったし

周辺に住む人は、愛翔ちゃんの姿を見ることは殆ど無かったと話す。
当時、愛翔ちゃんは保育園に通っていないいわゆる「無園児」だった。

北里大学・可知悠子講師:
(無園児は)低所得の家庭とか兄弟の多い多子家庭とか、外国籍の家庭とか、社会経済的に不利な家庭に多い傾向にありました。(保育園に)通っていれば早く気づいて命は救われた可能性があります

外部から家庭内の様子を知るのが難しいとされる「無園児」。
虐待の被害にあっていた場合に、早期に発見する仕組みを社会全体でつくっていく必要があると専門家は訴える。

市立八幡病院小児救急小児総合医療センター・神園淳司医師:
やはり医療だけでは虐待の問題は片付かなくて、行政・社会の目が必要だし、支援をするという目が、気持ちが、伝わらない限り、この子たちを救えないと思います。児童相談所側からいえば、電話一本を待っている

現在、3歳以上で保育園などに行っていない「無園児」の子供は、全国で14万人いるとされている。

(テレビ西日本)

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