毎年1月の第3日曜日に開催される、新年恒例の伝統行事「敦賀西町の綱引き」。今週末が開催日に当たりますが、今年は担い手不足などを理由に中止となりました。400年の歴史があるとされる伝統行事をどう続けていくか、昭和101年に考えます。
「綱がこの交差点の少し手前まで来る。この辺にずらっと人が集まっていた」
こう話すのは「敦賀西町の綱引き」を運営する伝承協議会の木下章会長(81)です。
「こっち側が、夷子さん。ほんで向こう側が大黒さんやね」
福井テレビには、昭和30年代の映像が残されていました。
<当時のナレーション>
「太鼓を合図に、重さ380キロの大綱が切って落とされ、農民と漁師の“力比べ”が…通りいっぱいに人があふれ、その表情からは熱気が伝わってきます」
江戸時代には市場や商店が並び、敦賀の“台所”として栄えた西町エリア。綱引きも江戸時代に始まったと伝わります。
漁業者が東の「夷子」、農業者が西の「大黒」に分かれて綱を引き合い、夷子が勝てば豊漁。大黒が勝てば豊作になるとされる敦賀市民にとってなじみが深い伝統行事です。
1986年(昭和61年)には、国の重要無形民俗文化財に指定されました。
しかし去年12月、伝承協議会は今年の“開催中止”を発表しました。
木下会長は「今まで中心になっていた人たちが、仕事の関係で要員を出せないということで、素人だけでやってもいいが…事故が起きると大変だから」とやむなく中止した事情を明かします。
長さ50メートル、太さ25センチの大綱作りの作業には、熟練した技術が必要となります。今年はその大綱作りで中心的な役割を担ってきた人材を確保できなかったといいます。
また、開催にかかる協賛金の多くは木下会長が集めていましたが「自分が動けるときはさほど思わなかったが、(年を重ね)動きが悪くなっているのを自覚するようになると、逆に迷惑かけていないかな、と。もう少し若い人が継いでくれないかな…」と先行きに不安を感じています。
伝承協議会の寺田徹也事務局長(62)も、いま強く感じている課題があります。「特定の人に頼り切るというか、特定の人だけが動くと、それが伝承されないと反省している」
“当たり前”に、長く続いてきた行事。ただ、ここ10年は時代の流れに翻弄されています。
実は9年前の2017年(平成29年)にも、担い手の不足を理由に、中止に。この時、新たにまちづくり団体や商工会議所など8つの団体が「伝承協議会」を設立し、その翌年にはすぐに復活させました。当時の木下会長は「継続して年始めの行事として頑張りたい」と話していました。
しかし…令和に入り、2021年(令和3年)から3年間は新型コロナにより中止に。
敦賀市民はー
「寂しい。すぐ近所に住んでいたのでよく行っていた」
「本当は開催してほしい。人手も不足するしだんだんと難しくなっていくのでは…」
「若い人がいないから仕方ない。クラウドファンディングでもすればいいのに」
寺田事務局長は「国指定の無形民俗文化財なので、守るためには『西町』という地域だけではなく、『敦賀市』で作っていくような祭りでないと。若い人に伝承を手伝っていってほしい」と話します。
今月の敦賀市長の定例会見で米澤市長は「本当に残念。市としてバックアップを伝承協議会と相談し来年の復活を目指したい」との考えを示しています。
全国的に人口減少と高齢化に直面し、敦賀の綱引きだけでなく、さまざまな地域の伝統の“あり方”が難しくなっています。
伝承協議会・木下会長は中止について「正直な気持ち、ホッとしている」とも語っています。けが人が出る不安やリスクも感じており、重責もあるのです。
行政支援だけで解決する問題でもなく、解決の“特効薬”はありません。まずは、じっくりと広く話し合っていくことが必要で、「分担」や「地域を超える」など、子供を含めた「まちの誇り」が、継続の“ヒント”の一つと言えそうです。
伝承協議会は6月ごろに開かれる総会までに市の担当者も含め、今後の体制を検討したいといしています。