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2025年4月13日~10月13日まで開催された2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)。会期中は累計来場者数2,900万人超を記録し、成功裏のうちに幕を閉じた。この成功に貢献した企業の1つがNECだ。NECは世界最高水準の顔認証技術を駆使し、入場管理から顔認証決済、未来体験まで、来場者に新しい価値を提供した。しかし、国内最大規模の顔認証システム運営は容易ではなかったという。どんな課題があり、どう乗り越えたのか。そしてこの挑戦がどんな未来を切り拓くのか――プロジェクトの舞台裏をキーパーソンたちに聞いた。

入場管理・顔認証決済・未来体験――NECが担った3つの挑戦

大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」。一人ひとりが望む生き方を考え、その可能性を最大限に発揮できる持続可能な社会を共創するという思いが込められている。158の国と地域、7つの国際機関が参加し、180を超える多彩なパビリオンが出展された。


この大阪・関西万博の成功に、世界No.1の精度を誇る(注1)顔認証技術で貢献したのがNECだ。NECが取り組んだプロジェクトは大きく3つある。1つ目が「万博会場への一般来場者入場管理」、2つ目が「会場内店舗での顔認証決済」、そして3つ目がシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」での未来体験を支える「FaceVC」である。ここからはそれぞれのプロジェクトの舞台裏を深掘りしていきたい。

顔認証入場の登録数は国内最大規模の70万ID超

大阪・関西万博の来場者数は、会期終盤には1日20万人を超える日が少なくなかった。これだけの規模の来場者がスムーズに入場するためには、安全・安心で効率的な本人確認の仕組みが必要だ。通期パス・夏パスのチケット購入者は有効期限中、同一チケットで何度でも入場できるため、チケットの貸し借りなどによるなりすましの懸念もある。


「2つの観点から課題解決を図る手法として顔認証技術が候補に上がり、2025年日本国際博覧会協会が最終的に導入を決めたのがNECの顔認証システムです」とバイオメトリクス・ビジョンAI統括部の小田 崇博は語る。


NEC プラットフォーム・テクノロジーサービス事業部門

バイオメトリクス・ビジョンAI統括部 ディレクター

小田 崇博


顔認証による入場管理は通期パス・夏パスのチケット購入者を対象とし、東西ゲートで計51箇所の入場レーンに顔認証システムを導入した。通期パス・夏パス購入者は事前に顔情報の登録を済ませておき、来場時はチケット記載のQRコードをゲートにかざした上で、カメラに顔を向けて追加確認を行う仕組みだ。


QRコードをかざし、顔を向けるだけなので、手間をかけずスムーズな入場が可能だ(図1)。「カメラに顔をかざして認証が完了するまでの時間は本当に一瞬です。大変な混雑が予想される入場ゲートにおいて、NECの顔認証システムはタイムラグのない確実な本人確認でなりすまし防止と混雑緩和に貢献しました」と交通ソリューション統括部の杉本 朋哉は語る。


NEC トランスポート・サービスソリューション事業部門

交通ソリューション統括部 主任

杉本 朋哉


顔という生体情報で確実に認証するため、本人以外の不正入場も防止できる。「会期中の顔画像登録数は70万ID超、顔認証入場回数はのべ600万件を超えた。これはNECの国内における顔認証提供事例として最大規模です」(小田)。


図1 入場ゲートの様子 ※「万博おばあちゃん」こと山田外美代様取材時(2025年6月)

入場ゲートに設置されたカメラに顔をかざすと、事前に登録した顔情報と瞬時に照合が行われ、本人かどうかを識別する。認証精度を確保するため、カメラの高さや向き、角度などを何度も調整した。


システムは誤作動なしで、会期中は安定的に稼働を継続した。「顔情報を登録した正規のチケット購入者が正しく判定されないという誤検知は会期中、ゼロでした。正規のチケット購入者以外が入場しようとしたケースも本人ではないと“正しく”判定しました」と金融システム統括部の引田 雅之(万博会期中はトランスポート・サービスシステム統括部所属。会期後に現職)は述べる。


NEC 金融ソリューション事業部門 金融システム統括部

ディレクター兼シニアSIサービス主管

引田 雅之

正しく顔認証するための調整に尽力

「エラーゼロ」をどう実現したのか。その裏には事前の綿密な準備と現場の適切なサポートがあった。


QRコードの読み取りは別のシステムが行うため、他ベンダーとの連携作業が不可欠となる。そのため会期前から他ベンダーと連携・協力して稼働の正常性を確認していったという。実際の顔認証方法も試行錯誤の連続だった。認証自体は秒単位で行えるが、カメラに正対し、顔全体がはっきり画角に収まっていることが条件となる。イベントの性質上、子どもや高齢者、背の高い人や低い人、外国人など多種多様な方が対象者となる。「どんな人でも問題なく顔認証できるように、カメラの設置場所や向き、角度などをいろいろ変えてシミュレーションを重ねました」と引田は打ち明ける。


準備を進める中、急な条件変更も発生した。当初は午前11時からの入場予定だった通期パス・夏パス購入者を前倒しで入場できるようにしたのだ。これによって新たな調整が必要になった。時間帯によって日照が変わるからだ。逆光や白飛びした画像では認証精度に影響する。「11時以降の日照条件で調整していましたが、時間帯を変えて、再びシミュレーションを繰り返し、最適な条件を決めていきました」と小田は述べる。


 万博会場における実際の現場では、現地スタッフが丁寧にサポートした。「認証がうまくいかない場合はカメラに近すぎたり、正面を向いていなかったりするケースがほとんど。一緒に訪れた家族が横に並んでいたり、隣や後ろの人の顔が写り込んでしまったりするというケースもありました。大規模なイベントでは現場のサポートがとても重要になることを痛感しました」(引田)。こうしたきめ細かな対応により、期間中ひっきりなしに入場する来場者の顔認証に大きな混乱はなかったという。


カメラの前に立てば、顔認証は秒で終わる。「顔認証を初めて経験したおばあちゃんが、『こんなに早くできるの』と本当に驚かれていたのが印象的でした」と杉本は振り返る。


多くの来場者に未来体験を提供した「顔認証決済」

NECはゲートの入場管理に加え、会場内のショッピングを手ぶらで行える「顔認証決済」 の仕組みも提供した。これは、さまざまなキャッシュレス決済に対応した決済端末機「stera terminal standard(ステラターミナルスタンダード)」との組み合わせで実現したもの。決済手段は万博独自の電子マネー「ミャクペ!」かクレジットカード決済を選べる。会場内の多くの店舗が対応した。


「多くの来場者様に顔認証決済をご利用いただき、独自電子マネーが顔認証とひも付く事例としては国内最大規模です(注2)」とデジタルファイナンス統括部の加藤 麻理奈は説明する。


NEC 金融ソリューション事業部門

デジタルファイナンス統括部 主任

加藤 麻理奈


利用者はショッピングの際、現金もスマートフォンもクレジットカードも使う必要がない。stera terminal standard搭載のカメラに向かって顔をかざすだけだ(図2)。荷物で両手が塞がっている、子どもの手を放すことができないといった状態でもショッピングを楽しめる。


図2 顔認証決済の利用シーン

事前に登録しておけば、stera terminal standardに顔をかざすだけで決済が可能になる。利用者にとって便利なだけでなく、オペレーションを効率化できることから店舗スタッフにも好評だ。利用者と店舗側の双方に新しい体験を提供できる。


「皆さんが口を揃えておっしゃったのは『とにかく早い、便利』ということ。ある店舗スタッフの方から伺ったのですが、現金の場合お客さま一人当たりの支払いに要する時間は平均2分ほどだそうですが、顔認証決済ならそれが体感30秒に短縮できたように思ったそうです」と加藤は述べる。

二要素認証でより強固なセキュリティを実現

高精度な顔認証技術に基づく顔認証決済は、なりすましや誤検知のリスクは限りなくゼロに近い。しかし決済手段として使うため、安全性には万全を期して二要素認証を導入した。これによって高い認証精度と利便性を両立したわけだ。

「まず顔認証の照合結果をスコアで示します。高スコアで照合されれば問題ありませんが、何らかの理由で基準に満たない場合は、登録時に付与した4桁の顔決済コードを入力していただきます 」(加藤)。

 

stera terminal standardを用いた顔認証決済は既存のPOSシステムとも連動しており、店舗はPOSの購買履歴データをこれまで通りに取得・活用できる。既にstera terminal standardを導入していれば、アプリケーションのインストールや初期設定だけで顔認識決済に対応できるという。

この便利さは店舗側に非常に好評だった。「お客さまに新しい体験を提供しつつ、店舗オペレーションも効率化・高度化できると大きな期待を寄せています。顔認証決済の可能性の大きさを改めて実感しました」と加藤は語る。


未来社会を垣間見る「null²」の体験

大阪・関西万博ではデジタル社会の未来を先取りした展示にも高い注目が集まり、多くの来場者で賑わった。その1つが、メディアアーティストの落合陽一氏がプロデュースしたシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」だ。



ここではアートとテクノロジーが融合した近未来な空間が演出されている。内部は床から天井、前後左右に鏡面状あるいは映像表示可能な構造を備え、一歩踏み入れると自分自身が映し出され、現実とデジタルが交錯する体験が始まる。やがてその中央に配置されたLEDディスプレイに来場者のデジタル上の分身「Mirrored Body®(デジタル上の分身)」(注3)が現れる。あらかじめ趣味・嗜好などを設定したデータを基に、AIや3Dスキャン技術により生成されたこのMirrored Bodyが来場者と対話する。


「その場に実在する人ではないが、確実に“この人自身”の分身である」と感じられる体験――それがnull²の世界観だ。リアルとデジタルが表裏一体となる新たな空間。ここから、生身の人間が身体を拡張し、Mirrored Bodyがデジタル空間で自律的に振る舞う可能性が浮かび上がる。


Mirrored Body画面

「FaceVC」技術でnull²の世界観に貢献

リアルとデジタルが一体となる時、重要になるのが本人の真正性確認だ。Mirrored Bodyはデジタル上の分身であり、リアルでもデジタル世界でも確実に本人性を担保する仕組みが求められる。NECは顔認証技術をベースにその仕組みを構築し、null²の世界観に貢献した。それが「FaceVC」である(図3)。


図3 FaceVCの仕組みと活用領域

FaceVCは、顔認証で確認された本人の顔情報を付帯した、検証可能なデジタル証明書である。本人はこの証明書を自らのウォレットに保管し、必要なときに提示することで、自身の「本人であること」を安全かつ確実に証明できる。これにより、デジタル上でも信頼性の高い本人確認が可能となる。


従来のデジタルIDは、企業やサービス提供者が発行・管理する中央集権的な仕組みであり、本人が自分の情報の扱いや提示の範囲を自由に制御することは難しかった。FaceVCは、本人確認の結果を本人自身が保持し、必要な場面で自ら提示できる形にすることで、個人が自分の証明を主体的に扱える新たなモデルを提示している。こうしたアプローチは、自己主権型アイデンティティを支える重要な要素の1つである。

「FaceVCは、単に本人確認のための技術ではなく、“自分で自分を証明できる”という体験を支える技術です。Mirrored Bodyのようなデジタル空間だけでなく、さらには金融・行政・医療など多様なサービスの中でも、本人性を軸とした信頼の形を拓いていける可能性があります」とバイオメトリクス・ビジョンAI統括部の前田 浩志は説明する。


NEC プラットフォーム・テクノロジーサービス事業部門

バイオメトリクス・ビジョンAI統括部 プロフェッショナル

前田 浩志


それではFaceVCによってどんな価値が生まれるのか。価値の1つとして、本人性の信頼を基盤に、データの真正性を維持しながら業務やサービスの効率化を後押しできる点がある。本人確認の結果を検証可能な証明書として発行し、本人が自ら保有・提示することで、あらゆるやり取りの前提となる「この人が確かに本人である」という信頼を、よりシンプルかつ安全に担保できる。


これにより、個人情報の更新や引き継ぎ、各種登録といった手続きを効率化できるだけでなく、データのやり取りそのものの正確性と信頼性を高めることができる。さらに、FaceVCを活用することで、個人を起点としたデータ流通が可能になり、従来のように組織が管理するID体系に依存しない新しい信頼モデルが生まれる。


「今後は、さまざまなデジタルサービスに対して、FaceVCによる本人性の担保とVCとの組み合わせによる社会実装を進めていきたいと考えています。デジタル上で“自分であることを安心して示せる”、そして“他者からも信頼される”――そんな仕組みを支える技術として、FaceVCをさらに発展させていきたいですね」(前田)。


null²の世界観を支えたFaceVCは、本人性を軸に信頼性と利便性を両立させる技術として、今後のデジタル社会において大きな可能性を秘めている。

獲得した“レガシー”を糧に社会実装を加速

「いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」をテーマとする大阪・関西万博は、さまざまな社会課題の解決を検討・実践していく「未来社会の実験場」という側面も持つ。


NECは世界最高水準の顔認証技術をベースに新たな体験価値を提供し、万博会場において社会課題の解決に向けた実証と実践に取り組んだ。その経験と培った知見、ノウハウは大きなレガシーである。


また、大阪・関西万博という国家的なイベントに部門を超えて取り組むことができたのもレガシーの1つといえる。入場管理プロジェクトは、NECの交通ソリューション統括部を中心に部門横断で取り組んだ。決済側のシステムとも連動させる必要があったため、金融部門とも密に連携しながらプロジェクトを進行していったという。「社内の複数部門を取りまとめ、他ベンダーとも連携するというプロジェクトはNECにとって大きな挑戦でしたが、得たものも大きい。この経験を活かし、駅の改札で顔認証によるキャッシュレス・チケットレス入場を実現するなど、日常生活にも顔認証を広げていきたいと考えています」と杉本はこの先を見据える。


顔認証決済の利便性と可能性にも大きな期待を寄せる。店舗だけでなく、学校、商業施設、アミューズメント施設など幅広い分野で利用できるからだ。「対応する店舗や施設が増えれば、一度登録するだけで、どこでも顔認証決済が可能になる。私自身、そんな世界を早く体験してみたいです。利用者や店舗スタッフからダイレクトな反応をいただけたし、期待の大きさもわかったので、社会実装に向けたモチベーションアップにつながりました」(加藤)。


先に触れたようにnull²の世界観を支えたFaceVCもさまざまな分野で活用が可能だ。前田はデジタル空間における信頼関係の醸成に役立つと考える。「誰がどのような発言や行動をしているか容易に特定できるため、フェイク情報や不正取引などを抑止できる。デジタル社会の健全な発展につながるでしょう」と期待を込める。


万博は閉幕したが、その成功譚とともにNECのプロジェクトも“レガシー”と呼べる成果を残した。顔認証技術の可能性も大きく広がった。NECはここで培った経験と知見を活かし、価値創造モデル「BluStellar」にさらに磨きをかけ、安全・安心で確かな技術の社会実装とそれによる社会課題の解決を強力に推進していく考えだ。


注1:

米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証ベンチマークテストでこれまでにNo.1を複数回獲得。NISTによる評価結果は米国政府による特定のシステム、製品、サービス、企業を推奨するものではありません。

https://jpn.nec.com/biometrics/evaluation/index.html


注2:

実装・運用段階における顔登録者数、顔決済利用店舗数 などを踏まえた発表時点、NEC調べ。


注3:

Mirrored Bodyは株式会社サステナブルパビリオン2025の登録商標です。





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