2025年、大阪を大いに盛り上げた大阪・関西万博。
万博効果もあり、2025年に大阪を訪れた外国人観光客はおよそ1600万人と過去最多に。開催中のホテルの稼働率も、平均およそ80%と全国1位だった。
「万博は今もまだホテルにいい影響をもたらしています。万博期間中に初めて宿泊した人が、リピーターとなり次の予約につながっています」とセントレジスホテル大阪のルナ・バズラチャリャ総支配人は話す。
万博によって上昇気流に乗った大阪だが、その勢いをさらに加速させるための“あるビッグプロジェクト”が今、着々と進んでいる。
それは2030年、夢洲に”日本初”となるIR=カジノを含む統合型リゾートを開業し、年間2000万人を呼び込もうという壮大な計画だ。
■開業は5年後 建設現場では「メインの建物の曲線部分」らしきもの
開業を5年後に控え、今、建設予定地はどうなっているのか。吉原功兼キャスターが最新状況を空から緊急取材した。
吉原キャスター:1周2キロの大屋根リングの横に広がっているのがIR。万博と同じぐらい、あるいはそれ以上の敷地の広さということになりそうです。
本格的な工事は、今年4月に始まったばかりで、まだ建物はできていないが、IR完成イメージと現地を見比べると「あそこかな、このアーチの部分が見えますね。完成予想図のメインと思われる建物の曲線部分の基礎工事が行われているようです」とのこと。
IRの初期投資額はなんと、およそ1兆5100億円。
これだけのビッグプロジェクトとあって、大阪では早くも動きが。世界中で高級ホテルなどを展開するIHGホテルズ&リゾーツは先週、USJやIRにほど近いエリアで、大規模ホテル建設計画を発表した。

■盛り上がりを感じる一方…街の人は「カジノとかかな?分からへん」
さらに大阪・なんばでは、カジノでゲームの進行役を務める「ディーラー」の養成校が開校。
大阪IRでは2500人のディーラーが必要とあって、万博閉幕後、「IRで働きたい」という人からの問い合わせが増えているという。
「世界基準、それ以上のカジノディーラーを育成して、大阪で(IR)やってよかったと言われる人材育成を、5年間急ピッチで進めていきたい」と日本カジノスクールの大岩根成悦校長は熱意を語る。
大阪IRに高まる期待。一方で、街の人に「IRご存じですか?」と聞いてみると「IR…聞いたことあるけどわからんな」と、今一つ、ピンときていない様子だ。
IRの開業は、一体大阪に何をもたらすのか。
そのヒントを探ろうと、今回「newsランナー」が緊急取材したのが、お隣の国、韓国。国内に18カ所もの統合型リゾート施設を持つ「IR大国」だ。

■IRは「家族や友達、カップルが楽しめるコンテンツを提供」
まず取材班が向かったのは、韓国の玄関口・仁川国際空港から車で15分の距離にある「インスパイア・エンターテインメント・リゾート」。
去年開業したばかりの「新世代型IR」だが、すでに900万人以上が訪れる超人気施設だ。
ホテル客室タワーの中には、1300近くの客室を構える5つ星ホテルが入っていて、ラグジュアリーな空間が広がっている。
そして、ホテルの下のフロアには、記者が「質素な印象」という入口の中にあるのが、韓国最大級のカジノだ。
韓国では政府が、カジノの利用を外国人に限定しているため入ることができるのは外国人のみ。自国民のギャンブル依存症を懸念する政府の思惑もある。

■「カジノには行っていない」という外国人観光客も
外国人観光客はこぞって“カジノ”を訪れていると思いきや、取材してみると、意外にも「カジノには行っていない」というウズベキスタンからの観光客もいた。
では、彼らのお目当ては何かというと、全天候型のウォーターパーク「スプラッシュベイ」だった。
日本からの観光客は「プールがすごくて、子供が楽しめるので」と話す。
こうした“カジノ以外”の施設が充実しているのが、「新世代IR」ならではの特徴で、施設は地元の人たちも訪れる話題のスポットになっていた。
地元の人:子供と遊べる場所がたくさんあるのが良いんです。
地元の人:今年だけで、もう2回来ていますよ。

■IRは家族連れなど様々な世代の人たちが楽しめる娯楽施設へ
一番の“売り”は1万5000人を収容できる巨大アリーナ。K-POPグループだけでなく、日本のアーティストの公演も行われ、重要な収益源のひとつになっている。
インスパイア・エンターテインメント・リゾート ヤン・スジン部長:“Kカルチャー”やKPOPイベントをはじめ、さまざまな公演やイベントができるので、単純にゲームを楽しむ方以外でも、家族や友達、カップルが楽しめるコンテンツを提供しています。どんな年齢、世代、国籍の観光客でも楽しみを見つけられるバラエティに富んだ場所です。
取材を通して見えてきたのは、IRが、家族連れなど様々な世代の人たちが楽しめる娯楽施設になっているという側面。
大阪のIRでもカジノだけでなく、ホテルやシアター、大規模な国際会議場を設置し、ビジネス客や家族連れなど幅広い層を呼び込もうとしている。

■外国人投資家による不動産の買い占めで不動産価格が急上昇
こうしたIRは、周辺の地域にどんな影響をもたらすのだろうか?
取材班が向かったのは、ソウルから飛行機で1時間、韓国のハワイと言われる済州島。自然豊かで国内でも有数の人気観光地だ。
観光客を呼び込むため、10年以上前から本格的なIRの開発を進めてきた済州島。
しかし、取材を進めると大阪でも起きるかもしれない、“ある深刻”な異変が生じていることが分かった。
それは「外国人投資家による不動産の買い占め」だ。
地元の不動産業者によると、済州島では、IRの開発以降、外国人による投資目的での購入が相次ぎ、不動産価格が急上昇。ここ数年は高止まりの状態が続いていて、地元の人には手が出せない価格になっているという。
済州市の不動産会社 チョ・ウォンミン社長:建設ブームがあって、済州島が暮らしやすいという認識が特に中国人の間で高まって、不動産を買っておこうといういう動きがあり、不動産価格も上がっているので投資価値があると、ホテルやリゾートなどの目的で土地をたくさん購入していました。
日本でも先日、大阪市のマンションの値上がり率が「世界の主要都市の中で1位」になったという調査結果が出ていて、政府が外国人による不動産取得の実態調査を行う事態となっている。

■「済州島の経済はいま本当に良くない」と市場の店主
一方で、IRによって地元経済には少なからず恩恵もあるはずだが、取材班は意外な現実を目にした。
記者リポート:今日は日曜ですが人がいません。閑散としています。
「この市場やこのエリアが活性化しないと、島全体に影響します。済州島の経済はいま本当に良くないです」と市場の店主は嘆く。

■「地域社会とは断絶された、全く別の観光地」
一体何が起きているのか。地元の不動産業者がある「新事実」を教えてくれた。
チョ・ウォンミン社長:IRの経済効果が周辺地域まで及んでいないんです。地元の住民からすれば、地域社会とは断絶された、全く別の観光地だと思われています。
様々な娯楽が揃うIRは、施設のなかで買い物や食事など、全てが事足りてしまうため、周辺の地域への波及効果が少ないというのだ。
チョ・ウォンミン社長:最初こそ、地域経済の活性化とか、地元の商店が入店するとか、不動産価格の上昇なども見られましたが、時間が経つにつれて、結局は、地元以外の人がホテルの管理職をしていて、地元の人は短期バイトや下請けなどといった、非正規の仕事をさせられているので、少し失望しています。
大阪でも、経済効果はIRの中で完結し、その周辺には及ばない事態となってしまうのか。
IRに詳しい国際カジノ研究所の木曽崇所長は「大阪の地域としてできることは、IRとどう周辺地域が連携を取って、観光という形で客に魅力をアピールして集めていくか。大阪の夢洲IRは比較的に市街地に近いので、連携がとりやすい。カジノ側の努力というよりは周辺地域の努力、行政の施策によるところが大きい」と指摘する。
IRが大阪にもたらすのは、光か、影か…5年後の大阪に世界中が注目している。
(関西テレビ「newsランナー」2025年12月26日放送)

