2025年を大いに盛り上げた大阪・関西万博。

会場では5月、虫の大量発生が問題になりました。

その虫の名は「ユスリカ」。蚊の仲間ですが、人間を刺すことはありません。

しかし大量発生に来場者も運営側も苦労しました。

当時のニュースから振り返ります。

(この記事は大阪・関西万博が開催されていた2025年5月22日に放送した当時の内容によるものです。)

■SNS上でも万博会場の虫が話題に

先週、複数の人がSNS上に投稿し、注目を集めたのは…

【SNSより】「今日の大阪万博やばいぞ」「さすがに対策しないといけないレベル」

そこに載っていたのは…万博会場内の「虫」の写真。大屋根リングの柱に、虫がびっしりとはりついています。

一方で、「自分が行ったときにはいなかったけど本当にいるの?」という声も。

■来場者からは「気持ち悪い!」

実際、会場はどんな状況になっているのでしょうか。

【記者リポート】「かなりの数の虫がついています。こちら木目かと思ったらすべて虫です」

投稿された写真ほどではありませんが、大屋根リングの柱には虫が。

さらに、エレベーターの壁には…

【記者リポート】「さらに多いです。白い羽の虫でかなりびっしりと止まっています」

【来場者】「ちょっと気持ち悪いです」
【来場者】「気になるから虫よけしてた。今もいっぱい飛んでるやん」
【来場者】「(リングの)下で食べてたんですけど、むっちゃ虫いて、ごはんにつきそうだったので逃げて…」

■虫の正体は「ユスリカ」

その虫の正体とは…

【博覧会協会・高科淳副事務総長】「虫はユスリカだと認識しています」

「ユスリカ」とは、水辺などに生息する蚊の仲間ですが、人を刺すことはありません。

会場内の水辺や海側に面するエリアに「ユスリカ」が確認できました。

■大屋根リングの上にはユスリカが大量発生

そして、たびたび大群が目撃されているのが、大屋根リングの上です。

午後6時ごろリングに上ってみると、ユスリカは確認できませんでしたが、その30分後には…いたるところに虫、虫、虫!大量発生にリングの上はパニック状態!

【来場者】「気持ち悪い!やばい!しつこい、気持ち悪い」
【来場者】「虫連れて歩いてるみたい、ここにいると。しゃべると食べちゃいそう」
【来場者】「なんて日なんだ!」

中には携帯のライトをかざして顔から虫を遠ざける人も。

ユスリカはその後もどんどん増え続け…夜の水上ショーを見ようと待っていた人たちを容赦なく襲います。

(Q:大丈夫ですか?)
【来場者】「大丈夫なわけないでしょ。あんた!見てくださいよ、周り!」
(Q:かまない虫らしいですよ?)
【来場者】「かむかかまんかじゃないでしょ!数見てくださいよ」

■なぜ、万博会場でユスリカが大量発生しているのか

なぜ、万博会場でユスリカが大量発生しているのか。

20年以上にわたってユスリカを研究し、博士号を取得している株式会社MIZUKENの山本直さんと会場を訪れました。

【山本直博士】「シオユスリカだと思います。塩分耐性がある(虫で)水辺ででてくる」

山本博士によると、これは「シオユスリカ」で、「ユスリカ」の中でも、海水で生きていけるのが特徴。海で囲まれた夢洲には、会場が建設されるよりも前に、生息していたとみられ、万博会場は「ユスリカ」にとって最高の環境になっていたようです。

【山本直博士】「交尾前の休憩場所(になっている)夕暮れになったら一斉に飛び立ちます」

ユスリカは、水中に産み落とされた卵から孵化し、成虫になると「止まり木」を見つけて休息。夕暮れになると、高いところに上って交尾をし、水中に卵を産みます。

万博会場には、巨大な「止まり木」があることから、「大屋根リング」がユスリカの休息ポイントとなり、夕方以降のリング上での大量発生を招いてしまったというのです。

■ユスリカは会場南側の「ウォータープラザ」で発生か

では、このユスリカ、一体どこから来ているのでしょうか?

【日本国際博覧会協会 高科淳副事務総長】「雨が降った後の水たまりから発生しているのではないか」

博覧会協会は「水たまり」から発生している可能性を指摘しましたが、取材班は、さらに巨大な場所で、「ユスリカ」の痕跡を発見!

会場南側にある、「ウォータープラザ」。およそ3ヘクタールもの広さに海水を溜めた人気スポットです。

■これが「ユスリカ」の幼虫が入っている巣を発見

【山本直博士】「その辺にあるのが巣だと思う。網でこそぎ取ったら赤いのが出てくると思う」

(Q:卵が出てくるのか?)
【山本直博士】「卵じゃない幼虫です」

山本博士によると、これが「ユスリカ」の幼虫が入っている巣で、ウォータープラザには、ユスリカの「天敵」となる魚などがおらず、絶好の生息地になっている可能性があるといいます。

【山本直博士】「(巣の)量が多いかというと何とも言えないが、でも広いですから。
向こう側も似たようなものがいっぱいあるのではないか」

(Q:かなりの量がここからでている?)
【山本直博士】「推測できます」

■吉村知事も対策を進めると明言

大阪府の吉村知事も21日、民間会社の協力のもと「ユスリカ対策」を進めることを明言。

【大阪府 吉村洋文知事】「私からも直接アース製薬の社長にお願いの連絡をしました。アース製薬の社長からもできる限りのことは協力させてもらいますと」

■虫よけスプレーは効果が期待できないか 夕方の活動時間をさけることが効果的

山本博士は、真夏になるまでは、さらにユスリカが増える可能性もあると指摘します。

真夏は暑すぎて減る傾向があるということですが、9月頃の閉幕間際には増える可能性があるということです。

【山本直博士】「虫よけスプレーとか虫の忌避剤持っていてもあまり関係ないと思う。ただただ我慢しかない。基本的に不快であって、大きな害があるものでない」

刺されないけど、“不快”な虫、ユスリカ。大量発生のサイクルを止めることはできるのでしょうか。

山本博士によると、シオユスリカは活動の時間帯が決まっていて、苦手な人は夕暮れ時を避けるなど対策が効果的だそうです。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年5月22日放送)

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