1月に春高バレー全国大会を控える鎮西高校バレー部。11月に51年間指導してきた畑野久雄さんが亡くなった。恩師の教えを胸に、鎮西初の高校3冠に向けて集大成の舞台に挑む。

名将・畑野久雄監督(80)が死去

それはあまりにも突然だった。

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11月24日、鎮西高校バレー部の宮迫竜司コーチは「カメラは関係があるから入ってもらうけど、畑野先生が今日の朝に亡くなったもんね。言葉が出らんけどお前らがやるしかないから、春高に向けて、お前らは色んな人の期待とか色んなことがあるかもしれんけど、自分たちのやるべきことをしっかりやって勝てるように」と切り出した。

そして、「本当は天皇杯とか春高も、(畑野)先生すごい楽しみにしてたわけよ、お前らのことを考えて。お前らも頭の中、真っ白でどうしていいか分からんと思うけど、それは俺も一緒。そこはしっかり先生から教えてもらったことを頭に入れて、これからバレーボールをしっかりやるように。先生は〈休め〉とか言わんと思うから、またあすの朝練からしっかりやるから、内容については連絡する」と続けた。

51年間チームを率いた畑野久雄監督(80)が11月24日の朝、亡くなった。前日まで元気だった監督との突然すぎる別れ。頭では分かっていても、なかなか現実を受け入れることはできなかった。

福田空主将は「前日まで練習試合の指導をしてくださっていたので、次の日に急に亡くなったと聞いたときは、自分もだが、チームみんなが受け入れられてなくて、2日くらいはまともに気持ちが入らず、練習に打ち込めなかった」と話す。

ダブルエースの一ノ瀬漣選手(2年)は「今も練習に来られないので、寂しいな。鎮西のエースに認めてもらうまで、教わりたかった」と話し、岩下将大選手(3年)も「亡くなったと聞いた時も、訳分からなくて、実感できないから涙も出なくて…。今でも嘘であってほしい」と話した。

体育館には畑野先生がいつも座っていたパイプ椅子が、今も準備されている。

『当たり前のことを当たり前に』

思わぬ形で監督を引き継いだのはコーチとして12年間ともに行動してきた宮迫監督だ。

宮迫監督は「受け止めないといけないことは分かっているが、どうしても別れが『また明日10時な』で終わったので、もっと話しておけばよかったとか、そういうことをこの1カ月間ずっと考えて、先生ならどうするかなとか、色んな事が頭の中に勝手に出てくるので、まだちょっと整理している段階」と、宮迫監督自身も気持ちの整理ができていない様子だった。

しかし、「僕が監督である限りは、先生の教えや先生のカラーを受け継ぎたいし、そのためにコーチをやっていた。先生の色は僕がやっている限りは残したい」と、目指す方向性にブレはないように見えた。

『当たり前のことを当たり前に』畑野先生が付けていた監督マークを譲り受け臨んだ、初めての公式戦。格上のVリーグチームを相手に序盤は硬さがみられたものの、徐々に本来の力を発揮した。

3年生岩下、2年生一ノ瀬のダブルエースに。身長177センチの大石が大当たり。1セットを失った後、宮迫監督がブロックシステムを変更したことで流れが変わり、鎮西が見事逆転でVリーグチームから金星を上げた。

一ノ瀬選手は「(畑野先生には)『ミスをせずに、当たり前のことをしっかりやったら、勝てるから』とずっと言われていた。春高までに全員でレベルアップして、春高も畑野先生に勝つところを見せてあげたい」と話した。

また、宮迫監督も「今回に関しては違和感しかなかったが、先生の思いも背負ってやらなければならないかなと思った」と話す。

また、「今日の試合を畑野先生見てたら」と尋ねると、「〈まだまだダメだ〉と絶対言われると思う。〈ポカ(ミス)が多い〉と、絶対言うと思うし、春高に向けてまた厳しい言葉をかけられるのではないかと思うので、今日も監督をしていてそうだが、〈畑野先生だったら何て言うかな〉というのはずっと頭の中にあって。〈先生ならこう言うだろうな〉とか。そういったのを感じながら、指示を出していた」と話した。

高校3冠かけ春高に挑む鎮西バレー部

どんな環境に置かれても、『当たり前のことを当たり前に』。それが高校3冠がかかる特別な舞台でも。近くにいた人が突然いなくなったとしても。やるべきことは選手たちが一番よく分かっている。

岩下選手は「特別なことは声かけないと思う。いつも通り〈ポカをするな〉と言われると思うので、そこは自分もチームのみんなも分かっていると思うので、そこを肝に銘じながらやっていきたい」と話した。

ミドルブロッカーの西原涼瑛選手も「いつも言っている〈ミスするな〉と、そこは大事だと思うし、どこに行っても通用することだと思っているので、自分も気持ちとして持っておきたい。僕のクイックやブロックなど、畑野先生に褒めてもらえるようなプレーをしたい」と話した。

畑野先生のためではなく、自分たちの夢の実現のために。簡単なミスをせず、それぞれが当たり前のことを当たり前にできるかどうか。そんな選手たちの姿を、天国へと旅立った名将は静かに見守ってくれるはず。

福田空主将は「最後、どんな形でも、決勝の舞台で点数を取って勝った時に天井を見て、畑野先生に〈優勝しました〉と問いかけたい。〈今のゲーム、どうでしたか〉と聞きたい」と話す。

最高の結果になったとき、その問いかけに畑野さんは何と答えるか、福田主将に聞くと「多分…〈今のもダメだぞ〉と言われると思うが、ナイスゲームだったと言われるようなバレーをしたい」と胸を張って答えてくれた。

(テレビ熊本)

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