全室設置は地震の際にも有効だという。

「例えば地震によって家具が転倒してケーブルが破断し、出火するケースもあるため、すべての部屋に火災のリスクがあります。いち早く火災に気づくためにも、できれば住宅内のあらゆる場所に設置してほしいですね」

点検のやり方は?

冒頭でも触れたように、住宅用火災警報器の寿命は10年といわれている。2011年の既存住宅の義務化のタイミングで設置した場合は既に10年を超えていることになるため、まずは点検してみよう。

住宅用火災警報器についているボタンを押したり、ひもを引いたりした際に、警報音や音声が鳴らないようであれば、電池切れの可能性がある。

総務省消防庁HPより
総務省消防庁HPより

「点検時に音が鳴ったとしても、油断はできません。警報器は精密機械なので、10年も経っていれば壊れている可能性が高いといえます。そのため、総務省消防庁も交換を推奨しています」

音が鳴らなかった場合も、電池を交換すれば再び作動するとは限らないそう。どちらにしても、10年以上経過していたら、買い替えを検討するタイミングといえる。

総務省消防庁では年2回の点検を推奨しており、作動しない場合は10年経過していなくても交換したほうがいいとしている。

「住宅用火災警報器は検知方法によって『煙式』『熱式』などのタイプがありますが、一般的には『煙式』が検知性能が高いといわれています。交換する際の参考にしてください」

ちなみに、マンションなどで定期的に設備点検が行われる場合は、住宅用火災警報器ではなくオフィスビルや商業施設などにも設置される自動火災報知設備であり、管理者側に点検の義務があるため、個人での点検や交換は必要ないとのこと。

まずは設置個所を把握しよう

廣井さんは「住宅用火災警報器が設置されていることを認識することが、火災対策の第一歩」と話す。

「設置が義務化されてから住宅を建てた方の多くは、住宅用火災警報器が設置されていることを知らないかもしれません。まずは設置されている場所を把握して点検し、命を守ってくれるものがあることを認識することが重要です」

警報器は全室に付けておくことが望ましい。火災を感知した警報器だけでなく、他の部屋の警報器も信号を送る連動タイプもある(総務省消防庁HPより)
警報器は全室に付けておくことが望ましい。火災を感知した警報器だけでなく、他の部屋の警報器も信号を送る連動タイプもある(総務省消防庁HPより)

住宅用火災警報器がなかったり、ついていない部屋があったりする場合は、設置に動き出すことが重要だ。

「先述したように、火災覚知が早ければ早いほど、被害の拡大を食い止めやすくなります。火災発生に気づいたら、すぐに周囲に伝えることも重要。複数人で消火活動ができるようになるかもしれませんし、避難を促すことにもつながります。とにかく火災を早く認知することが重要です」

住宅用火災警報器の設置や点検、交換を徹底することで、万が一の火災にもいち早く気づくことができるだろう。自分や家族、近所の人の命や財産を守るためにも重要な心がけだ。

廣井悠(ひろい・ゆう)
東京大学先端科学技術研究センター教授。専門は都市防災・都市計画。内閣府「首都直下地震帰宅困難者等対策検討委員会」座長、東京都「今後の帰宅困難者対策に関する検討会議」座長、内閣官房「防災庁設置準備アドバイザー会議」専門委員、内閣府「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」委員、などを歴任。特に大都市の防災対策について、理論・実践ともに積極的に関わる。

取材・文=有竹亮介

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